経理
その「少額資産」、ちゃんと見えていますか?
減価償却資産を別科目で管理するだけで経営の精度と効率が格段に変わる理由
はじめに|“見えない投資”が経営を鈍らせる時代に
- 「10万円以下の備品は費用処理でOK」
- 「一括償却できるから楽でいい」
- 「少額だから特に気にしてない」
そんな経営スタイルのままでは、資金は流れ出し、改善のヒントを見逃すことになります。
特に、少額減価償却資産(取得価額30万円未満など)の管理を「雑費」や「消耗品費」などに混在させている企業では、
“年間で何にどれだけ使ったか”が見えなくなっているのが実態です。
この記事では、
- 少額資産を別の損益科目で分けて記録するメリット
- 経営数字がどう変わるか
- 実務での導入方法と注意点
を、経営者の視点でわかりやすくお伝えします。
少額減価償却資産とは?ざっくりおさらい
- 法人税法上、取得価額が30万円未満の減価償却資産は、一括で費用計上可能(いわゆる少額減価償却資産)
- 年間合計300万円までが上限(中小企業者等に限定)
→ 節税メリットは大きい一方で、経営管理上の「見えにくさ」というデメリットもあります。
なぜ「別科目管理」すべきなのか?
通常の処理:
内容 | 科目 | 金額 |
---|---|---|
ノートPC | 消耗品費 | 150,000円 |
モニター | 雑費 | 50,000円 |
工具セット | 工具器具備品 | 80,000円 |
→ バラバラな科目で計上されるため、集計不能。
別科目にするとこうなる:
内容 | 科目 | 金額 |
---|---|---|
ノートPC | 少額償却資産費 | 150,000円 |
モニター | 少額償却資産費 | 50,000円 |
工具セット | 少額償却資産費 | 80,000円 |
→ 「少額償却資産費」として一括把握できる
【メリット①】見える化による経営判断の質向上
- 年間いくら「小さな投資」に使っているかが即わかる
- 資産管理台帳の補助として活用できる
- 「次年度に削減できる費用はどこか?」のヒントになる
→ 無意識な“垂れ流し投資”の可視化ができる
【メリット②】原価管理・部門別管理にも役立つ
- 例えば工場部門が購入した工具類を区分
- 営業部が買ったモバイル機器を集計
→ 部門ごとの資産消耗の傾向分析に使える
【メリット③】資金繰り対策にも効く
- 「今年は200万円も少額償却資産で出費していた」
→ 来期はその分、抑える/計画的に分散投資する
→ 現金流出の計画が立てやすくなる
【メリット④】税務調査対策にも有効
- 少額資産は使途・所在があいまいになりがち
→ 科目を分けておくことで、「ちゃんと管理している」企業という印象に
→ 根拠ある損金処理ができ、否認リスクも軽減
【デメリット】導入前に知っておくべき2点
① 科目が増える=帳簿が複雑になる?
→ 会計ソフトの「補助科目」や「部門タグ」を活用すれば混乱なし
→ 現場に浸透させる運用ルールづくりが鍵
② 使い方を決めずに分けると意味がない
→ 例:「少額償却資産(IT機器用)」「同(工具用)」などに分類してもOK
→ 経営分析の視点から“分けすぎない”工夫も必要
【実務導入ステップ】今日から始められる3ステップ
- 過去1年間の少額資産を洗い出す
→ 30万円未満で一括損金にしていたものを集計 - 会計ソフトで「少額償却資産費」などの科目を作成
→ 既存の科目から区別して登録 - 今後は、対象の購入があればこの科目で処理
→ 決算書内での管理にも一貫性が生まれる
まとめ|“見えない経費”を“経営の武器”に変える
- 少額資産は目立たないが、積み重なると大きな支出
- 分けて記録することで、コスト意識・設備戦略・資金繰りが一気に改善
- 一括償却の恩恵を受けつつ、戦略的に活かすことが重要
ご相談ください|科目整理・経営管理改善をサポートします
- 勘定科目の再設計と導入サポート
- 少額資産の管理フロー構築
- 会計ソフトへの設定反映
- 部門別の支出可視化モデル作成
経理は経費の処理で終わらせない。
数字から経営を変えるための整備を、いま始めましょう。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。