株式会社の性質とは?合同会社との違いを経営者向けに分かりやすく解説
株式会社とはどんな性質の会社なのか?
合同会社と何が違うのか
〜経営者が知るべき会社形態の本質〜
はじめに:会社を作る前に“会社の性質”を理解することが経営の安全装置になる
会社を設立する時には、多くの人がこう悩みます。
- 「株式会社にすべき?合同会社で十分?」
- 「違いは何?」
- 「信用力に差はある?」
- 「融資は通りにくくなる?」
- 「将来どんな影響が出る?」
結論から言うと、
株式会社には“会社としての強い性質”があり、
合同会社とは構造や評価のされ方が大きく異なります。
この記事では、
- 株式会社の性質
- 合同会社との構造的な違い
- 経営・信用・融資への影響
- どんな会社がどちらに向いているか
- 実例を交えて理解すべきポイント
これらを経営者向けに分かりやすく解説します。
第1章 株式会社の性質とは何か?
一言で言えば「出資者と経営者が分かれる仕組み」
株式会社の最大の特徴は、
■ 株式会社 = 出資者(株主)と経営者(役員)が分離できる
ここが合同会社と決定的に異なるポイントです。
株式会社は次の性質を持ちます。
✔ 性質① 所有(株主)と経営(役員)が分離できる
株主は会社のオーナーです。
しかし、株主が経営に関わらなくてもよい。
例:
- 株主:投資家
- 経営者:社長(役員)
このように役割を分離できます。
会社が大きくなるほど、
“所有と経営の分離”が非常に重要になります。
✔ 性質② 経営者を自由に選べる(役員選任制度)
社長は株主総会で選ばれます。
→ 株主が社長を解任することも可能
→ 株主以外の優秀人材を社長にすることも可能
株式会社は“経営体制を自由に変えられる”柔軟さがあります。
✔ 性質③ 株式の譲渡によって会社の所有を移せる
株式会社の所有(株)が簡単に売買できます。
→ 事業承継がしやすい
→ 相続対応がしやすい
→ 投資家からの出資が受けやすい
→ M&Aがしやすい
会社の価値が株式という形で明確に表れます。
✔ 性質④ 資金調達に強い(銀行・投資家ともに評価される)
金融機関は株式会社を基本形として考えています。
- 株式
- 株主
- 決算公告
- 取締役制度
これらは金融機関が理解しやすい構造です。
→ 融資に強い
→ 大型取引に強い
→ 投資家からの資金注入が可能
合同会社より明確に“信用の土台が強い”と言えます。
✔ 性質⑤ 規模拡大に向いている(組織構造が伸ばしやすい)
株式会社は、
会社法上「大きくするための入れ物」として設計されています。
- 部門制度
- 役員制度
- 株主構造
- ガバナンス
- 持株比率の調整
これらがすべて“スケールしやすい構造”で統一されています。
第2章 では、合同会社はどんな性質なのか?
→ 一言で言えば「所有と経営が一致する組織」
合同会社には次の性質があります。
✔ 性質① 出資者=経営者(原則)
合同会社では、出資者を“社員(メンバー)”と呼びます。
これは“従業員”の意味ではありません。
合同会社では原則、
■ 会社を所有する人(出資者)がそのまま会社を経営する
この構造が「小規模ビジネス向け」と言われる理由です。
✔ 性質② 意思決定が速い(少人数で完結する)
合同会社は、
- 社長
- 会長
- 取締役
- 株主総会
- 決算公告
などの制度が簡略化されています。
そのため、
■ 意思決定が非常に速い(=小規模企業向け)
経営スピードを重視する個人事業の延長や、1〜2名の事業には向いています。
✔ 性質③ 設立コストが安い・維持費も少ない
株式会社に比べて圧倒的にコストが低い。
→ 創業しやすい
→ 少額資金でも立ち上げやすい
✔ 性質④ 投資家からの出資が難しい(株式がない構造)
合同会社は株式がありません。
“出資=社員としての地位”を与えることになり、柔軟性が低い。
→ VC・投資家からは敬遠される
→ M&Aに向かない
✔ 性質⑤ 社会的信用は“小規模向け”
制度として問題はないが、
取引先や銀行のイメージとしては、
■ 株式会社>合同会社
これは歴史的背景と実務の慣習によるもの。
第3章 株式会社と合同会社の「本質的な違い」
ここでは、経営に直結する違いを3つにまとめます。
■ 違い① 領域:
株式会社 → 大きくするための器
合同会社 → 小さく強く回す器
会社法の設計思想がまったく違う。
■ 違い② 誰が動かすか:
株式会社 → 経営者を選べる(分離)
合同会社 → 出資者が経営する(統合)
これが最大の違い。
■ 違い③ 信用力:
株式会社 → 外部信用に強い
合同会社 → 内部の完結性に強い
特に融資・取引先からの信用は大きく異なります。
第4章 株式会社が有利になるケース
✔ 大手企業と取引したい
✔ 取引基本契約に「株式会社前提」が多い
✔ 建設業・製造業・物流・医療など信用が重要
✔ 投資家から資金を入れたい
✔ 大型融資を受けたい
✔ 将来M&Aを検討したい
✔ 経営者を役員として選任したい
こういった場合は圧倒的に株式会社が向いています。
第5章 合同会社が向いているケース
✔ 1〜2人で事業を回す
✔ 個人事業を法人化する
✔ IT・デザイン・コンサルなどの軽資本業種
✔ 起業コストを抑えたい
✔ 外部の株主を入れない
✔ 社長=自分1人で完結させたい
この場合、合同会社は最適です。
第6章 【事例】株式会社か合同会社かで結果が変わった例
● 事例①:建設業 → 株式会社にしたことで大手と契約できた
合同会社で創業した建設業者。
大手から「株式会社でないと契約できない」と言われ変更。
結果、月商が一気に倍に。
● 事例②:IT企業 → 合同会社のまま利益率が高い構造に
合同会社の柔軟性と低コストを活かし、
オーナー1人で高速意思決定。
利益率も50%以上で推移。
● 事例③:資金調達したい創業者 → 株式会社へ変更しVCが出資
株式がない合同会社では出資不可。
株式会社へ変更して3,000万円の出資を実現。
第7章 結局どちらが良いのか?
→ 会社の「未来像」で決めるべき
選び方はシンプルです。
■ 将来、会社を“大きくしたい”
→ 株式会社一択
■ 小規模で高速に回したい
→ 合同会社が最適
■ 迷っている
→ 将来の拡大を考えるなら最初から株式会社
まとめ:株式会社は“信用・拡大・資金調達”に圧倒的に強い
■ 株式会社の本質
✔ 所有と経営が分離できる
✔ 組織を拡大しやすい
✔ 社会的信用が高い
✔ 投資を受けやすい
✔ 大手企業と取引しやすい
✔ 融資に強い
■ 合同会社の本質
✔ 小規模に強い
✔ 意思決定が速い
✔ コストが低い
✔ 1〜2名事業に向いている
最も重要なのは、
「今の事業ではなく、将来どんな会社にしたいか」です。
未来の会社像を基準にしたとき、
株式会社にすべきか、合同会社で十分かが決まります。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。