「法人成り後の融資は創業融資?一般融資?申し込み区分の違いと必要書類を徹底解説」
法人成り後の融資は創業融資?一般融資?
〜経営者が申し込みを間違えないためのポイントと事例〜
はじめに
個人事業を数年間営んだあとに、法人化(法人成り)を検討する経営者は多くいます。
このとき「法人設立後の融資は“創業融資”で申し込めるのか?それとも“一般融資”なのか?」という疑問を持つ方は少なくありません。
実は、個人事業の実績があるかどうかで、融資制度の扱いが変わることがあります。
ここを正しく理解しておかないと、せっかくのチャンスを逃したり、書類不足で審査が長引くことになります。
この記事では、個人事業主から法人成りした場合の融資区分、創業融資と一般融資の違い、申し込み時の注意点、必要書類を事例とともに解説します。
1. 創業融資と一般融資の違い
創業融資
- 対象:これから事業を始める人・創業間もない人(概ね2年以内)
- 代表例:日本政策金融公庫「新創業融資制度」
- 特徴:無担保・無保証人で利用しやすい
一般融資
- 対象:既に事業実績がある法人・個人事業主
- 特徴:実績・財務内容に応じて融資額・条件が決まる
- 保証協会付き融資など:自治体・信用保証協会を通じて申し込むことが多い
2. 法人成り後の融資はどちらになる?
原則:法人成り=「創業融資」ではなく「一般融資」
個人事業時代に3年程度の実績がある場合、金融機関は「既に事業実績がある」と判断します。
法人としては「設立間もない」ですが、実質的には事業継続のため「一般融資」と扱われるケースが多いです。
例外:事業内容が大幅に変わる場合は創業融資扱い
- 個人事業時代と全く異なる業種・事業を始める場合
- 既存事業を廃止し、新たに別事業で法人を設立する場合
この場合は「新しい事業の創業」とみなされ、創業融資が利用できることもあります。
3. 金融機関が重視するポイント
① 個人事業の実績
- 売上・利益の推移(過去3期分の確定申告書)
- 顧客・取引先の継続性
- 税金納付状況
② 法人設立の経緯
- 個人事業の延長線か、新事業か
- 設立目的・資本金・役員構成
③ 事業計画
- 法人成り後の売上・利益計画
- 設備投資・運転資金の用途
- 返済原資の明確化
4. 申し込みを間違えないためのチェックリスト
- 個人事業時代の確定申告書3期分を必ず提出
→「実績がある」ことを示す証拠 - 法人設立後の事業計画書を用意
→法人としての今後の収支・返済計画 - 創業融資か一般融資か、金融機関に事前相談
→事業継続か新規事業かで扱いが変わる - 自己資金・資産背景を整理
→金融機関は「返済能力+本気度」を見ている
5. 事例で学ぶ法人成り後の融資
事例1:個人事業の延長で一般融資
Aさんは3年間個人事業で飲食店を経営後、法人化。
店舗・メニュー・顧客も同じため、金融機関は「事業継続」と判断。
一般融資枠で申し込み、過去実績が評価されスムーズに承認。
事例2:新業種で創業融資利用
Bさんは個人事業で通販業を営んでいたが、法人設立して飲食店を開業。
業種が全く違うため、金融機関は「新事業」とみなし、創業融資を利用できた。
事例3:書類不足で審査長期化
Cさんは個人事業の確定申告書を提出せず、法人設立直後に創業融資を申し込み。
実績確認ができず、審査に時間がかかり、条件も厳しくなった。
6. 必要な書類・エビデンス
- 個人事業時代の確定申告書3期分
- 納税証明書(所得税・消費税)
- 法人の登記簿謄本・定款
- 法人の事業計画書・資金繰り計画表
- 見積書・契約書など資金使途を示す資料
- 自己資金の通帳コピー
これらを整えることで、金融機関は「この経営者は準備ができている」と評価し、融資条件も有利になります。
7. 経営者が押さえるべきポイント
- 法人成り後の融資は「創業融資」とは限らず、原則「一般融資」扱い
- ただし、業種変更など事業内容が大きく異なれば「創業融資」扱いの可能性あり
- 個人事業時代の実績をきちんと整理・提出することが重要
- 事業計画書・資金繰り計画を法人用に作成し直すことが必要
- 事前に金融機関や専門家に相談することでミスマッチを防げる
まとめ
- 法人成り後の融資は、個人事業の実績があるかどうかで「創業融資」か「一般融資」かが決まる
- 事業継続の場合は「一般融資」、新事業の場合は「創業融資」になるケースあり
- 個人事業時代の確定申告書・納税証明書・法人事業計画書・資金使途資料を揃える
- 専門家のサポートで準備の精度が高まり、融資成功率が向上する
最後に
私はこれまで多くの経営者の法人成り後の融資サポートをしてきましたが、最初に「どの制度で申し込むか」を正しく判断することが成否を分けると感じています。
金融機関も「準備の整った経営者」には前向きに対応してくれます。
本記事を参考に、書類・エビデンスを整え、自社に最適な制度で融資を申し込み、成長の資金を確実に確保してください。
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芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。