合同会社と株式会社の責任の違い|会社設立前に知るべきリスクと実例を解説
合同会社と株式会社では責任追及がどこまで違うのか?
会社設立前に必ず知っておきたい「経営者の責任」と実務で起きるトラブル
【はじめに】合同会社と株式会社の“責任”は同じではない
会社設立を検討している方が最初に知るべきこと。
合同会社も株式会社も「有限責任」の法人ですが、
実務での責任追及は 同じではありません。
多くの人はこの違いを知らずに会社を立ち上げてしまい、
融資・取引・契約トラブルで後悔します。
この記事では、
- 合同会社の責任
- 株式会社の責任
- 代表者の責任はどこまで及ぶのか
- 実際に起きたトラブル事例
- 会社設立前に押さえるべき判断基準
を経営者向けに分かりやすく解説します。
第1章 合同会社と株式会社の仕組みの違いが“責任範囲”に影響する
まず前提として知っておきたいのが以下の点です。
■ 1.どちらも「有限責任」である
合同会社も株式会社も出資者は、
出資額以上の責任を負いません。
つまり、1万円しか出資していなければ、
最悪倒産しても1万円以上は失うことはない。
会社法上この点は同じです。
■ 2.しかし“責任追及される相手”が違う
両者の最も重要な違いは、
✔ 株式会社:役員(取締役)に対し「経営責任」が強く問われる
✔ 合同会社:出資者=経営者(社員)に一体的に責任が向かう
この構造の差が、責任の方向性を大きく変えます。
■ 3.社会的信用・取引条件が違うため責任範囲に影響する
- 株式会社 → 信用が高い → 大きな契約を結びやすい
- 合同会社 → 小規模扱いされやすい → 取引単価が小さい
契約の大きさ = 責任の大きさ
と直結します。
つまり、会社の性質そのものが
“責任の重さ”に影響するのです。
第2章 合同会社の責任追及はどうなるのか?
合同会社はシンプルな構造の法人ですが、
責任の負い方は株式会社とは違う特徴があります。
【合同会社の特徴①】出資者 = 経営者
合同会社では、
出資者(社員)がそのまま経営者になります。
そのため…
✔ 業務上のトラブル → 出資者個人に責任が向きやすい
✔ 取引先が「誰が責任をとるのか」を個人レベルで確認してくる
特に小規模取引では顕著です。
【合同会社の特徴②】代表社員は「業務執行に対する責任」が重い
合同会社のトップは「代表社員」。
株式会社の代表取締役と似ていますが、
代表社員の責任の方が“個人責任が前面に出やすい”のが実務上の特徴。
例:
・契約違反
・債務不履行
・瑕疵対応
などの場面で、
「代表社員個人」に責任を問う姿勢が強く出ます。
【合同会社の特徴③】管理体制がシンプルな分、責任の所在も個別に向きやすい
合同会社には、
- 取締役会
- 監査役
- 会計監査人
といった監視機構がありません。
そのため、
✔ トラブル時の責任は“代表社員個人”に直撃しやすい
【合同会社の責任事例】
■ 事例①:システム開発の納期遅延 → 代表社員個人が直接責められる
合同会社Aは3名の出資者で運営。
システム開発の納期遅延によりクライアントが激怒。
クライアントの主張
「合同会社は責任の所在がわかりにくい。誰が責任者?」
結果
→ 代表社員(1名)が矢面に立ち、個人の交渉となる
→ 最終的には個人保証の形で損害賠償に応じる
※株式会社なら取締役会で対応し、個人責任が前に出てこないケースが多い。
■ 事例②:建設業で瑕疵が発覚 → 個人名で訴えられた
合同会社B(代表社員1名)が請け負った工事で欠陥が発生。
施主は以下の主張。
「法人というより“あなたが施工責任者だろう”」
→ 合同会社の代表者は責められやすい傾向がある。
→ 株式会社の「法人格」が守ってくれる壁が薄い。
第3章 株式会社の責任追及はどうなるのか?
