【2026年4月〜】「130万円の壁」新ルールを解説|経営者が今すべき労働条件通知書の整備

こんにちは!税理士の長岡です。今回は、「社会保険の新ルールについて!」の内容になります。
「12月が近づくと、パートさんがシフトに入ってくれない」——毎年この時期に頭を悩ませている経営者の方は多いと思います。いわゆる「130万円の壁」による働き控えです。
この判定ルールが、2026年4月から大きく変わりました。ポイントは、扶養認定の判定基準が「実績」から「労働契約」へと変わったこと。うまく対応すれば、繁忙期のシフトを頼みやすくなり、人手不足対策として効いてきます。ただし恩恵を受けるには会社側の準備が必要です。この記事では、経営者・人事担当者が押さえるべきポイントを整理しました。
何が変わったのか|判定が「実績」から「契約」へ
これまでは、過去の収入実績や直近の給与から将来の年収を推測して判定されていました。そのため、繁忙期に残業が増えると「年収130万円を超える見込み」と判断され、扶養から外れてしまうケースがありました。
新ルールでは、判定の根拠が労働契約書(労働条件通知書)の記載内容になります。契約上の年収が130万円未満であれば、臨時的な残業代によって実際の収入が130万円を超えても、社会通念上妥当な範囲内であれば扶養内に留まれます。
| 項目 | 〜2026年3月(従来) | 2026年4月〜(新ルール) |
|---|---|---|
| 判定基準 | 過去の収入実績・直近の給与から将来を推測 | 労働条件通知書・雇用契約書の記載内容 |
| 臨時の残業代 | 実績として収入に含まれる場合あり | 契約に規定がなければ原則含めない |
| 予見可能性 | 不安定。担当者により判断が異なることも | 契約書で明確に確認できる |
なお、この変更は法改正ではなく厚生労働省の通達が根拠です。厚生労働省は改正の目的を「被扶養者認定の予見可能性を高めるため」としています。
経営者にとっての意味|繁忙期のシフトが頼みやすくなる
働く側の視点で語られることが多い改正ですが、人手不足に悩む会社にとってこそメリットが大きい変更です。
これまでは、年末の繁忙期に「あと少しだけ入ってほしい」とお願いしても、扶養を外れるリスクを理由に断られていました。新ルールでは、契約上の年収が130万円未満に設定されていれば、一時的な繁忙期対応で即座に扶養から外れる心配はなくなります。断る理由がひとつ消えるわけです。
【最重要】恩恵を受けるには「労働条件通知書の整備」が前提
新ルールの適用を受けるには、労働契約書の整備と、本人が「給与収入のみ」であることが主な要件です。契約書が適切に作成されていない場合は、従来どおり給与の総額で判定され、改正の恩恵を受けられない可能性があります。
ここが会社側の宿題です。口頭でシフトを決めている、契約書が入社時のまま更新されていない、時給が上がったのに通知書を出し直していない——こうした状態では、そもそも新ルールの土俵に乗れません。
昇給や勤務時間の変更があった際には、速やかに新しい労働条件通知書を作成・交付し、保険者(協会けんぽや健康保険組合)からの確認に対応できる体制を整えておく必要があります。
見落としやすい3つの注意点
1. 固定残業代(みなし残業代)は従来どおり算入される
契約にあらかじめ含まれる固定残業代は、契約上の年収に含まれます。「残業代は判定に入らない」と単純化して理解していると危険です。臨時の残業代は除かれるが、契約に組み込まれた残業代は入る——この区別が肝心です。
2. 通勤手当(交通費)は130万円の判定に含まれる
ここは変わりません。所得税では非課税となる通勤手当も、社会保険の扶養判定では収入に含まれます。遠方から通っているパート従業員の場合、交通費だけで年間10万円を超えることも珍しくありません。契約年収を設定する際は、交通費込みで考えてください。
3. 「給与収入のみ」であることが要件
本人に不動産収入や配当収入、副業の事業所得などがある場合は、この新ルールの対象外となります。近年は副業をしているパート従業員も増えていますので、確認が必要です。
今すぐ確認したい社内チェックリスト
