「黒字なのに倒産」の真実
損益計算書(P/L)だけに頼る経営が、あなたの会社を静かに壊していく理由
はじめに|“黒字なら安心”は、もはや通用しない
決算書で「利益が出ている」と言われて安心した——
でも実際には、手元にお金が残っていない。
その違和感に、あなたはもう気づいているはずです。
実は、損益計算書(P/L)だけを見て経営判断をしていると、
気づかないうちに資金繰り破綻=倒産リスクに直面します。
損益計算書の限界とは?
損益計算書は「期間内にどれだけの利益が出たか」を示すもの。
ただしそこには、“お金の動き”が正確に反映されていないのです。
▽ たとえば…
- 売上が上がっても、入金が2ヶ月先なら → お金はまだない
- 減価償却費は経費になるけど → 実際には支出なし
- 借入返済は支出だけど → P/Lには一切出てこない
つまり、「利益=お金が増えている」ではないということ。
【事例】P/L重視の経営が生んだ“黒字倒産”
関西の製造業A社は、前年より売上が15%増加し、営業利益も1,000万円の黒字。
だが、その直後に資金ショートを起こし、追加融資も受けられず倒産。
原因は、「利益重視」で新規設備を導入し、支払サイトの長い得意先を優先して売上を拡大したこと。
結果的に、資金繰りは常にギリギリ、支払期限に間に合わず信用を失い、資金調達も断たれた。
損益計算書だけでは見抜けない「3つの危険」
① 売上増=資金増とは限らない
掛け売りが多い企業では、売上が増えてもキャッシュは後から。
仕入・人件費は先払い、回収は後——資金が先に尽きる。
② 設備投資・借入返済はP/Lに出ない
借入金返済や車両・建物の購入など、大きな支出がある月ほど、P/Lには何も表示されない。
→ 「見えてないコスト」で資金が減り続ける。
③ 利益が出ていても、税金でキャッシュが減る
黒字決算の場合、納税額も大きくなる。
手元に現金がなくても、税金は容赦なく請求される。
→ 結果、「黒字なのにお金がない」が加速する。
本当に見るべき数字とは?「キャッシュフロー思考」へ
キャッシュフロー経営=お金の出入りで経営判断をすること。
P/Lはあくまで参考、主軸は「お金の動き」です。
【例】月次資金繰り表があれば:
- 売上予定と入金時期
- 仕入・外注・給与・税金の支払予定
- 借入金返済・金利・設備投資の支出
→ 数ヶ月先まで資金残高の見通しが立つ
→ 無理な投資・不必要な節税を防げる
「損益」→「資金」へ視点を変えるだけで起こる3つの変化
① 無理な節税がなくなる
→ 利益が出ていても、資金繰りが厳しければ「保険・共済・車購入」など無理な節税はしない判断ができる。
② 設備投資が戦略的になる
→ 現金残高の推移がわかるから、「投資しても余力があるか?」を事前に確認できる。
③ 銀行対応も良くなる
→「キャッシュを管理している経営者」は金融機関からの評価が高く、融資審査も通りやすくなる。
損益計算書は“過去”、キャッシュフローは“未来”を見るツール
損益計算書は、「過去を切り取ったスナップ写真」にすぎません。
でも、経営者が見るべきは、今とこれから。
- 今、どれだけの資金が残っているか
- 3ヶ月後、資金が尽きないか
- どの時点で借入が必要になるか
これらを把握するには、資金繰り表・キャッシュフロー計画書が不可欠です。
まとめ|“黒字”に安心せず、“現金”を管理する経営へ
- 損益計算書は重要だが、キャッシュフローを見なければ誤った意思決定に陥る
- 黒字でも潰れる、赤字でも生き残れるのは「資金の差」
- これからの経営は「お金の見える化」が前提条件
ご相談ください|キャッシュフロー経営の整備を支援します
- 資金繰り表のテンプレート提供・導入支援
- 月次のキャッシュフロー分析
- 銀行提出用の資金管理資料作成サポート
- 会計事務所として、数字から未来を見る経営を全力でサポートします
損益で安心するのはもうやめましょう。
あなたの会社を守るのは、“お金”です。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。