既存事業とは別の新規事業で融資を受けるには?銀行を納得させるための準備と戦略を解説
新規事業で1,000万円の融資を満額引き出すには?
〜 銀行が納得する“準備”と“戦略”を経営者目線で徹底解説 〜
はじめに:新規事業の融資は「夢」ではなく「根拠」で勝負する
新しい事業を始めたい。
そのために1,000万円ほどの資金が必要。
このような相談を銀行に持ち込む経営者は少なくありません。
しかし現実には、「既存事業が黒字でも、新規事業の融資は通らない」ケースが多発しています。
銀行の本音はこうです。
「新規事業は実績がない。返済原資の根拠がない」
つまり、“夢”だけでは銀行はお金を貸さない。
“数字”で再現性を見せられるかどうかが勝負です。
この記事では、新規事業の融資を満額(1,000万円)で引き出すために、
経営者がどのような戦略と準備をすべきかを徹底的に解説します。
第1章:銀行は新規事業に「3つの不安」を抱えている
まず理解しておくべきは、銀行が新規事業を見るときの「3つの不安要素」です。
この3つを払拭できれば、融資のハードルは一気に下がります。
① 返済原資の不安
「その事業で本当に利益が出るのか?」
銀行は、返済の裏付け=キャッシュフローの根拠を重視します。
まだ売上実績のない新規事業では、当然そこが弱い。
だからこそ、「事業計画で論理的に説明する」必要があるのです。
② 経営リソースの不安
新規事業に人材・時間・資金を割くことで、
既存事業が弱まるのではないか?
これも銀行が気にするポイントです。
新規事業だけでなく、既存事業の安定性を同時に示す必要があります。
③ 実行力の不安
銀行は「経営者の本気度と能力」を見ています。
つまり、
「この社長なら本当にやり切るだろうか?」
という“定性的評価”です。
これを証明するには、経験・実績・準備の深さを資料で示すことです。
第2章:新規事業で満額融資を受けるための5つの準備
新規事業の融資は、「書類勝負」です。
融資担当者が「これなら上に通せる」と思える資料を作ることが、最大のカギです。
① 事業計画書を“銀行目線”で作る
事業計画書で最も大事なのは「ロジック」と「再現性」。
銀行がチェックするのは以下の4点です。
| 銀行が見るポイント | 経営者が準備すべき内容 |
|---|---|
| 市場性 | 根拠のあるデータ、競合比較 |
| 儲けの構造 | 仕入・粗利・固定費・損益分岐点 |
| キャッシュフロー | 月次の入出金シミュレーション |
| 実行体制 | 誰が・いつ・どのように行うか |
② 売上計画を「3パターン」で提示
新規事業は不確実性が高いため、銀行は「最悪ケース」に備えます。
そこで、
楽観・標準・悲観の3パターンを提示することで、
リスク耐性を見せられます。
| 区分 | 売上計画 | 利益 | キャッシュ残高 |
|---|---|---|---|
| 楽観 | 1,500万円 | 300万円 | +200万円 |
| 標準 | 1,000万円 | 100万円 | ±0 |
| 悲観 | 700万円 | ▲100万円 | ▲150万円 |
このような見せ方をするだけで、銀行の印象は劇的に変わります。
③ 既存事業の安定性を証明する
新規事業の融資審査でも、実は既存事業の数字が最重要です。
理由はシンプルで、「返済が苦しくなったときに、どこからお金を捻出できるか」を見るためです。
✅ 既存事業が黒字であること
✅ キャッシュフローがプラスであること
✅ 代表者の信用情報が良好であること
この3つが揃えば、銀行は「返済能力あり」と判断します。
④ 自己資金を準備する(最低2割)
銀行は、「リスクを経営者と共有したい」と考えています。
1,000万円の融資であれば、200万円程度の自己資金を投入することで、
「本気度」を示すことができます。
これが“銀行が安心する心理的な担保”です。
⑤ 事業パートナー・見込み客の存在を証明
新規事業で最大のリスクは「需要の不確実性」。
これを減らすために、見込み顧客・契約予定・業務提携先を提示しましょう。
例:
- 既に契約交渉中の企業名
- 取引見込みの証明メール
- 発注予定書・内諾書
これらを添付するだけで、銀行の印象は一気に変わります。
