利益800万円までは節税不要!?
―“節税至上主義”が会社を壊す前に知っておきたい、財務と資金繰りの真実―
はじめに|「利益が出たらすぐ節税」…それ、本当に必要ですか?
「利益が出そうなので、そろそろ節税対策を…」
「保険に入る?車を買う?共済に加入?」
——こうした相談を受けることがとても多くあります。
しかし、私たちがよくお伝えしているのはこの一言。
利益800万円までは、基本的に節税対策は不要です。
その理由は、「税金が安いから」ではなく、
“お金を守る”ことこそが中小企業にとって最優先だからです。
なぜ「800万円」が分岐点なのか?法人税率の仕組み
中小企業(資本金1億円以下の普通法人)は、所得800万円以下までの部分に対して軽減税率が適用されます。
所得区分 | 税率(法人税) | 実効税率の目安 |
---|---|---|
800万円以下 | 約15%前後 | 約23〜25% |
800万円超え | 約23.2% | 約35%前後 |
つまり、800万円までの利益であれば、払う税金は2割前後に抑えられ、残るお金は8割近くということ。
【図解】利益800万円時点の税金と手残り額
仮に利益が800万円の場合:
- 税引前利益:800万円
- 税金(約23%):約184万円
- 手残り利益:約616万円
→ この616万円を節税で消し去るのはもったいないと思いませんか?
節税対策の“本当の代償”
節税とは「利益を減らすこと=お金を使うこと」。
よくある節税策とそのリスク:
節税策 | 支出額 | 節税効果 | キャッシュへの影響 |
---|---|---|---|
保険契約 | 100万円 | 23万円 | 残り77万円が流出(しかも回収不可) |
車両購入 | 300万円 | 69万円 | 現金300万円が消える |
経営セーフティ共済 | 240万円 | 55万円 | 解約まで使えず、流動性ゼロ |
→ 一時的に節税できても、資金繰りが悪化するだけというケースが非常に多いです。
利益=現金ではない。だからこそ“節税よりキャッシュ”
損益計算書上の利益と、実際の現金はイコールではありません。
- 売掛金の未回収があればお金はない
- 在庫が増えていればお金は使っている
- 借入返済や税金は、利益に出てこないけどお金は出ていく
→ 節税で支出してしまうと、資金繰りが一気に厳しくなるリスクがあります。
【重要】利益を残すことは、財務体質を強くする最善策
節税しなかった結果、800万円の利益が残れば:
- 借入の返済原資になる
- 銀行からの評価が上がる
- 設備投資・採用など次の一手が打てる
- 自己資本比率が上がり、倒れにくい会社になる
→ 節税してお金を減らすより、利益を残して会社を強くする方が圧倒的に有益です。
それでも節税したい…という方へのアドバイス
どうしても節税が必要な状況であれば、
「即時解約できるもの」や「本業に関係する支出」に限定することをおすすめします。
✅ 例)
- 今後必要な備品を前倒しで購入する
- 業務改善につながるIT導入補助金を活用する
- 必要な投資に節税効果を“つける”という考え方
【事例紹介】節税を我慢して“現金を残した”経営者の成功例
大阪の小売業B社。
以前は決算期に毎年“駆け込み節税”を繰り返していたが、思い切って方針を転換。
→ 節税をやめて現金を残す経営に切り替えたことで、2年後には銀行からの評価が上がり、店舗拡張の融資をスムーズに獲得。
→ 会社の利益とキャッシュが同時に増え、成長投資が加速した。
まとめ|節税より大切なこと、それは“生き残ること”
- 利益800万円までの法人税率は軽減されており、わざわざ節税しなくても十分手残りがある
- 節税はお金が出ていく行為。使えばキャッシュが減る
- 残した利益は、将来の備え・銀行評価・自己資本強化につながる
- 節税は「必要なときに、必要な額だけ」が鉄則
ご相談ください|節税ではなく“経営強化”のための利益活用をサポートします
- 利益と資金繰りの見える化支援
- 節税と財務バランスのシミュレーション
- 銀行評価を意識した決算対策のご提案
- 未来投資に結びつく利益活用アドバイス
「節税ありき」から脱却し、会社を強くする利益の使い方を。
一緒にキャッシュフロー経営を実現していきましょう。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。