損益分岐点を理解すれば経営が変わる!日次売上の重要性
自社の損益分岐点売上を理解することで、経営の判断力が変わる!
〜日次売上をつける習慣が“数字に強い社長”を育てる〜
はじめに:経営の羅針盤を持たずに走っていないか?
「今月はいくら売上を上げれば黒字になるのか?」
——この質問に、即答できる経営者は意外と少ないものです。
多くの中小企業では、「目標は昨対110%」や「社長の感覚」で売上目標を決めてしまっています。
しかし、実際に黒字になるために必要な売上(=損益分岐点売上)を知らなければ、
経営は“感覚任せの航海”になってしまいます。
経営を安定させるために必要なのは、損益分岐点売上を理解すること。
そして、その数字を現場レベルで把握するために欠かせないのが、日次売上の記録・分析です。
この記事では、
- 損益分岐点売上の考え方と計算方法
- 日次売上をつける意味とメリット
- 損益分岐点を超えるための実践的な行動
を、経営者にわかりやすく解説します。
第1章 損益分岐点売上とは?「赤字と黒字の境界線」
損益分岐点とは
損益分岐点とは、会社の利益が「ゼロ」になる売上高のこと。
つまり、売上がこのラインを超えれば黒字、下回れば赤字という分かれ道です。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
この式が、会社の“生命維持ライン”を示します。
固定費と変動費の考え方
まず、会社の費用は大きく2つに分かれます。
| 費用の種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 変動費 | 売上に応じて増減する費用 | 材料費、仕入、外注費など |
| 固定費 | 売上に関係なく発生する費用 | 家賃、人件費、水道光熱費、リース料など |
損益分岐点は、「固定費を限界利益で回収できる売上はいくらか」を示しています。
限界利益率とは?
限界利益率 =(売上 − 変動費)÷ 売上
簡単に言えば、「売上のうち、どれくらいが固定費の回収や利益に貢献しているか」を表します。
たとえば、
- 売上:100万円
- 変動費:60万円(仕入など)
なら、限界利益は40万円で、限界利益率は40%。
もし固定費が40万円なら、
損益分岐点売上=40万円 ÷ 0.4=100万円
→ 売上100万円を超えれば黒字です。
第2章 損益分岐点を理解する3つのメリット
メリット① 「どれだけ売ればいいか」が明確になる
多くの経営者が「なんとなく」で売上目標を立てています。
しかし、損益分岐点を把握していれば、“数字に根拠のある目標”が立てられます。
たとえば:
- 損益分岐点が月800万円なら、そこを超える売上を目指す。
- 現状売上が750万円なら、あと50万円の粗利改善を考える。
これで経営判断が数字ベースになります。
メリット② 「固定費削減」の効果が見える
固定費を10万円減らすと、損益分岐点がいくら下がるかがすぐわかります。
例:限界利益率40%の会社なら、固定費を10万円削減すると、
損益分岐点は 10万円 ÷ 0.4 = 25万円減少。
つまり、「25万円分の売上を増やしたのと同じ効果」になります。
これが分かれば、コスト削減が“意味のある経営判断”になります。
メリット③ 「価格改定」「採算判断」に強くなる
損益分岐点を理解している経営者は、値上げや撤退の判断が早い。
「この商品は粗利が低すぎる」
「この店舗は損益分岐点に届いていない」
といった判断が、感覚ではなく数字でできるようになります。
第3章 損益分岐点を“日常の経営”に活かすには?
