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年末調整とは?経営者が知るべき仕組み・必要書類・対象者・実施時期を徹底解説!

年末調整とは?
経営者が知っておくべき「仕組み・必要書類・対象者・実施のタイミング」


はじめに:年末調整は“社員の税金”を正しく整える重要な経営業務

毎年11月〜12月になると、会社や事業所で慌ただしく行われる「年末調整」。
経理担当者だけでなく、経営者自身も「なぜこの手続きが必要なのか」「何を提出させるのか」を理解しておくことが、企業の信頼を守る第一歩です。

年末調整は、従業員の1年間の所得税を確定させる大切な作業。
経営者の理解が不足していると、従業員からの信頼を失うだけでなく、税務署からの指摘にもつながります。

この記事では、

  • 年末調整の目的と仕組み
  • 添付が必要な書類一覧
  • 対象者と対象外者
  • 実施のタイミングと注意点
    を、経営者目線でわかりやすく解説します。

第1章 年末調整とは何か?

● 年末調整の基本的な仕組み

会社(給与支払者)は、毎月の給与から「所得税(源泉所得税)」を天引きしています。
しかし、実際の税額は年間の所得額と控除額によって確定します。

したがって、毎月の天引き額(概算)と、1年間の正確な税額にはズレが生じます。

そのズレを年末に調整し、正しい所得税額に確定させる手続き。
これが「年末調整」です。

✅ 一言でいえば、
「1年間で払いすぎた税金を還付し、足りない分を徴収する手続き」


● なぜ会社が行うのか?

個人が自分で税額を確定させるには「確定申告」が必要です。
しかし、会社員が全員確定申告を行うのは現実的ではありません。

そのため、会社が従業員に代わって税金を清算します。
これが「年末調整」が会社の義務とされている理由です。


第2章 年末調整の対象者と対象外者

● 年末調整の対象になる人

基本的には、その年の最後(12月)に在籍している社員・役員が対象です。
具体的には次のような人です。

  • 1年以上勤務している正社員
  • 年の途中入社で、12月に在籍している社員
  • パート・アルバイトでも、給与支払報告書が発行される者
  • 役員報酬を受け取っている取締役など

✅ ポイント
「12月に給与の支払いがある人」が対象。
1月〜11月で退職した人は原則対象外です。


● 年末調整の対象外になる人

次のような人は、年末調整の対象になりません。

区分対象外となる理由
年内に退職した人12月末時点で在籍していないため
給与が2か所以上ある人自分で確定申告が必要(主たる給与を選択)
年収2,000万円を超える人高所得者は自動的に確定申告義務がある
非居住者(海外赴任など)国内源泉所得が限定されるため年末調整対象外
日雇い・短期雇用源泉税は日払い処理で完結するため

経営者自身(役員)も、報酬がある限りは年末調整の対象です。
ただし、副業や他所得がある場合は別途確定申告が必要になる場合があります。


第3章 年末調整で必要となる書類一覧

● 従業員から提出してもらう書類

年末調整の時期になると、従業員から次の書類を回収する必要があります。

書類名内容提出者
給与所得者の扶養控除等申告書扶養家族の有無を申告する全員
保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書生命保険・地震保険・配偶者控除などを申告全員
住宅借入金等特別控除申告書住宅ローン控除を受ける人該当者のみ
生命保険料控除証明書保険会社から郵送される証明書該当者のみ
地震保険料控除証明書保険会社から郵送される証明書該当者のみ
国民年金保険料控除証明書日本年金機構から送付該当者のみ
小規模企業共済等掛金払込証明書国民年金基金・iDeCoなどの証明書該当者のみ
住宅借入金の年末残高証明書金融機関から郵送される書類該当者のみ

✅ 経営者チェックポイント
各証明書は「原本」を添付しなければ控除が適用されません。
コピーでは税務署から否認されるリスクがあります。


● 会社側が作成・保管すべき書類

書類名提出先
給与所得の源泉徴収票税務署・従業員本人
給与支払報告書市区町村役場
源泉徴収簿会社保管用
法定調書合計表税務署提出用
源泉所得税の納付書税務署へ納付