- パート・アルバイト全員分の労働条件通知書が、最新の条件で交付されているか
- 時給改定や勤務日数の変更後、通知書を出し直しているか
- 契約上の年収が、通勤手当を含めて130万円未満になっているか
- 固定残業代を設定している場合、それを含めた年収を把握しているか
- 従業員本人に給与以外の収入がないか確認できているか
特に1つ目と2つ目は、実際に見せていただくと不備が見つかることが多い項目です。労務のことなので社会保険労務士の領域ではありますが、「壁」の話は必ず給与と税の話とセットで相談されるため、当事務所でも一緒に整理しています。
2026年10月には「106万円の壁」も動きます
あわせて押さえておきたいのが、社会保険の適用拡大です。2026年10月に、加入要件のうち賃金要件(年収106万円・月8万8,000円)が撤廃される予定です。企業規模要件(従業員51人以上)も段階的に廃止されていきます。
つまり、130万円の壁が緩んだ一方で、週20時間以上働く人は社会保険に加入する方向へと制度全体が動いています。「130万円まで安心して働ける」と単純に説明してしまうと、後から食い違いが起きかねません。
なお、所得税や住民税の「壁」は社会保険とは別の制度で、こちらも改正が続いています。金額の基準が年分によって異なりますので、従業員に説明する際は、その年の最新の数字を確認してからにしてください。
従業員への伝え方|言い切らないことが大切です
この手の制度変更は、社内で伝言ゲームになると必ず誤解が生まれます。おすすめの伝え方は次のとおりです。
- 「判定の基準が契約書ベースに変わった」という事実だけを伝える
- 「繁忙期の残業で即座に扶養を外れることはなくなった」と補足する
- ただし最終的な判断は保険者(協会けんぽ・健康保険組合)が行うことを必ず添える
- 個別の判断は、会社ではなく保険者や配偶者の勤務先に確認してもらう
会社が「大丈夫です」と言い切ってしまうと、万一扶養から外れた際にトラブルになります。制度の説明と個別判断は切り分けるのが安全です。
当事務所がお手伝いできること
- パート従業員の年収設計と、人件費への影響シミュレーション
- 社会保険の適用拡大を踏まえた、中期的な人件費計画の作成
- 従業員説明用の資料づくり
- 提携する社会保険労務士と連携した労務書類の整備
よくあるご質問
Q. 契約年収を129万円にしておけば、いくら残業しても大丈夫ですか?
A. いいえ。あくまで「社会通念上妥当な範囲」に限られます。恒常的に大幅な超過が続けば、契約内容と実態が乖離しているとして見直しの対象になり得ます。
Q. 130万円の壁そのものはなくなったのですか?
A. なくなっていません。基準額130万円は維持されたままで、変わったのは判定の方法です。
Q. 手続きで会社がすることはありますか?
A. 保険者から労働条件の確認を求められる場合があります。契約書をすぐに提出できる状態にしておいてください。
まとめ|「契約書を整える」が今年の宿題
今回の改正は、労働条件通知書をきちんと整備している会社ほど得をする仕組みになっています。逆に、書類が後回しになっている会社は、制度が変わっても働き控えが解消されません。年末の繁忙期を前に、いま整えておく価値は十分にあります。
「人件費がどこまで増えるのか」「社会保険の適用拡大で自社はどうなるのか」——数字の面からのシミュレーションは、当事務所の得意分野です。お気軽にご相談ください。
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長岡会計事務所(兵庫県芦屋市)/認定経営革新等支援機関
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※本記事は2026年8月時点の公開情報をもとに作成しています。扶養認定の最終的な判断は保険者が行います。個別の取扱いについては、加入先の健康保険組合・協会けんぽ、または配偶者の勤務先にご確認ください。
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