コラム

個人向け国債がNISA対象に?相続税非課税案と「個人向け国債プラス」の中身を解説

こんにちは!税理士の長岡です。今回は、「個人向け国債がNISA対象に?について!」の内容になります。

政府が、個人向け国債の魅力を高めるための検討を本格化させています。NISAへの組み入れや、相続税の軽減、さらには商品ラインナップの拡充まで。金利のある世界に戻ったいま、預貯金でも株式でもない「第三の選択肢」として注目が集まっています。

そして見逃せないのが、2027年1月発行分から、非上場法人などにも購入対象が広がる予定だという点です。個人の資産形成の話にとどまらず、会社の余剰資金の置き場所という論点にもつながってきます。この記事では、経営者の視点から今の議論を整理しました。

いま検討されている3つの方向性

自民党 相続税の減免/利回りを2割程度高める/解約規制の緩和
国民民主党 NISAの対象商品に追加(相続税非課税も含む法案を参議院に提出)
財務省 新商品の導入へ検討開始/物価連動債やボーナスクーポン付き商品が議論に

国民民主党は2026年7月10日、個人向け国債をNISAの対象商品に追加する法案を参議院に提出しました。この法案には、国債に関する相続税の非課税化も盛り込まれています。

これを受けて片山財務大臣は7月14日の記者会見で、「はっきり決め切れないけれども、やっぱりやっていくときではないか」と、制度見直しに前向きな姿勢を示しました。財務省は2026年中にも商品性見直しの具体案をまとめる方針で、年末の税制改正論議の焦点になる可能性があります。

非課税になると、どれくらい変わるのか

現在、国債の利子には約20%の税金がかかります。仮にこれが非課税になれば、手取りの利回りはそのぶん改善します。

たとえば利率1.0%の国債を500万円分保有した場合、年間の利子5万円に対して約1万円が源泉徴収されます。非課税になれば、この1万円がそのまま手元に残る計算です。金額としては地味ですが、元本保証に近い商品でこの差が出るインパクトは小さくありません。

【経営者に直結】2027年1月から「個人向け国債プラス」へ

財務省は、2026年12月募集分・2027年1月発行分から、個人向け国債の販売対象を一部の非営利法人や非上場法人などへ広げ、名称を「個人向け国債プラス」に変更する予定とされています。目的は「国債の安定保有層の拡大」と明記されています。

これが実現すれば、中小企業も個人向け国債を購入できることになります。名前は「個人向け」のままですが、実質的には法人にも門戸が開かれるということです。

ただし注意点があります。NISAはあくまで個人の制度です。法人が保有する国債の利子は、通常どおり益金として法人税の課税対象になります。「法人でも非課税で運用できる」という話ではありませんので、そこは切り分けて理解してください。

なぜ国は、国債を持ってもらいたいのか

背景には、日本銀行が国債の買い入れ額を段階的に減らしているという事情があります。買い手が減れば金利が不安定になりやすいため、個人や法人への販売を増やして市場を安定させたいという狙いです。

数字で見ると、約2,300兆円に上る個人の金融資産のうち、国債の保有額はわずか1〜2%程度にとどまっています。政府としては、この比率を引き上げたいわけです。

また、現在のNISA利用層は若い世代に偏る傾向があるとされ、リスク許容度の低い高齢層が「インフレ負けしない資産形成」を行うための選択肢としても期待されています。

【重要】まだ決まったわけではありません

2026年8月時点で、個人向け国債の相続税非課税やNISAへの組み入れは、決定した制度ではありません。法案は提出されていますが、成立には至っておらず、今後の税制改正議論を待つ段階です。

そして、批判的な意見も出ています。主な論点は次のとおりです。

  • NISAの制度目的との整合性:NISAは「貯蓄から投資へ」を促す制度であり、元本保証のある国債は預金に近いのではないか
  • 公平性:相続税の軽減は富裕層の節税策として使われ、他の相続財産との間で不公平が生じるのではないか
  • 投資対象の偏り:税優遇によって特定の商品に資金が集中することへの懸念

片山財務大臣自身も、相続税を緩和する場合には「金持ち優遇と言われないような範囲」で整理する必要があるとの認識を示しています。なお同大臣は6月の時点では、元本保証のある国債はNISAの対象として望ましくないという考えを示していました。議論はまだ流動的だとお考えください。

経営者として押さえておきたい3つの論点

1. 会社の余剰資金をどこに置くか

金利のある世界に戻ったことで、「普通預金に置きっぱなし」の機会損失が以前より大きくなっています。とはいえ、事業会社の余剰資金はいつでも引き出せることが最優先です。運転資金や近い将来の設備投資に充てる資金を、解約に制約のある商品に入れるべきではありません。

判断の順番は、①3〜6か月分の運転資金を手元に確保、②近い投資予定の資金を別枠で確保、③それでも残る長期の余剰資金があれば運用を検討、です。この順番を飛ばすと、資金繰りを自ら苦しくすることになります。

2. 個人の資産形成としてどう見るか

役員報酬として受け取った後の個人資産をどう配分するかは、また別の話です。NISA組み入れが実現すれば、株式一辺倒でも預金一辺倒でもない中間の選択肢が増えることになります。制度が固まってから検討すれば十分間に合います。

3. 相続対策として飛びつかない

相続税非課税の案は、実現すれば効果の大きい優遇です。しかしだからこそ、公平性の観点から強い批判が出ており、形を変えて縮小される可能性も十分にあります。「非課税になるらしいから買っておこう」という判断は、現時点では時期尚早です。

当事務所がお手伝いできること

  • 会社の適正な手元資金水準の算定(何か月分を持つべきか)
  • 余剰資金と運転資金の切り分け、資金繰り表の整備
  • 役員報酬と個人資産形成のバランス設計
  • 制度改正の動向を踏まえた、相続・事業承継の情報提供

よくあるご質問

Q. いつからNISAで国債が買えますか?

A. 決まっていません。年末の税制改正議論の結果次第です。

Q. 会社で国債を買うと節税になりますか?

A. なりません。法人が受け取る利子は益金として課税されます。運用先の選択肢が増えるという話であって、税制上の優遇ではありません。

Q. 個人向け国債の解約はできますか?

A. 発行後一定期間が経過すれば中途換金が可能ですが、直近の利子相当額が差し引かれます。解約規制の緩和も検討課題に挙がっています。

まとめ|動向は追いつつ、足元は手元資金の設計を

個人向け国債をめぐる議論は、預貯金と株式に偏りがちな資産構成に「安定」の選択肢を加える可能性を秘めています。一方で、相続税非課税のような踏み込んだ優遇がどこまで実現するかは、まだ見通せません。

制度の行方を待つあいだにできることは、自社と自分の資金を、目的別に整理しておくことです。どこまでが動かせない資金で、どこからが余剰なのか。ここが整理できていれば、制度が固まったときに迷わず動けます。

「手元にいくら残しておくべきか」というご相談から承ります。お気軽にお声がけください。

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※本記事は2026年8月時点で公表されている資料・報道をもとに、検討中の制度案を整理したものです。内容は今後変更される可能性があります。特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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