株式会社は合同会社と違い、「法人としての責任」が強く働きます。
【株式会社の特徴①】役員(取締役)は“経営責任”を負う
会社法で厳格に定められており、次のような責任が問われます。
- 善管注意義務
- 忠実義務違反
- 監視義務違反
これらに違反すると取締役が責任追及されます。
【株式会社の特徴②】取締役会という“責任分散”の仕組み
株式会社はガバナンスが整備されているため、
✔ トラブル時に個人が全責任を負わされにくい
✔ 法人としての責任 → 役員全体の責任 → 個人責任の順で問われる
合同会社よりも“守られる度合い”が強い。
【株式会社の特徴③】社会的信用が高く、個人責任の追及がしにくい
取引先は株式会社に対して、
「責任は法人が取るもの」
という認識が強い。
そのため、
- 個人を追わない
- 法人を相手に交渉する
- 株主・取締役会の責任範囲も理解されている
という形になりやすい。
【株式会社の責任事例】
■ 事例①:取締役に直接賠償請求が来ない(法人が防波堤)
株式会社Cは建設工事で瑕疵。
施主は怒り心頭だったが…
弁護士「責任は会社(法人)にある。取締役個人ではない。」
→ 法人が負うべき責任として処理
→ 個人の生活を脅かすような追及には発展しなかった
合同会社なら個人名を出されるケースが多い。
■ 事例②:経理担当者の不祥事 → 取締役会が責任分担
合同会社だと代表社員1名が全責任を背負いがちだが、
株式会社は“経営チーム全体”で対応する仕組みがある。
第4章 合同会社と株式会社の「責任の違い」まとめ
以下の表が実務に即した最重要ポイントです。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 所有と経営 | 一体化 | 分離可能 |
| 個人責任の出やすさ | 高い | 低い |
| 法人が守ってくれる度合い | 弱い | 強い |
| トラブル時の対応 | 代表社員が前に出る | 法人や役員会が盾になる |
| 社会的信用 | 低〜中 | 中〜高 |
| 大型取引の契約難度 | 高い | 低い |
| 融資時の説明 | 必要 | スムーズ |
第5章 どちらの責任が“重い”のか?実務ではこうなる
法律上は同じ有限責任ですが、
現場での体感責任は明確に違います。
■ 結論:合同会社の方が“個人責任を負う場面が多い”
理由:
- 出資者=経営者になり責任が個人に直結
- 法人としての防御が弱い
- 社会的信用が低め → 個人名を出されやすい
- 契約単位が小さいので個人交渉になりがち
■ 株式会社の方が“責任を分散しやすい”
- 法人を前面に出して守る
- 取締役会・株主総会の仕組みがある
- 契約相手の期待値が明確
- 社会的信用が高く個人責任を問われにくい
第6章 責任を避けたいならどちらを選ぶべきか?
結論は明確。
✔ 個人責任を背負いたくない
→ 株式会社にすべき
✔ 小規模で個人で責任を負ってもよい
→ 合同会社でも問題なし
✔ 将来、大きな取引をしたい・金融機関と付き合いたい
→ 株式会社が圧倒的に有利
第7章 会社設立前に絶対に知っておくべきこと
責任の違いは“経営者の人生を左右する”ほど重要です。
最後に、経営者が押さえるべきポイントをまとめます。
● ポイント①
合同会社は個人責任が表に出やすい。
株式会社は法人責任が前に出る。
● ポイント②
取引先の印象は株式会社が圧倒的に強い。
● ポイント③
銀行融資は“責任”ではなく“信用力”で差が出る。
→ 株式会社の方が有利。
● ポイント④
トラブル時の守られ方が全く違う。
→ 株式会社の方が防御力が高い。
● ポイント⑤
合同会社は小規模向け。拡大するなら株式会社。
【まとめ】責任の違いは“経営者のリスク”の違い
会社の“責任”は法人形態の本質です。
✔ 合同会社:責任が個人に寄りやすい
✔ 株式会社:法人が前面に出るため守られやすい
どちらが正しいのではなく、
事業の将来像とリスク許容度によって選ぶべき法人形態は変わります。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。