出資者2人の出資比率はどう決める?50対50が危険な理由を徹底解説
株式会社で出資者が2人いるとき、出資割合はどうすべき?
50%:50%は本当に問題ない?
〜創業時に絶対に知っておくべき「議決権と経営権」の落とし穴〜
はじめに:出資者2人の出資比率は“会社の未来”を左右する
会社を設立する際、
- 出資者が2人
- 出資額をどうするか
- 株の割合はどうするか
- 50:50で良いのか?
- トラブルの元にならないか?
このような悩みは非常に多い。
結論から言います。
■ 結論
✔「50%:50%」はもっとも危険な出資割合である
✔ 創業時は必ず“どちらかがⅢ分の1超 or 50%超”の議決権を持つべき
✔ 50:50はトラブルが起きたとき会社が停止する危険がある
✔ 経営権と議決権をどう設計するかが最重要
表面上は公平に見える50:50ですが、
実務的には “会社が動かなくなるリスク最大” の非常に危険な構造です。
この記事では、
- なぜ50%:50%が危険なのか
- どんなトラブルが現実に起こるのか
- 最適な出資比率の考え方
- 2人で設立するならどうすれば良いか
- 実際に起きたトラブル事例
これらを徹底解説します。
第1章 株式会社は「議決権=経営権」。だから割合が重要になる
株式会社は原則として、
【議決権を多く持つ人が会社を動かす】
という仕組みです。
したがって、
出資比率とは単なる“お金の割合”ではなく、
✔ 経営権(意思決定権)
✔ 役員の選解任権
✔ 株主総会の決議力
✔ 会社の方向性
これらを決める最重要の設計になります。
第2章 「50%:50%」が危険な理由
→ 意見が割れた瞬間に会社が停止する
株式会社では、重要な決定は株主総会で決めます。
会社法上、主な決議は以下の通り。
● 普通決議(会社の一般的な意思決定)
可決ライン:議決権の過半数
例:役員の選任、一部の契約、事業方針など
● 特別決議(会社の根幹に関わる決定)
可決ライン:議決権の3分の2以上
例:定款変更、事業譲渡、増資、減資、解散 など
50:50の会社が意見対立すると…
✔ 普通決議 → 過半数がないため決まらない
✔ 特別決議 → 3分の2が必要なので当然決まらない
✔ つまり、会社が動かなくなる
つまり、
2人の関係が悪化した瞬間に会社は機能停止します。
これが50:50最大の欠点です。
第3章 【事例①】50:50で設立した飲食店、方向性の対立で半年後に破綻
■ 状況
- Aさん(料理人)50%
- Bさん(投資家)50%
- オーナーシェフ型の飲食店を共同創業
■ 対立ポイント
- A:原材料を良くして品質を上げたい
- B:原価率を下げて売上を伸ばしたい
両者の意見が対立し、株主総会でも決議できず膠着状態へ。
■ 結果
- 資金繰りの対応ができず店舗閉鎖
- 株の買い取りもまとまらず最終的には裁判へ
✔ 学び
50:50の会社は、
“意見が割れた瞬間に経営が停止する”という典型例。
第4章 【事例②】50%:50%の建設会社、社長解任ができず業務停止
■ 状況
- A:社長、営業担当
- B:現場監督、技術担当
どちらも50%保有。
■ トラブル
社長Aが経理を放置し資金繰りが悪化。
Bは社長を解任したかったが、普通決議で過半数が必要。
→ 50:50なので解任できない。
■ 結果
- 金融機関が融資を止める
- 取引先からも信用低下
- 赤字続きで事実上倒産
✔ 学び
50:50では重大トラブル時に“悪い方を止める仕組みが機能しない”。
第5章 【事例③】IT企業、将来の方向性で対立 → 株買い取り交渉が泥沼化
50:50は、
揉めた後の株の買取が最も難航する構造です。
- どちらが買い取るのか
- 金額はいくらか
- 評価方法はどうするのか
- 第3者へ売却できるのか
これらが一切決まらないため、揉めやすい。
第6章 では、どんな出資割合にすべきか?
これが実務的な答えです。
■ おすすめの出資比率
✔ ① 必ずどちらかが「過半数」を持つ(50%超)
→ 経営が止まらない
→ 最終決定権を明確にする
✔ ② 3分の2を持たせるパターン(67%以上)
→ 定款変更や大きな決議もスムーズ
→ 会社の方向性を一貫させやすい
✔ ③ 出資者2人の場合の最適解
- A:51%
- B:49%
この差で大きな意思決定の膠着を避けられます。
第7章 「出資割合が低い方が不利?」という誤解
出資割合が低くても、
実は不利ではありません。
理由は以下の通り。
✔ ① 株数=報酬ではない
役員報酬は株割合に関係なく設定できる。
✔ ② 大事なのは“権限分配”
契約締結権・経理権限・出金権限など、
実務の権限は別で設定できる。
✔ ③ 株式を渡さなくても協力関係は作れる
株式保有よりも、事業契約や利益分配契約の方が柔軟。
✔ ④ 出資者全員が多く株を持ちすぎると“スピードが落ちる”
企業の初期は、意思決定スピードが生命線。
つまり、
全員が多く株を持つ=うまくいく
ではないのです。
第8章 出資比率を決めるときの3つの基準
① 誰が最終責任を負うか?
最終的に経営責任を背負う人が過半数を持つべき。
② 事業のビジョンを誰が描いているか?
ビジョンを持つ人に決定権を集中させた方が会社は成長しやすい。
③ 資金を出す人か、汗をかく人か?
これは多くの創業者が悩むポイント。
“資金”と“労力”の価値のバランスで決めれば良い。
例:
- Aが500万円出資、Bが技術提供のみ
→ A:80%、B:20% などもあり
第9章 共同創業で「絶対にやってはいけない」3つの行為
■ ① 50:50の出資で創業する
→ 最も危険
■ ② 株主間契約を作らない
→ 退職・売却・対立の際にトラブル化
■ ③ 役割分担を曖昧にする
→ 喧嘩のもと
第10章 出資比率より大切な「株主間契約」
出資割合が決まったら、
必ず 株主間契約(SHA) を作るべき。
内容例:
- 退任するときの株式の扱い
- 買取価格の決め方
- 競業避止
- 出資追加が必要なときのルール
- 意見対立したときの調整ルール
- 第3者への株式譲渡制限
まとめ:50%:50%は“公平”ではなく“危険”
■ 本質まとめ
✔ 50:50は危険 → 会社が動かなくなる
✔ 最低でも51:49にする
✔ 経営の最終責任者は過半数を持つべき
✔ 株主間契約を必ず作る
✔ 出資金より「権限分配」の設計が重要
共同創業ほど“美しい関係”で始まり、
“最悪の関係”で終わりやすいものはありません。
だからこそ、
最初の出資比率が 会社の未来を守る盾 になります。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。