経営者としては、「提出先と提出期限」を誤らないことが重要です。


第4章 年末調整のスケジュールと流れ

● 実施時期

年末調整は毎年11月〜12月に行います。
多くの企業では、12月支給分の給与計算と合わせて実施します。


● 年末調整の一般的な流れ

  1. 10月下旬〜11月上旬
     従業員へ申告書類を配布
  2. 11月中旬〜11月末
     従業員から控除証明書などを回収
  3. 12月上旬
     源泉徴収簿を作成し、年末調整額を計算
  4. 12月中旬〜12月末
     給与支給時に年末調整を反映
  5. 翌年1月31日までに
     源泉徴収票・法定調書を提出

● 実務担当者がよくやりがちなミス

  • 控除証明書の添付漏れ
  • 扶養人数の誤り
  • ローン控除の年数間違い
  • 源泉徴収簿の転記ミス

これらは税務署からの問い合わせ・修正申告につながるため、
経営者としてもチェックリストでの確認が大切です。


第5章 年末調整ができない人・確定申告が必要な人

● 年末調整の対象外だった人の確定申告

以下に該当する人は、年末調整ではなく「確定申告」を行う必要があります。

  • 年の途中で退職し、再就職していない
  • 給与を2か所から受け取っている
  • 年収2,000万円超
  • 不動産所得や副業収入がある
  • 医療費控除・寄附金控除を受けたい

会社側は「源泉徴収票」を早めに交付し、
本人が確定申告できるようサポートする姿勢が求められます。


第6章 経営者が年末調整を軽視してはいけない理由

● 信頼関係を守るための「給与税務」

年末調整は、単なる税金計算ではなく、社員との信頼をつくる重要な経営業務です。
もし控除漏れや誤計算があれば、
社員から「うちの会社は管理が甘い」と評価されてしまいます。

経営者が「給与の税務にも関心を持っている」姿勢を見せることで、
社員の安心感が生まれ、離職率の低下にもつながります。


● 税務調査でも注目されるポイント

税務署の調査でも、
「年末調整関係書類の整備状況」は最初に確認される項目です。

  • 控除証明書の添付有無
  • 源泉徴収票の金額一致
  • 提出期限の遵守

これらが整っていないと、会社としての信頼性を損なうだけでなく、
延滞税や加算税が課されることもあります。


第7章 電子化が進む年末調整の実務

近年は、国税庁が推進する「年末調整電子化」により、
多くの企業がクラウド給与システムを導入しています。

● 電子化のメリット

  • 書類の回収・保管が不要
  • ミスが減少
  • 計算が自動化
  • 提出期限管理が容易

特にfreee人事労務マネーフォワードクラウド給与などを使えば、
従業員がスマホから申告書を提出できるため、効率が大幅に上がります。


第8章 経営者が知っておくべき「年末調整後の対応」

● 翌年1月の法定調書提出

年末調整が終わったら、
翌年1月31日までに次の手続きが必要です。

  • 給与支払報告書(市町村)
  • 源泉徴収票(税務署)
  • 法定調書合計表(税務署)

また、**源泉所得税の納付(1月10日)**も忘れてはいけません。
納期の特例を利用している場合は、7月と1月の年2回納付です。


最後に:年末調整は「数字の整合」ではなく「信頼の整備」

年末調整は、税務の中でも最も「人」に関わる手続きです。
単なる事務処理ではなく、会社の誠実さを示す行為でもあります。

経営者としては、

  • 年末調整の流れと意味を理解する
  • 社員からの書類回収を丁寧に行う
  • 税務署提出期限を守る
    この3つを意識するだけで、税務リスクは大幅に軽減されます。

そして何より、年末調整を通じて「社員と会社の信頼関係」を強くすることが、
良い会社経営の第一歩です。

✏️ この記事を書いた目的
私は財務・税務の専門家として、
「税金を減らすための処理」ではなく、
「経営を良くするための税務戦略」を提案しています。

年末調整もその一つ。
制度を理解し、信頼を守る経営を一緒に実現しましょう。

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