数字がズレたまま経営していませんか?
減価償却費を月次で概算計上する“本当の意味”と、経営にもたらすメリット・デメリット
はじめに|「減価償却費、年1回まとめて」で本当にいいのか?
決算が近づいて、ようやく固定資産台帳を確認し、
「今年の減価償却費はいくらか…」と処理する。
——もしあなたが、そんな経理体制のままなら、
経営判断を“ズレた数字”でしている可能性があります。
この記事では、
- 減価償却費を月次で概算計上するメリットとデメリット
- 実際に経営数字に与えるインパクト
- どう導入すればよいかの実践方法
をわかりやすく解説します。
減価償却費とは?経営数字にどう影響する?
まず前提として、減価償却費は「お金が出ていない経費」です。
しかし、損益計算書(P/L)上では、毎年の利益を圧縮するための重要な数字でもあります。
例:1,000万円の機械を10年償却 → 毎年100万円の経費として計上
→ 利益計算に直結するのに、キャッシュフローには直接影響しない
→ だからこそ、「見えない経費」として扱われがち
年1回処理だと、経営数字が歪む理由
多くの中小企業では、決算月にまとめて減価償却費を計上しています。
しかしこの方法では、
- 月次の利益が実態より多く見える(粉飾に近い)
- 12月まで黒字だったのに、3月に突然赤字になる…
- 利益とキャッシュのギャップに気づけない
- 銀行報告用の月次試算表が“ウソ数字”になる
→ 結果、意思決定を誤る原因になりかねません。
月次で減価償却費を概算計上するとは?
年間の減価償却予定額(例:120万円)をあらかじめ見積もり、
毎月10万円ずつ概算計上していく方法です。
✔ ポイント
- 「仮計上」でOK。決算で正式な金額に調整すれば問題なし
- 原価率や営業利益率などの経営指標がリアルになる
- キャッシュは出ていないが、利益は正確になる
【メリット】月次で概算計上する5つの効果
① 利益が実態に近づく
→ 「利益があるのにお金がない!」という状態を防ぎやすくなる
→ 実態に合った数字で判断ができるように
② 月次試算表が“使える”ようになる
→ 銀行・金融機関に対する信頼性がUP
→ 「見せかけの利益」ではなく、減価償却込みのリアルな収益力を説明できる
③ 節税対策・設備投資判断が早期にできる
→ 減価償却費込みで利益を管理することで、
早めに役員報酬見直しや保険・共済・投資の判断が可能に
④ キャッシュフロー経営がしやすくなる
→ 損益とキャッシュのズレを把握しやすくなり、
資金繰りのコントロールがしやすくなる
⑤ 経営分析ができるようになる
→ 売上総利益率、営業利益率などを「実態ベース」で算出可能
→ 経営のPDCAが正確に回るように
【デメリット】月次概算の注意点
① 固定資産管理と連動していないと誤差が出る
→ 新規取得や除却(廃棄)を反映していないと、年間の金額がズレる
→ → エクセル管理 or 会計ソフトでの自動連携が重要
② 税務署対策としては「仮勘定」であることを明示すべき
→ 決算で確定額に調整するため、月次では「仮勘定」処理として明記しておくと安心
③ 経理の手間が増える(ように感じる)
→ ただし、月次で概算しておけば決算処理が楽になるという副次効果あり
導入のコツ|難しく考えず、まずは“前年ベース”でOK
たとえば、前年の減価償却費が120万円であれば、
毎月10万円ずつ計上していくだけで問題ありません。
- 四半期ごとに見直しをかける
- 決算前に実際の償却額と乖離があれば調整
→ 完璧よりも「精度7割」で早く導入することが重要です。
まとめ|“見えない経費”を見える化することが、強い経営への第一歩
- 減価償却費を月次で概算計上すると、数字のブレがなくなる
- 経営判断・節税・銀行対応・資金繰り改善にすべて繋がる
- 実は、もっとも手軽で効果の高い財務改善の一歩
ご相談ください|減価償却費の自動計上・経営数字の可視化をサポートします
- 減価償却費の月次計上モデルの作成
- 会計ソフト・クラウド管理の連携設計
- 銀行提出用の月次分析書作成支援
- キャッシュフロー改善のための会計の使い方指導
「見えない経費」を、見える数字に。
経営判断に使える月次試算表を一緒に整備していきましょう。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。