販管費で利益が決まる!注意科目と銀行が見る数字を解説
販管費で重要な科目は何か?
要注意の費用、交際費の適正額、銀行が気にする科目まで徹底解説
はじめに:同じ売上でも利益が残る会社と残らない会社の違いは“販管費”にある
中小企業の損益改善で最も重要なポイントは、
「販管費及び一般管理費のコントロール」です。
売上も粗利も同じなのに、
利益が残る会社と残らない会社は明確に分かれます。
その分岐点は「販管費の使い方」にあります。
さらに、銀行は損益計算書の中で
“販管費の特定科目”を必ずチェックしています。
本記事では、
- 販管費でとくに重要な科目
- 要注意の費用
- 交際費の適正額
- 銀行がどの科目を重視しているか
を経営者にわかりやすく解説します。
第1章 販管費とは何か?経営の「体脂肪」のような存在
販管費(販売費及び一般管理費)とは、
本業を回すために必要な経費の総称です。
主な内容は、
- 人件費(給与・賞与・社会保険料)
- 広告宣伝費
- 交際費
- 会議費
- 車両費
- 通信費
- 旅費交通費
- 福利厚生費
- 減価償却費
- 地代家賃
- 外注費(一部)
- 事務用品費
- 水道光熱費
- 保険料
など、会社を維持・運営するためのあらゆるコストが含まれます。
第2章 販管費の中で「最重要の科目ベスト5」
結論として、販管費で最重要なのは次の5つです。
① 人件費(給与・賞与・社会保険料)
→ 販管費の中でも“王者”
ほぼすべての会社で、販管費のうち最大割合です。
売上に関係なく毎月必ず発生する固定費であり、
会社の収益構造を最も左右する費用。
● 人件費改善のチェックポイント
- 売上に対して人件費率は適正か?
- パート・アルバイトの比率は適切か?
- 業務効率化で削減できる業務はないか?
- 給与と利益のバランスは合っているか?
特に「社員の給与が低い=利益が出る」わけではなく、
生産性で見ることが重要。
② 地代家賃
→ 固定費の“重石”
事務所・店舗の家賃は、
売上が下がっても下がらない固定費の代表格。
家賃が高すぎる会社ほど、利益率が低くなります。
● 地代家賃の適正ライン
- 売上比:5〜10%以内
- 粗利比:10〜15%以内
これを超えると要注意。
家賃の見直しこそ最大の固定費削減。
③ 広告宣伝費
→ 「投資」か「浪費」かで会社が分かれる科目
広告費は効果測定が甘くなると一気に膨らむ科目です。
広告費が多いことが悪いのではなく、
リターンと比較してどうか(ROI)が重要。
● 広告費の評価ポイント
- 広告費に対する売上(費用対効果)
- リピートにつながっているか
- Web広告のCPA(顧客獲得単価)
- 成果が数字で追えているか
売上が伸びないのに広告費だけ増える会社は要注意。
④ 減価償却費
→ 現金が減らない“経費”として重要
損益計算書では経費ですが、キャッシュフローには影響しません。
銀行はこの「減価償却費」を使い、
本当の返済能力(実質キャッシュフロー)を見ています。
⑤ 交際費
→ 過度に増えると危険性が高い科目
経営者の性格によって数字が大きく変わるため、
銀行は必ずチェックします。
理由は明確。
交際費が多い会社=私的利用が含まれやすい会社
これを嫌うのです。
第3章 “要注意”販管費科目はこれだ!
