新店舗出店は自己資金?融資?最適な資金戦略を徹底解説
新店舗を出す時は自己資金?それとも全額融資?
返済は“新店舗で返す”ことが会社を守る最重要ルール
はじめに:新店舗出店は「ワクワク」と同時に「財務リスク」も増える
新しい店舗を出す時、経営者は大きな期待を抱きます。
- 売上アップ
- ブランドの強化
- 人材育成の場
- 商圏の拡大
しかし、出店には必ず “資金調達の判断” がついてきます。
「自己資金はいくら必要?」
「全額融資は危険?」
「返済はどう考えるべき?」
この問いに対して、明確な結論があります。
結論:理想は“最大限融資を活用し、新店舗の利益で返済する”こと
資金調達の基本は、
● 自己資金:リスクを抑えるためのクッション
● 融資:成長のためのレバレッジ
そして何より重要なのは、
● 新店舗の返済は「既存店ではなく、新店舗の利益」で返済すること
これができないと、既存店のキャッシュが奪われ、
本部の資金繰りが苦しくなり、
「出店の数が増えるほど倒産リスクが高まる」
という最悪の結果を招きかねません。
この記事では、
- 自己資金と融資の理想のバランス
- なぜ全額融資が理想となるのか
- 新店舗で返済するモデルの重要性
- 出店リスクを最小化する方法
を、経営者に分かりやすく解説します。
第1章 新店舗出店は「自己資金で出すべき?」という誤解
多くの経営者は
「借金は怖いから、できるだけ自己資金で出す」
と考えます。
しかし、これは半分正しく、半分間違いです。
1-1 自己資金を入れすぎると“資金繰りが死ぬ”
自己資金を使いすぎてしまうと、
- 手元資金が薄くなる
- 突発的な支払いに弱くなる
- 運転資金や人件費が払えなくなる
- 銀行評価も下がる
つまり、 “出店して黒字なのに倒産する” 危険まであるのです。
1-2 自己資金は「全額投入」ではなく「一部でいい」
自己資金を投入する目的は、たった2つです。
- 出店時のリスクを分散させる
- 銀行融資を受けやすくするための“自己資金の証明”
多くの場合、
自己資金は出店総額の10〜20%あれば十分。
残りは融資が理想です。
第2章 新店舗は「全額融資」が理想である3つの理由
全額融資と聞くと、
「借金が多くなるから危険なのでは?」
と思う方がいますが、それは誤解です。
実は、正しい出店の財務戦略として、
“初期費用は最大限、融資でカバーする”
ことが基本です。
理由① 手元現金を減らさず“倒産リスク”を減らせる
出店費用を全額自己資金で賄ってしまうと、
手元の現金が一気に減ります。
手元現金は、いざという時の命綱。
これが少ない会社は、非常に危険です。
融資を使えば、以下の資金を手元に残せます。
- 運転資金
- 人件費の余力
- 貸倒リスクへの対応力
- 次の出店の準備金
つまり、出店後の“安全運転”ができるのです。
理由② 銀行評価が良くなる(実は常識)
銀行が評価するのは、
「手元に現金がある会社」です。
融資を受けても、手元現金が厚くなるため、
銀行から見ると「財務体質が安全」の扱いになります。
逆に、自己資金を使い果たす会社は、
「内部留保が薄い=危険」と判断されることも多いです。
出店は“成長戦略”です。
成長戦略は、借入を上手に使ってこそ成立します。
理由③ 新店舗の利益で返済できるため“負担が軽い”
新店舗が黒字になる前提で出店するわけですから、
その利益で返済できれば問題はありません。
むしろ、新店舗の利益で返済できない場合、
そもそも出店計画が失敗なのです。
つまり、
● 新店舗が生んだ利益で返済する → 正しい成長
● 既存店から返済資金を引っ張る → 危険な成長
ここが最重要ポイントです。
第3章 返済は“新店舗で返す”ことが会社を守る最大のルール
新店舗の返済を、既存店で負担し始めると…
- 既存店の利益が薄くなる
- 本部の資金繰りが悪化する
- 複数店舗が連鎖的に赤字化
- 出店するほど会社が苦しくなる
こうした経営崩壊の連鎖が始まります。
3-1 新店舗の返済は、新店舗の「営業キャッシュフロー」で行う
返済に使うのは“営業キャッシュフロー”です。
営業キャッシュフローとは:
売上 − 経費 − 原価 + 減価償却費
つまり、新店舗が本業で稼いだ“純粋な現金”です。
3-2 新店舗のキャッシュフローがプラスになるまでの期間を見える化する
✔ 回収に何ヶ月かかるか
✔ 毎月の最低売上ライン
✔ 固定費と損益分岐点
✔ 費用回収のタイミング
これを明確にしない出店は、
「感覚だけのギャンブル経営」に近い危険な判断です。
第4章 新店舗出店の正しい資金計画
以下が、数字に強い経営者が採用する「基本の出店フレーム」です。
■ ① 出店総額の算出
- 内装費
- 家賃保証金
- 設備投資
- 広告費
- 人件費(オープン前)
- 備品・消耗品
これらをすべて“投資額”として見積もります。
■ ② 自己資金10〜20%
→ 銀行からの信頼確保・リスク軽減
■ ③ 残りは全額融資
→ 長期(5〜10年)が基本
→ 毎月の返済額を低くして安定経営へ
■ ④ 新店舗の利益で返済する
→ 既存店から資金流入をさせない
→ 1店舗ごとの採算管理を徹底する
■ ⑤ 開業6か月〜1年は“初期赤字”を想定して現金を確保する
出店初期は以下の理由で赤字になることが多いです。
- 認知獲得まで時間がかかる
- OJT期間の人件費
- 原価率が安定しない
- 広告費が先行する
ここを乗り切るためにも、
融資で手元現金を厚くする必要があります。
第5章 業種別:最適な「融資×自己資金」のバランス
● 飲食店
- 初期投資が大きい
- 流動性が低い
→ 融資メイン、自己資金15%程度
● 美容院
- 回収スピードが速い
- 人件費比率が高い
→ 融資80%、自己資金20%
● 小売店
- 在庫を持つ
- 売掛金がない
→ 融資80%、自己資金20%
● 介護・医療系
- 初期投資が大きい
- 回収に時間がかかる
→ 融資90%、自己資金10%
● フランチャイズ加盟店
- 本部指導により成功率高め
→ 融資90%、自己資金10%
第6章 経営者が絶対に覚えるべき“出店の黄金ルール”
✔ ルール① 自己資金を使いすぎない
✔ ルール② 出店費用は最大限融資を活用
✔ ルール③ 手元現金は厚く残す
✔ ルール④ 返済は“新店舗”で行う
✔ ルール⑤ 出店判断はキャッシュフローで行う
✔ ルール⑥ 損益分岐点を必ず計算する
まとめ:自己資金か?融資か?より重要なのは「返済の仕組み」
結論として、
🔵 自己資金:10〜20%(リスク分散のため)
🔵 融資:80〜90%(成長資金として)
🔵 返済:新店舗の営業キャッシュフローのみで返す
この仕組みづくりこそが、
出店しても倒れない“強い会社”をつくる唯一の方法です。
店舗を増やすほど資金繰りは厳しくなる——
これは、正しい出店戦略を知らない会社に共通する現象です。
逆に、
正しい資金調達 × 正しい返済設計 × 正しいキャッシュフロー管理
ができる会社は、
- 出店するほど利益が増え
- 店舗数と財務基盤が比例して強くなり
- 銀行からの信用も高まり
- 成長のスピードが加速します
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。