資本金はいくらにすべき?融資に強い最適額と業種別の基準を解説
資本金はいくらにすればよい?
融資が通りやすくなる“最適な資本金額”とは
〜経営者が迷わないための実務ガイド〜
はじめに:資本金は「融資の通りやすさ」を左右する最初の指標
会社を設立する際、必ずぶつかるのがこの疑問です。
- 「資本金はいくらにすべき?」
- 「少ないと融資に不利になる?」
- 「100万円で十分?」
- 「10万円でも大丈夫?」
- 「見栄を張って多くした方がいい?」
結論から言います。
■ 結論
✔ 資本金は“多ければ良い”わけではない
✔ しかし“少なすぎる資本金”は確実に融資が不利になる
✔ 融資を考えるなら最低でも100万円、理想は300万円以上
✔ 業種によっては500万円〜1,000万円が“信用の基準”になる
資本金は、金融機関から見れば
「社長が事業にどれだけ本気か」を示す数字 です。
この記事では、
経営者が迷わず判断できるように、資本金の考え方を徹底解説していきます。
第1章 資本金とは何か?
金融機関が“資本金の額”を見る理由
資本金は「会社に最初から入っている自己資金」であり、
次のような役割を持ちます。
■ 資本金の役割①:会社の体力(耐久力)を表す
資本金が大きいほど、
- 売上が立つまで耐えられる
- 設備投資ができる
- 運転資金に余裕がある
という判断ができます。
■ 資本金の役割②:創業者の覚悟を測る指標
金融機関は、こう考えます。
✔ 自分の金をどれだけ入れてきたか=本気度の証拠
たった10万円しか入れていない会社と、
300万円入れている会社では、
“事業への思い”が全く違うと見られます。
■ 資本金の役割③:融資の安全性の判断材料
資本金が少ない会社は、
「すぐに資金ショートするかもしれない」と見られます。
■ 資本金の役割④:取引先の信用にも直結
- 建設業許可
- 取引基本契約
- 業務委託契約
- 支払サイト
これらにも資本金は影響します。
第2章 資本金が少なすぎると起こる問題
資本金10万円や1円で設立する会社は珍しくありません。
しかし、ほぼ確実に次の問題が起きます。
① 融資が通りにくい
資本金10万円=すぐ倒れる会社
と判断されます。
② 本業が軌道に乗る前に資金ショートする
創業直後は売上が安定しません。
資本金が少ない会社は、
売上が出る前に運転資金が枯れてしまいます。
③ 税理士・社会保険事務所・専門家からも警戒される
「適当に作った会社」という印象を持たれやすい。
④ 取引先から信用されにくい
資本金10万円の会社に
「100万円の商品を売る」ことに不安を感じるのは当然です。
⑤ 設立後すぐに追加融資が必要になる
資本金不足の会社は、
開業から1年以内に資金繰りが苦しくなります。
第3章 では、融資を考えるなら資本金はいくらが最適か?
資本金の最適額は業種によって変わります。
ここでは“融資が通りやすい”という観点で整理します。
■ 結論:
✔ 最低ライン:100万円
→ 創業融資の心理的ライン。
→ 10万円〜50万円では間違いなく疑われる。
✔ もっとも理想的:300万円
→ 銀行担当者が安心する基準。
→ 「本気度」「耐久力」「安全性」の評価が上がる。
✔ 設備投資がある業種:500万円〜1,000万円
→ 製造業・建設業・飲食店は最低300万円以上ほしい。
→ 内装設備・機械などの投資が大きい業界は資本金が信頼に直結。
第4章 業種別:融資が通りやすい資本金の目安
業種ごとに適切な資本金は異なります。
■ 建設業
推奨:300万〜800万円
理由:
- 取引先の信用基準が高い
- 人件費・材料費でキャッシュアウトが大きい
- 建設業許可の取得時にも有利(三期連続黒字の後に資本金の厚みが影響)
■ 製造業
推奨:500万〜1000万円
理由:
- 機械設備・工具類が高額
- 仕入れ代が先行する
- 在庫保有がある
資本金が少ないと「耐久力がない」と判断される。
■ 飲食業
推奨:300万〜600万円
理由:
- 内装・厨房設備が高額
- 最初の3ヶ月が赤字になりやすい
- 人件費の先行負担が大きい
■ IT・デザイン・コンサル
推奨:100万〜300万円
理由:
- 設備投資が少ない
- 粗利率が高い
→ 低資本金でも融資は通るが、10万円は“本気度が低い”と思われる。
■ 小売業
推奨:300万〜500万円
理由:
- 在庫購入が必要
- 店舗物件の保証金が重い
■ 介護・医療
推奨:500万以上
理由:
- 人件費・設備費が大きい
- 行政手続き・運転資金が必要
第5章 創業融資の現場で、資本金はどう評価されるか?
金融機関は資本金を次のように評価します。
■ 評価ポイント①:社長自身がどれだけお金を入れたか
“自分のお金をいくらリスクにさらしたか”
ここが最重要。
■ 評価ポイント②:運転資金がどれだけ持つか
資本金が大きいほど、
「売上が立つまでの耐久力」が評価されます。
■ 評価ポイント③:計画が実現可能かどうか
資本金5万円で「月商300万円の事業をします」
と言われても、信用が得られません。
■ 評価ポイント④:資金繰りに余裕があるか
資本金が少ない会社は、すぐ詰まると見られます。
■ 評価ポイント⑤:創業者の本気度
お金の入れ方=覚悟
と判断される。
第6章 事例:資本金で融資が変わった会社の実例
■ 事例① 資本金10万円 → 融資否決(飲食店)
銀行の評価:
- 10万円では内装工事に耐えられない
- 運転資金が持たない
- 計画に無理がある
対策:資本金300万円で再申請 → 500万円の融資に成功
■ 事例② IT企業・資本金50万円 → 創業融資300万円成功
理由:
- 粗利が高い業種
- 固定費が少ない
- 事業計画が実現可能
金融機関が「業種特性」を評価した例。
■ 事例③ 建設業・資本金30万円 → 追加資料を求められる
銀行の指摘:
- 労務費・材料費の支払いが先行する
- この資本金では倒れるリスクが高い
→ 資本金200万円に増資 → 800万円の融資が通る。
第7章 資本金を増やすほど税金が増えるのか?
結論:気にしなくて良い。
資本金を増やすと税金が増えるのは、
原則として 資本金1,000万円以上 の場合。
■ 資本金1,000万円以上で変わる税制度
- 消費税が初年度から課税(免税が使えない)
- 事業税の外形標準課税が適用される可能性(1億円〜)
■ 100〜500万円の資本金増は税負担にほぼ影響しない
第8章 最終回答:資本金はいくらにすべきか?
これが実務上の結論です。
■ 融資を受ける前提の資本金
✔ 100万円:最低ライン(これ以下は融資が厳しい)
✔ 300万円:融資が最も通りやすい“安心ゾーン”
✔ 500〜1000万円:設備投資・仕入が大きい業種の理想ライン
まとめ:資本金の額 = “社長の覚悟を見せる数字”
資本金は、
単なる数字ではありません。
✔ 社長の覚悟
✔ 事業の耐久力
✔ 金融機関の安心感
✔ 取引先の信用
✔ 成長のスピード
すべてに影響する“最初の信用設計”です。
どんなに良い事業でも、
資本金が低すぎるだけで「信用の土台」が弱くなる。
会社のスタートは、信用の積み上げです。
その第一歩が 資本金 です。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。