ポイント① 損益分岐点を「日次売上」に落とし込む
月次で損益分岐点を出しても、日々の動きが分からなければ意味がありません。
たとえば、月の損益分岐点が600万円なら、
30日営業で 1日あたり20万円 が目安です。
つまり、「今日は20万円売れたか?」を毎日確認すれば、
“リアルタイムで経営の安全ライン”を把握できるのです。
ポイント② 日次売上を記録する
日次売上とは、「毎日の売上金額を一覧で管理する」こと。
エクセルやクラウド会計、POSデータなどで簡単に管理できます。
| 日付 | 売上 | 目標 | 差額 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 5/1 | 18万円 | 20万円 | −2万円 | 雨で来客減 |
| 5/2 | 22万円 | 20万円 | +2万円 | 新規顧客獲得 |
この記録を続けると、
「どの日に売上が落ちやすいか」「平均単価が下がっていないか」が見えてきます。
ポイント③ 日次売上を“グラフ化”する
数字が苦手でも、グラフなら一目で分かります。
- 目標ラインを横線に設定
- 実績を棒グラフで表示
棒が線を超えていれば黒字ペース、下回れば要注意。
これを毎朝チェックすれば、スタッフ全員が「今日の売上意識」を持てます。
ポイント④ 日次売上は“現場のコミュニケーションツール”
日次売上の管理は、単に数字を記録するだけではなく、
社員と一緒に数字を共有するツールになります。
- 「今月あといくら売れば黒字です」
- 「昨日は平均単価が高かったね」
- 「雨の日対策を考えよう」
数字を使った会話が生まれれば、社員も経営を“自分ごと”として捉え始めます。
第4章 損益分岐点を下げる3つのアプローチ
損益分岐点は「固定費」と「限界利益率」で決まります。
したがって、次の3つの方法で改善できます。
① 固定費を削減する
- 家賃・リース料の見直し
- 不要なサブスクリプションの解約
- 電気・通信コストの最適化
- 外注コストの内製化
1円の固定費削減は、複数円の売上増に匹敵します。
② 粗利率を上げる(限界利益率の改善)
- 値引きをやめる
- 高利益商品・サービスの比率を上げる
- 仕入先を見直す
- 業務効率化で原価を下げる
粗利率が1%上がれば、損益分岐点は確実に下がります。
「売上を増やす」よりも「粗利率を上げる」方が短期的効果は大きいのです。
③ 売上構成を変える
同じ売上でも、利益の高い顧客・商品を増やせば、
損益分岐点を超えるスピードが早まります。
- リピート顧客を増やす
- サブスクモデルで固定収入を作る
- 粗利の低い案件を減らす
「売上の質を変えること」も立派な戦略です。
第5章 事例で学ぶ「損益分岐点×日次売上の活用」
事例①:飲食店A社(売上月500万円)
以前は「なんとなく忙しい月」と「ヒマな月」があるだけの感覚経営。
損益分岐点を算出した結果、月450万円/日15万円 が黒字ラインだと判明。
日次売上を毎日共有するようにしたところ、
スタッフが「今日はあと〇万円!」と声をかけ合う文化に。
3か月後には売上が10%アップ、固定費比率も改善。
→ “数字を共有する経営”がチームを強くした。
事例②:製造業B社(年商1億円)
損益分岐点を把握していなかったため、
売上が増えても資金繰りが苦しい状態が続いていた。
分析すると、変動費が高く、限界利益率が25%しかないことが判明。
固定費6,000万円 ÷ 0.25=2億4,000万円が損益分岐点。
売上1億円では当然赤字体質。
そこで高利益製品への転換・外注削減を進め、粗利率を35%に改善。
→ 損益分岐点が1億7,000万円まで下がり、実質黒字転換に成功。
第6章 数字が苦手な経営者でもできる「損益分岐点思考」
- 「毎月の固定費はいくらか?」を知る
- 「平均粗利率は何%か?」を把握する
- 「損益分岐点売上=固定費 ÷ 粗利率」で計算する
- 「その売上を達成するために、日々いくら売ればいいか」を割り算する
- その金額を日次目標にする
たったこれだけで、経営の“数字の地図”が手に入ります。
第7章 損益分岐点を越えた先にある“利益設計”
損益分岐点を超えた売上からは、利益がどんどん積み上がります。
たとえば、限界利益率40%、固定費400万円なら:
| 売上 | 利益 | 状況 |
|---|---|---|
| 1,000万円 | ±0 | 損益分岐点 |
| 1,100万円 | +40万円 | 黒字へ転換 |
| 1,200万円 | +80万円 | 安定黒字 |
つまり、「あと100万円売る」ではなく、
“あとどれだけ利益が積み上がるか”を数字で見えるようにすることが大切です。
この思考が、「数字を使う経営」への第一歩です。
まとめ:日次売上を記録する社長は、経営のリズムをつかんでいる
| 視点 | 感覚経営 | 数字経営 |
|---|---|---|
| 売上目標 | なんとなく | 損益分岐点ベース |
| 毎日の管理 | 勘と経験 | 日次売上で把握 |
| 社員の意識 | “忙しい”基準 | “黒字ライン”基準 |
| 改善の動き | 感想 | データに基づく |
損益分岐点を知れば、
「どれくらい売ればいいのか」が明確になり、
数字に裏づけのある経営判断ができます。
さらに、日次売上を記録・共有すれば、
会社全体が「黒字をつくるリズム」をつかむようになります。
つまり、損益分岐点 × 日次売上管理=経営の再現性。
数字を“怖いもの”ではなく、“頼れる味方”に変えることこそ、
強い会社づくりの第一歩です。
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芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。