自家用車を事業用で使用する際の経費計上ルールと法人化のすすめ
はじめに
個人事業主にとって「自動車」は仕事に欠かせない存在です。営業や仕入れ、現場への移動など、自家用車を事業に使用している方も多いでしょう。
「この車の費用をどのくらい経費にできるのか?」
「ガソリン代や駐車場代は全額計上していいのか?」
「複数台持っている場合は何台まで?」
こうした疑問はよく聞かれます。さらに、法人化すると自動車経費の扱い方に大きな違いが出るため、経費計上の柔軟性や節税効果は法人の方が有利になるケースも少なくありません。
本記事では、個人事業主が自家用車を事業用で使う際の経費計上方法と注意点、そして法人化することのメリットについて徹底解説します。
1. 自家用車を事業用で使うときの経費計上の考え方
1-1. 基本ルール
個人事業主が自家用車を事業用に使う場合、事業で使った割合に応じて経費に計上できます。これを「家事按分(かじあんぶん)」と呼びます。
プライベート利用も含まれているため、100%経費にはできません。
1-2. 事業割合の計算根拠
事業割合は、次のような合理的な根拠に基づいて算出することが求められます。
方法① 走行距離で按分
- 年間総走行距離:10,000km
- そのうち事業利用:6,000km
- 事業割合:60%
最も一般的で、税務署も納得しやすい根拠です。
方法② 使用日数で按分
- 1年間365日のうち、事業利用日:200日
- 事業割合:200 ÷ 365 ≒ 55%
「走行距離が把握できない場合」に利用されます。
方法③ 時間ベースで按分
- 1日のうち、事業利用4時間、私用2時間
- 事業割合:4 ÷ 6 ≒ 67%
フリーランスや訪問型業務などで用いられることがあります。
👉 大切なのは「合理性」と「根拠を残すこと」。走行距離メーター記録、業務日誌、ガソリン給油明細など、証拠を残しておけば税務署からの指摘にも対応できます。
2. ガソリン代や駐車場代の扱い
2-1. ガソリン代
- 事業割合を乗じて計上します。
例:ガソリン代年間20万円、事業割合60% → 経費12万円。
2-2. 駐車場代
- 事業用駐車場(事務所や現場近くなど):全額経費。
- 自宅マンション駐車場:事業利用分を按分して経費計上。
2-3. 車検・修理費・保険料
- ガソリン代同様、事業割合に応じて計上します。
👉 原則はすべて事業割合で処理。ただし、明らかに事業専用車であれば全額経費にできます。
3. 自動車経費を計上するメリット・デメリット
3-1. メリット
- 所得税・住民税の節税につながる。
- 社会保険料の負担も軽減できる。
- 実態に即した処理をすることで、経営実態を数字で把握できる。
3-2. デメリット
- 家事按分の根拠を残す必要があり、手間がかかる。
- プライベート利用分は経費にできないため、節税効果は限定的。
- 100%経費計上してしまうと、税務調査で否認され追徴課税のリスクあり。
4. 何台まで経費にできるのか?
個人事業主の場合
- 基本は「事業に必要な台数まで」。
- 業務上、1台で十分な場合は2台目以降は否認される可能性大。
- 複数台が必要な業種(配送業、工務店など)は、実態を示せば複数台計上可能。
法人の場合
- 法人名義で購入すれば、事業に必要な台数であれば制限なし。
- 社長や従業員が業務に使う車は全額経費計上できる。
- 社用車としてガソリン代・車検代・保険料も全額損金処理可能。
5. 個人事業主と法人の違い
個人事業主
- プライベート利用がある限り、按分処理が必須。
- 家族利用も多いため、事業割合は50~70%程度が現実的。
- 車両購入費は減価償却で計上、ただし事業割合を掛ける必要あり。
法人
- 法人が所有する社用車は 原則100%事業用 と扱える。
- ガソリン代・保険料・駐車場代も全額損金。
- 社長がプライベートで使う場合は「役員への貸与」として一部給与課税されるが、全体的には個人事業主より有利。
- 高級車も「業務上必要性」があれば損金算入が可能。
👉 自動車関連の経費は、個人事業主より法人の方が圧倒的に自由度が高く、節税効果も大きいのです。
6. 法人化を検討すべきタイミング
- 売上が安定し、利益が500万円以上出るようになったとき。
- 自動車を複数台利用して事業を拡大しているとき。
- 高級車や大型車を業務上利用する必要があるとき。
- 節税だけでなく、社会保険・信用力の強化も考えたいとき。
法人化すれば「車両経費をほぼ全額損金にできる」だけでなく、資金調達の信用力強化・取引先からの信頼向上にもつながります。
まとめ
- 自家用車を事業に使う場合は「事業割合」で経費計上する。
- 根拠は「走行距離」「使用日数」「時間」で算出し、記録を残す。
- ガソリン代や駐車場代も事業割合に応じて処理。
- 個人事業主は台数制限が厳しいが、法人は必要台数なら制限なし。
- 車関連の経費は法人の方が圧倒的に有利。
最後に
「自家用車をどこまで経費にできるか?」は、個人事業主にとって非常に関心の高いテーマです。
しかし、税務署は「生活費の混入」を警戒しており、合理的な根拠と証拠がなければ認めません。
法人化すれば、車両経費の自由度が高まり、節税効果も大きくなります。さらに資金調達や信用力強化という面でも有利です。
私は、個人事業主から法人化を検討している方に向けて、「車両経費を含めたキャッシュフロー経営」をサポートしています。
「今のまま個人で続けるべきか、それとも法人化した方が得か?」を一緒にシミュレーションし、最適な選択肢を提案しています。
👉 もし車の経費で迷っている方は、法人化という選択肢を考えてみませんか?
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