以下の科目が多い会社は、銀行・税務署ともにマークされます。
要注意① 交際費(過剰な場合)
特に、
- 高額接待
- 毎月の飲食代が膨らむ
- 経営者の趣味が含まれる可能性
- 取引関係が分からない支出
こうしたとき、銀行はこう評価します。
「資金管理が甘く、経費の私物化リスクがある会社」
要注意② 車両関連費
- 高級車のリース代
- ガソリン代の異常増
- 駐車場費の過多
これも“私的利用の疑い”として警戒されます。
車両費が売上対比3%を超えると注意。
要注意③ 福利厚生費(過度な飲食費・慰安旅行)
福利厚生費は正しい活用なら問題ありませんが、
過度に増えると“私的流用”と判断されます。
要注意④ 雑費(ブラックボックス科目)
雑費が多い会社は銀行から警戒されます。
理由は、
雑費=管理できていない経費の集まり
と判断されるからです。
雑費は売上比0.3%以内が目安。
要注意⑤ 外注費(異常に増えると赤字のサイン)
外注費が膨らむケースは以下の2つ。
- 売上が伸びていなくても外注費だけ増える → 赤字の兆候
- 外注費が高く、粗利率が下がる → 原価率悪化
銀行は外注費を「粗利改善のポイント」として見ています。
第4章 交際費の適正額はいくら?目安はこれだ!
交際費の適正額は、
会社の規模・業態・役員数によっても異なりますが、
一般的には次の範囲が理想です。
● 売上比で考える場合
- 売上の1〜2%以内が妥当ライン
- 2.5%を超えると要注意
- 3%以上は銀行が確実に警戒するライン
● 利益に対する比率
営業利益の10〜15%以内が安全圏。
● 役員報酬比率
役員報酬の10〜20%以内が目安。
交際費が適正かどうかを判断する3つのチェック
✔ 業務に直結しているか?
✔ 誰と何の目的で使ったのか明確か?
✔ 売上または利益につながったか?
交際費を削ることは、利益改善の最も早い方法です。
第5章 銀行が損益計算書で最も気にする科目とは?
銀行は、損益計算書のすべてを見ているわけではありません。
特に注目しているのは次の5つです。
① 営業利益
→ 本業で儲けているか?
営業利益が安定している会社は「安定した返済能力がある」と判断されます。
営業利益が毎年上下している会社は、
“安定しない会社”と見られ、融資評価が下がります。
② 減価償却費
→ 実質キャッシュフローを判断するため
銀行はこう計算します。
営業利益 + 減価償却費 = 実質の返済力
これがプラスなら返済能力が高い、と判断します。
③ 支払利息
→ 借入依存度を測る指標
支払利息が多いと、銀行は
「この会社は借入過多で資金繰りが苦しい」と判断します。
④ 人件費
→ 固定費の重さを見るため
人件費は“重い固定費”。
ここが重すぎる会社は利益が出にくく、銀行は評価を下げます。
⑤ 交際費・福利厚生費
→ 経営者の金銭感覚を見る
金銭管理ができているかどうかは、
交際費と福利厚生費で判断できます。
ここが多い会社は、銀行から資金管理能力に疑いを持たれます。
第6章 販管費の見直しは利益改善の“最短の道”である
販管費は、一度見直せば“毎月利益が増え続ける固定費”です。
販管費削減の効果は「利益へのレバレッジ」が非常に高い
- 1万円の売上を増やすより、1万円の経費を削る方が利益に直結
- 売上10%アップと同じ効果を、販管費3%削減で得られることもある
- 資金繰りの改善効果が即時に出る
チェックすべきは「固定費の見直し」
とくに以下の3つの削減は効果が大きい。
① 地代家賃
② 人件費の適正化
③ 外注費の適正化
次に成果が出るのが以下の科目。
④ 広告宣伝費
⑤ 交際費
⑥ 車両費
⑦ 福利厚生費
まとめ:販管費を制する会社は、利益も資金繰りも強くなる
■ 販管費の最重要科目
- 人件費
- 地代家賃
- 広告宣伝費
- 減価償却費
- 交際費
■ 要注意科目
- 交際費
- 車両費
- 福利厚生費
- 雑費
- 外注費
■ 交際費の適正額
- 売上の1〜2%
- 2.5%超は要注意
- 3%超は銀行から警戒
■ 銀行が損益計算書で特に見る科目
- 営業利益
- 減価償却費
- 支払利息
- 人件費
- 交際費・福利厚生費
結論:財務が強い会社は例外なく“販管費が上手い会社”である。
販管費を管理できれば、
利益が安定し、銀行評価が上がり、
資金繰りは劇的に改善します。
数字の中で最も改善効果が高いのが、
この「販管費」なのです。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。