申請・申告

法人でも経費計上できる?でもどうやって!?

〜盗難・自然災害・害虫駆除時の経費処理とエビデンス管理のポイント〜


はじめに

法人経営をしていると、思わぬ災害やトラブルに遭遇することがあります。
たとえば、事務所備品の盗難、台風や地震による被害、シロアリや害虫による建物損傷などです。

こうした損害に対する修繕費や駆除費用は、正しく処理すれば経費として認められることがあります。
ただし、個人の「雑損控除」とは異なり、法人の場合は処理方法やエビデンスの整備に注意が必要です。

この記事では、法人が損害時に経費計上するための条件、証拠の集め方、実際の事例を解説します。


法人の損害費用は原則「経費計上」可能

法人税法上、法人の事業活動に必要な支出であれば、原則として損金(経費)に算入できます。
盗難・自然災害・害虫駆除による損害も、法人所有の資産や事業に関わる支出であれば経費計上が可能です。

例:経費計上できる損害関連費用

  • 被害に遭った資産の修繕費用
  • 害虫駆除費用(事業用建物や倉庫など)
  • 被害品の買い直しにかかる費用(固定資産は別途減価償却)
  • 清掃・廃棄費用

経費計上のための条件

1. 事業用資産であること

  • 会社所有の建物・設備・在庫・備品など
  • 個人的な資産や福利厚生施設の一部は対象外になる場合あり

2. 不可抗力であること

  • 自然災害・盗難・害虫被害など突発的なもの
  • 自社の管理責任や故意・過失による損害は認められにくい

3. 証拠資料が揃っていること

  • 領収書・契約書・写真など、被害を裏付ける書類が必要

エビデンス(証拠書類)の集め方

経費として認められるかどうかは、エビデンスの有無で大きく変わります。

必要な証拠例

  • 修繕・駆除費用の請求書や領収書
  • 被害状況の写真(ビフォー・アフター)
  • 警察への届出書(盗難届・被害届)
  • 罹災証明書(自然災害の場合)
  • 保険金支払い明細書(補填がある場合)

記録方法のポイント

  • 発生日・発見日・被害内容・対応内容を社内記録として残す
  • 会計システムの摘要欄に「〇年〇月〇日台風被害修繕費」など具体的に記載

実際の事例

事例1:事務所備品が盗難に遭った場合

  • パソコンやOA機器など事業用備品が盗難被害に
  • 警察に被害届を提出し受理番号を取得
  • 被害品の一覧と購入金額を記録
  • 再購入費用は経費計上(金額基準に注意)、固定資産は除却損処理

事例2:台風で屋根が破損した場合

  • 法人所有の事務所屋根が台風で損壊
  • 保険会社に連絡し罹災証明書を取得
  • 修繕業者の見積・請求書を保管
  • 補填額を差し引いた残額を修繕費として損金算入

事例3:シロアリ被害による修繕・駆除費用

  • 倉庫の木材がシロアリで劣化
  • 急を要する駆除・補修工事を実施
  • 駆除費用・修繕費用の領収書、被害写真を保管
  • 「定期的な防除費」ではなく「突発的な被害対応」として経費計上

法人特有の注意点

  1. 固定資産の損害処理
     建物や高額設備が損害を受けた場合は「修繕費」か「資本的支出」か判断が必要。
  2. 保険金との相殺
     保険金が下りた場合、その分を差し引いた金額が損金となる。
  3. 交際費との区別
     被害対応の飲食や接待費は別途交際費として管理。

税務調査で指摘されないために

  • 証拠書類が不十分だと否認リスクが高い
  • エビデンスは最低7年間保存
  • 会計処理は一貫性を持たせる

経営者へのアドバイス

  • 被害に遭ったらすぐに記録・写真・届出をする
  • 修繕・駆除費用の領収書は「法人名義」で取得
  • 保険加入状況を確認し、補填額と控除額を整理
  • 会計・税務の専門家に相談しながら処理する

まとめ

  • 法人が盗難・自然災害・害虫被害に対応した費用は、正しく処理すれば経費計上できる
  • 事業用資産であること、不可抗力であること、証拠があることがポイント
  • 領収書・写真・届出書・罹災証明書などエビデンスを揃えることで税務リスクを回避
  • 固定資産か修繕費か、保険金との相殺など法人特有の判断が必要

最後に

私はこれまで多くの法人経営者に対し、突発的な損害対応費用の会計処理や税務申告のサポートを行ってきました。
「被害に遭ったがどう処理すべきかわからない」という声は少なくありません。

被害の直後は混乱しがちですが、記録・証拠・届出を徹底することで、経費として認められやすくなり、結果として税負担の軽減や資金繰りの安定につながります。


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