「給付付き税額控除」の原案とは?手取り増と働き控え解消をめざす制度設計を解説

こんにちは!税理士の長岡です。今回は、「給付付き税額控除について!」の内容になります。
「年収の壁」による働き控えを解消し、働けば働くほど手取りが増える仕組みをつくる——そうした狙いのもと、「給付付き税額控除」の制度設計案が示されました。中低所得者の負担軽減を目的とした制度で、実現すれば従業員の手取りにも、自営業やフリーランスの方の家計にも直接影響します。
ただし、現時点ではまだ検討段階です。この記事では、示された原案の中身と、経営者として何を見ておくべきかを整理しました。制度が固まってから慌てるより、方向性を知っておくほうが、人件費や採用の計画を立てやすくなります。
そもそも「給付付き税額控除」とは
本来この制度は、所得税額などを減税する「控除」と、控除で引き切れない分を支給する「給付」という2つの仕組みを組み合わせたものです。
所得税がゼロの人には減税の効果が及びません。そこで、控除しきれない分を現金で給付することで、低所得層にも支援が行き渡るようにする——これが基本的な発想です。諸外国と比べて税や社会保険料の負担が重いとされる日本の現役世代について、その負担を和らげることが目的とされています。
示された原案の3つのポイント
1. 所得に応じて支援額が段階的に変化する
最大の特徴は、個人の所得に応じて支援額を段階的に変化させる設計です。イメージとしては次のような形が示されています。
- 一定の勤労性の収入がある層に、まず定額を支給
- そこから所得が増えるにつれて支援額が逓増
- 一定の範囲では定額を維持
- 総所得が高くなるにつれて逓減し、やがて消失
加えて、社会保険料等の負担が発生する「年収の壁」を超えた層には、一定額を上乗せする措置が検討されています。壁を越えたところで手取りが減る「働き損」を打ち消すという発想です。
2. 当面は「給付」に一本化する方向
もう一つの重要な方針が、当面は給付に一本化するという案です。
控除の仕組みを使わずに減税相当額を給付しても、対象者が受け取る恩恵は同じになります。制度が複雑になることによる事務負担の増加を避け、実施までのスピードを優先するため、所得に連動した給付のみを前提とする方法が示されました。
3. 「2段階での給付」は行わない方向
所得見込みの段階でいったん給付し、所得確定後に精算するという2段階方式も、行わない方向で検討が進められています。ここも事務の簡素化を重視した判断とされています。
なぜ今、この議論が進んでいるのか
政府は、世帯年収375万円の共働き夫婦(子ども2人)の場合、米・独・仏3カ国の平均と比べて税や社会保険料の負担が27万円重いという試算を示しています。「低所得者ほど負担が重い」という日本の現状を改善しようという問題意識が、議論の出発点にあります。
支援額は、こうした国際比較の試算などを踏まえつつ、恒久財源のめどが立つ範囲で設定するとされています。
支援の対象になるのは誰か
対象は、一定の勤労所得がある単身者のほか、自営業やフリーランス、さらに現役世代と同程度の負担がある高齢者まで、幅広く設定されています。一定の勤労収入と一定の社会保険料負担がある個人を対象とする方針です。
また、子育て世帯には子どもの数に応じた加算や、所得金額の上限引き上げなどの配慮も検討されています。
経営者として押さえておきたい3つの論点
論点1|パート従業員の働き控えは、本当に解消するか
制度の狙いどおりに機能すれば、壁を意識したシフト調整は減る方向に向かいます。人手不足に悩む会社にとっては歓迎すべき話です。ただし、壁そのものがなくなるわけではありません。手取りの落ち込みを給付で埋めるという設計なので、従業員への説明は制度が固まってからにしたほうが安全です。
論点2|会社の事務負担はどうなるか
給付に一本化し、2段階給付も行わない方向で検討されている背景には、事務負担を抑えたいという意図があります。年末調整のように会社が計算を担う仕組みになるのかどうかは、まだ明らかではありません。ここは制度設計の詳細を注視すべきポイントです。
論点3|一人社長・個人事業主にも関係する
自営業やフリーランスも対象に含まれています。小規模に事業をされている方にとっては、自分自身が支援の対象になり得るということです。役員報酬の設定や、所得の取り方を考えるうえでの新しい変数になる可能性があります。
【重要】まだ決まったわけではありません
この議論は超党派の実務者会議の場で進められており、各党の認識にはまだ差があります。「意見の一致段階ではない」「論点はたくさんある」といった指摘も出ています。
支援額の水準、施行時期、事務手続きの具体像は、いずれもこれから詰められる段階です。
ネット上には「いくらもらえる」といった断定的な情報も出回りますが、現時点で金額を前提に何かを決めるのは危険です。方向性を知っておくことと、決まったこととして扱うことは、まったく別だとお考えください。
いま経営者ができること
- 現行ルールで設計する:2026年からの人件費計画は、現在の「年収の壁」のルールを前提に組んでおく
- 従業員への説明は慎重に:「来年からもらえるらしい」といった話が社内で独り歩きしないよう、確定情報だけを共有する
- 手取りベースで考える習慣をつける:この制度に限らず、賃上げの効果は額面ではなく手取りで測る。従業員の納得感はそこで決まる
3つ目は、制度がどうなろうと変わらない話です。「1万円上げたのに喜ばれない」という相談をよく受けますが、社会保険料や税を差し引いた後にいくら増えるのかを示せていないケースがほとんどです。賃上げは、金額より伝え方で効果が変わります。
当事務所がお手伝いできること
- 賃上げが手取りベースでどう変わるかのシミュレーション
- 社会保険料の事業主負担を含めた、中期的な人件費計画の作成
- 役員報酬の設計と、税・社会保険を通算した最適な取り方の検討
- 制度改正の動きを踏まえた、顧問先向けの情報提供
よくあるご質問
Q. いつから始まりますか?
A. 施行時期は決まっていません。制度の詳細とあわせて、今後詰められる段階です。
Q. 会社員も対象になりますか?
A. 一定の勤労収入と社会保険料負担がある個人が対象とされており、会社員も含まれる想定です。ただし所得の水準によって支援額は変わります。
Q. 「年収の壁」はなくなるのですか?
A. 壁自体を撤廃するのではなく、壁を超えた層に上乗せ支援を行うことで働き控えを解消する、という設計が検討されています。
まとめ|動向を追いつつ、足元は現行ルールで
給付付き税額控除は、実現すれば従業員の手取りにも、経営者ご自身の家計にも影響する大きな制度です。一方で、恒久的な財源の確保とのバランスをとりながら詳細が詰められる段階であり、まだ確定情報ではありません。
当事務所では、こうした制度改正の動きを継続的に追い、顧問先の皆さまに影響が見えた段階でお知らせしています。人件費や役員報酬の設計でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
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※本記事は2026年8月時点で公表されている資料・報道をもとに、検討中の制度案を整理したものです。内容は今後変更される可能性があります。最新の情報は内閣官房の公表資料等をご確認ください。
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