合同会社と株式会社の融資の違い|銀行が評価する信用力の本質とは?
合同会社と株式会社では融資の受けやすさが変わる?
金融機関が“会社形態”で判断する本当の理由を徹底解説
はじめに:合同会社と株式会社で融資に差はあるのか?
起業する際、
- 合同会社で始めるか?
- 株式会社で始めるか?
これは非常に多くの経営者が迷う最初のポイントです。
そして最も多い質問がこれです。
「合同会社だと融資が通りにくいって本当ですか?」
結論から先に言うと、
■ 結論
✔ “会社形態そのもの”で融資が不利になることはない
✔ しかし実際の現場では、合同会社は「弱く見られる」ケースがある
✔ その理由は制度ではなく“社会的イメージ”と“実務運用”にある
つまり、
形式上のルールでは差がないが、
“実務”では差が出やすいということです。
この記事ではその理由を、
金融機関内部の視点も交えて徹底解説していきます。
第1章 合同会社と株式会社の制度上の違い
実は融資のルール上は全く差がない
まず制度面から整理すると、
金融機関の融資基準は “会社形態ではなく財務内容” です。
● 会社法上の位置付け
- 株式会社 → 所有と経営が分離可能
- 合同会社 → 所有=経営(原則)
● 税務・会計
- 法人税・消費税・会計基準は同じ
- 設立費用・維持費が合同会社の方が安い
● 金融機関
→ 会社形態で融資可否を決めてはいない
→ 財務内容・事業計画・実績が最優先
つまり、制度上は合同会社でも融資が不利になることはありません。
しかし、現場では違う現象が起きています。
第2章 ではなぜ、合同会社は「融資が通りにくい」と言われるのか?
これは制度ではなく、
金融機関の“心理”と“実務のクセ”に原因があります。
以下の5つが主な理由です。
理由① 「資本金が少ない会社が多い」というイメージ
合同会社は設立費用が安く簡単に作れるため、
- 資本金10万円
- 資本金1万円
- 資本金0円(実質)
という会社が非常に多い。
金融機関からすると資本金は“安全性を測る数字”。
✔ 資本金が少ない=会社の体力が弱い
✔ 会社の体力が弱い=融資リスクが高い
この発想になるため、
合同会社は“慎重に審査される傾向”があります。
理由② 株式会社よりも「経営の本気度が低い会社」が混ざりやすい
金融機関の本音としては、
✔ 株式会社=本気度が高い、投資志向、法人としての明確な覚悟
✔ 合同会社=低予算で作れる、個人事業の延長のケースも多い
という傾向を感じています。
※あくまで“傾向”であり、制度ではありません。
銀行担当者は“経営者の本気度”を常に見ています。
合同会社は
「副業」「小規模」「個人の延長」
という印象を持たれやすいため、対面でしっかり説明が必要です。
理由③ 「役員(社員)=出資者」という構造が、銀行にとって分かりづらい
合同会社は出資者を“社員(メンバー)”と呼び、
所有と経営が一体になる構造。
銀行にとっては、
- 役員の責任
- 出資の考え方
- ガバナンス
が株式会社より分かりづらい。
つまり、
銀行は“理解しにくい形態”を敬遠する傾向があります。
理由④ 合同会社は決算公告義務がないため「透明性が低い」と思われる
株式会社は決算公告の義務がありますが、
合同会社はありません。
銀行からすると、
- 数字が見えない
- 情報開示が少ない
- 財務が追いにくい
という負担があります。
✔ 「情報が少ない会社」=リスクが高い
という判断が働くため、慎重に審査されます。
理由⑤ 小規模・短期運営の会社が多いという統計的背景
合同会社の多くは、
- 個人事業からの切替
- 小規模サービス
- IT・デザインなどの1人法人
- 副業法人
こういった属性の企業が多い。
銀行としては、
これらの業種は“返済能力の予測が難しい”ため、慎重に審査されがち。
第3章 では、合同会社は融資が取れないのか?
→ そんなことはない。「説明次第」で評価は逆転できる
合同会社でも融資は普通に取れます。
問題は “銀行担当者の理解度”と“社長の説明力”。
ポイントは次の3つ。
✔ ポイント① 資本金がしっかり入っているか?