第3章:融資金額1,000万円を満額で引き出す実践ステップ
新規事業の融資では、「順序立てた準備」が重要です。
次の5つの流れを意識しましょう。
ステップ1:目的と金額を明確化する
「なんとなく1,000万円必要」では通りません。
どの項目にいくら必要かを具体化します。
| 使途 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 設備投資(内装・什器) | 400万円 | 見積書添付 |
| 広告宣伝費 | 150万円 | 初期販促計画書 |
| 仕入資金 | 300万円 | 月商ベース見込み |
| 運転資金 | 150万円 | キャッシュフロー表より |
| 合計 | 1,000万円 |
ステップ2:損益計画書(PL)を3期分作成
新規事業でも、少なくとも3期分の損益予測を用意します。
重要なのは、「数字の一貫性」。
売上→粗利→経費→利益→キャッシュフローの整合性を説明できるようにしておきましょう。
ステップ3:資金繰り表を添付する
融資後の資金の流れを月単位で可視化します。
銀行は、「いつ資金が底をつくか」を必ず見ます。
| 月 | 売上 | 入金 | 支払 | 資金残高 |
|---|---|---|---|---|
| 4月 | 0 | 0 | ▲150万円 | 850万円 |
| 5月 | 200万円 | 100万円 | ▲200万円 | 750万円 |
| 6月 | 400万円 | 350万円 | ▲250万円 | 850万円 |
このように、「融資後に資金がどのように動くか」を説明できると説得力が格段に増します。
ステップ4:根拠資料を添付する
融資審査は“証拠”で動きます。
- 仕入見積書
- 内装業者の契約書
- サービス概要パンフレット
- 市場調査資料
これらを添えると、「机上の空論ではない」と伝わります。
ステップ5:既存取引銀行を活用する
新規事業だからこそ、既存取引銀行を活用するのが鉄則。
理由:
- 既存事業の実績を把握している
- 信頼関係がある
- 決算書の中身を理解している
既存の信頼関係の上で説明すれば、1,000万円の壁は越えやすくなります。
第4章:満額融資を実現した成功事例
事例①:飲食店オーナー(B社)
既存事業:テイクアウト専門
新規事業:イートインカフェ(開業資金1,000万円)
ポイント
- 売上予測を平日・休日別に設定
- テイクアウト顧客のリスト活用で「既存顧客流入」を証明
- 改装費・広告費の見積をすべて添付
結果:希望通り1,000万円満額融資。
事例②:建設業A社
既存事業:住宅工事
新規事業:不動産仲介部門(立上げ資金1,200万円)
ポイント
- 既存顧客データベースを活用した販売シミュレーションを提示
- 社員2名の配置計画を詳細に提示
- キャッシュフローで翌年黒字化を明確化
結果:減額なしで融資実行。
第5章:銀行との交渉で押さえるべき3つの話し方
1️⃣ 「必要だから借りたい」ではなく、「成長に必要だから借りる」
→ 銀行は“攻めの資金”に前向き。
2️⃣ 「リスクを理解している」姿勢を見せる
→ 損益分岐点や赤字シミュレーションを提示。
3️⃣ 「既存事業で支える」構図を説明
→ 返済原資の根拠を具体的に語る。
最後に:新規事業の融資は「信頼」と「根拠」で決まる
新規事業の融資で満額を引き出すには、
- 熱意(本気度)
- 根拠(計画)
- 信頼(実績)
この3つを揃えることがすべてです。
数字を整え、根拠を示せば、銀行は必ず応えてくれます。
そして、その準備こそが経営者の仕事なのです。
最後に:私が提供するサポート
私は、銀行の評価基準を理解した上で、
経営者が「満額融資」を実現できるよう、
次のようなサポートを行っています。
- 新規事業計画書の作成支援
- 損益・資金繰りシミュレーション作成
- 銀行提出用資料(根拠明細)の整備
- 面談時のプレゼン指導(銀行担当者向け想定問答)
経営者が「夢を語る」だけでなく、
「数字で信頼を勝ち取る」ための財務戦略を共に構築しています。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。