税金

開業費ってどんな経費?どこまで遡れる?

〜起業準備中の経営者が知っておくべき開業費のポイントと注意点〜


はじめに

「開業に向けて準備しているけれど、この支出は経費になるのだろうか?」
「開業前に使ったお金も計上できると聞いたけれど、本当?」

これから事業を始めようとする経営者にとって、開業費の正しい理解は節税にも資金繰りにも直結します。
意外と見落とされがちなのが「どの支出が開業費になるのか」「どのぐらい前まで遡れるのか」、そして「証拠書類の残し方」です。

本記事では、開業費の基本から、具体的な対象経費、注意点まで徹底解説します。


開業費とは何か?

定義

開業費とは、事業を始めるために開業前に支出した費用のうち、繰延資産として計上できるものを指します。

代表例

  • 開業準備のための広告宣伝費(開店チラシ、ホームページ制作費など)
  • 店舗や事務所を借りるための仲介手数料
  • 開業準備で使用した交通費・打合せ費用
  • 開業に関するセミナー参加費や専門家への相談料

ポイント

通常の経費は支出した年度に全額経費となりますが、開業費は「繰延資産」として計上し、任意のタイミングで償却できるのが特徴です。
つまり、節税のタイミングをコントロールできるのです。


どこまで遡れる?

開業費として認められるのは、「事業を始めるために直接必要だった支出」であれば、開業日のかなり前の支出でも計上可能です。

具体例

  • 開業の1年前に借りた店舗の契約金
  • 半年前に購入した備品や打合せ費用
  • 事業計画を立てるためのセミナー参加費

👉 明確な期限はなく、開業と関連性があれば遡って計上できるのが大きな特徴です。


開業費になる意外な支出

① 名刺やチラシの作成費用

開業前に営業活動を始めていた場合、そのために作った名刺やパンフレットも対象。

② 移動交通費

開業準備で不動産を見に行った、金融機関や税理士に相談に行ったなどの交通費。

③ 研修・セミナー参加費

起業に役立つセミナーや勉強会への参加費。

④ 交際費

開業準備で銀行や取引先候補と打ち合わせを兼ねて飲食した場合。

⑤ 什器・備品購入費

オフィス机や椅子、PC、プリンターなども、開業のための購入であれば開業費。


開業費の注意点

1. 個人的支出との区別

  • 私的な飲食費や旅行費は対象外
  • 家事関連費は明確に区別して帳簿に記載

2. 減価償却資産は対象外

  • 10万円以上の備品や設備は「固定資産」として計上し、開業費には含まれない

3. エビデンス(証拠書類)の保存

  • 領収書、請求書、契約書は必ず保管
  • 証拠がなければ開業費として認められない可能性あり
  • 摘要欄には「開業準備費用」と明記

開業費の償却方法

開業費は「繰延資産」として計上し、任意のタイミングで償却可能です。

  • 一括で全額償却して、その年の利益を圧縮する
  • 数年に分けて償却し、安定した節税効果を狙う

👉 資金繰りや利益状況に応じて調整できるのが大きなメリットです。


経営者のための活用戦略

  1. 赤字の年には償却しない
    → 赤字にしても節税効果はないため、利益が出た年に償却する方が有効。
  2. 証拠書類を体系的に保管
    → 「開業準備フォルダ」を作り、領収書や契約書をまとめて保管。
  3. 開業費と創立費を区別
    • 個人事業主:創立費はなし、すべて開業費
    • 法人:登記関連費用は「創立費」、営業準備費用は「開業費」

まとめ

  • 開業費とは、開業準備のために支出した費用を繰延資産として計上できるもの
  • 遡りに制限はなく、開業と関連があれば1年以上前の支出も対象
  • 名刺作成や交通費、研修費など意外なものも開業費になる
  • 減価償却資産や私的支出は対象外
  • 証拠書類の保存と摘要欄への明記が極めて重要
  • 償却タイミングを調整して節税効果を最大化できる

最後に

開業費の扱いを正しく理解することは、経営者にとって「開業初年度から余計な税金を払わない」ための重要な知識です。
開業準備で使った支出を「どう処理するか」で、数十万円単位の差が出ることもあります。

私はこれまで多くの経営者の開業サポートを行い、開業費の計上やエビデンス整理を支援してきました。
これから開業を考えている方は、節税と資金繰りを見据え、準備段階から正しく経費を整理していきましょう。

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