金融機関の信頼度は資本金に直結します。
- 資本金300万円
- 資本金500万円
- 資本金1,000万円
など、ある程度の資本金を入れておくと、
合同会社でも「本気度」が伝わります。
✔ ポイント② 決算書と事業計画がしっかりしているか?
合同会社は“イメージのハンデ”があるため、
- 事業計画書
- 資金繰り表
- 売上根拠資料
- 返済計画
これらを株式会社以上に丁寧に見せる必要があります。
✔ ポイント③ 「あえて合同会社を選んだ理由」を説明できるか?
金融機関は“選んだ理由”が気になります。
説明例:
「出資者=経営者という形が合っている」
「迅速な意思決定ができる」
「将来的には株式会社化も視野に入れつつ、現在はコスト効率を優先」
合同会社を“戦略的に選んでいる”ことが分かれば、
銀行の評価は大きく変わります。
第4章 株式会社の方が有利になるケース
株式会社の方が有利になる場面は確かにあります。
● ケース① 大きな金額の融資(1000万〜3000万以上)
融資額が大きくなるほど、
- 資本金の大きさ
- 組織体制
- ガバナンス
- 提携取引先の信用
が重要になるため、株式会社が有利になることがあります。
● ケース② 上場企業・大企業との取引が前提の事業
大企業は「取引基本契約」で
法人形態を株式会社前提で書いているケースがあります。
● ケース③ 出資を受ける予定がある場合
合同会社は出資構造が株式とは異なるため、
VC・投資家からの出資には向きません。
● ケース④ 社会的信用を重視する業界
- 建設業
- 医療・介護
- 製造業
- 物流
- 公共工事
これらは株式会社が有利です。
第5章 実際の融資現場ではどうか?
合同会社でも普通に融資が通っているリアル事例
以下は、私が支援したリアルな例です。
■ 事例① 合同会社・創業期でも融資500万円獲得
業種:サービス業
資本金:30万円
銀行の懸念:
- 規模が小さい
- 合同会社で実績がない
対策:
- 事業計画書を詳細に提出
- 開業前の顧客予定リスト
- 利益計画・返済計画
結果:満額回答
■ 事例② 合同会社・設立3年で融資1500万円獲得
業種:IT開発
資本金:50万円
銀行の懸念:なし
→ 粗利益率が高く、キャッシュフローが良い会社だったため。
■ 事例③ 合同会社→株式会社へ変えた後、融資枠が倍増
業種:建設業
資本金:300万円
株式会社化により、
- 社会的信用
- 銀行評価
- 売上規模
が拡大し、融資枠は大きく増えた。
第6章 経営者が知るべき“本質”
制度上は合同会社でも株式会社でも融資に差はありません。
しかし実務では、
■ 本質
✔ 合同会社=信用の起点が低く見られやすい
✔ 株式会社=信用の起点が高く見られやすい
この差は、制度ではなく、
“人間心理”と“社会で積み重ねられた実務経験”の差です。
第7章 結局、どちらが融資に有利なのか?
結論は次の通り。
■ 小規模・スモールビジネス
→ 合同会社で全く問題なし
→ ただし、事業計画が必須
→ 資本金は一定額入れておくと安心
■ 大型融資・信用力を重視する業界
→ 株式会社が有利
→ 社会的信用・透明性が評価される
■ 中長期の成長を前提とする場合
→ 最初は合同会社でもOK
→ 事業が伸びてきたタイミングで株式会社化するのが理想的
まとめ:合同会社でも融資は取れる。問題は“信用設計”にある
✔ 制度:差はない
✔ 実務:差が出やすい
✔ 銀行心理:株式会社の方が分かりやすく信用されやすい
✔ 合同会社:事業計画の説明がより重要
✔ 大型案件:株式会社が有利
重要なのは、
「どちらの形態でどのように信用を作るか」
という視点です。
会社形態は“スタート地点”にすぎません。
事業の強さ、粗利、キャッシュフロー、社長の説明力が
融資の可否を決定します。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。