経理

「経営者保証とは?仕組み・保証が付く融資/付かない融資・外すメリット・デメリットを徹底解説」

融資の経営者保証とは?
~仕組み・付く融資と付かない融資・外すメリット・デメリットを徹底解説~


はじめに

中小企業が金融機関から融資を受ける際、ほとんどの場合で求められるのが経営者保証(個人保証)です。
「会社の借入なのに、なぜ経営者個人が保証するのか?」「経営者保証がない融資はあるのか?」「保証を外したら何が変わるのか?」

これらの疑問に答えられる経営者は意外と多くありません。
しかし、経営者保証は会社と経営者個人のリスクに直結する重要な問題です。

この記事では、経営者保証の仕組み、保証が付く融資・付かない融資の違い、保証を外すメリット・デメリット、そして経営者がどう備えるべきかを詳しく解説します。


1. 経営者保証(個人保証)とは?

定義

経営者保証とは、会社が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が連帯保証人になることを指します。

  • 会社が返済できなくなった場合、経営者個人に返済義務が及ぶ
  • 個人資産(自宅・預金など)も差し押さえ対象になりうる

なぜ求められるのか?

中小企業は自己資本が薄く、会社資産だけでは返済原資の確保が難しい場合が多いため、金融機関はリスクヘッジとして経営者保証を求めます。


2. 経営者保証が付く融資と付かない融資

保証が付く融資(一般的なケース)

  • 銀行・信用金庫からのプロパー融資
  • 信用保証協会付き融資(経営者保証免除特約なしの場合)

ほとんどの中小企業融資は経営者保証付きで行われています。

保証が付かない融資(例外)

  • 日本政策金融公庫の一部制度(創業融資など)
  • 信用保証協会の「経営者保証免除特約」付き融資
  • ノンバンク系の一部融資(保証人不要商品)

経営者保証免除特約は、一定の条件を満たすことで信用保証協会が経営者保証を求めない制度です。


3. 経営者保証を外すための条件(免除特約の要件)

経営者保証免除特約を利用するには、以下の条件を満たす必要があります(代表例:全国信用保証協会連合会のガイドライン)。

  1. 財務要件
    • 適正な財務管理を行っていること
    • 債務超過でない、または経営改善計画があること
  2. 法人と経営者個人の資産・経理の分離
    • 法人と経営者個人の資産・負債を明確に区分
    • 法人名義で経理・預金管理を行っていること
  3. 決算書・税務申告が適正であること
    • 毎期の決算・申告を適正に実施

これらを整備していれば、金融機関や保証協会が「経営者保証不要」と判断する可能性が高まります。


4. 経営者保証を外すメリット・デメリット

メリット

  • 経営者個人の資産が守られる
  • 会社が万が一返済不能になっても、個人破産のリスクを軽減
  • 経営者交代・事業承継がしやすくなる

デメリット

  • 金融機関がリスクを負うため、融資条件が厳しくなる場合がある(融資額が減る、金利が高くなるなど)
  • 免除特約の条件を満たすために経理・財務をしっかり整備する必要がある

5. 経営者保証を外したい経営者が取るべき行動

  1. 法人と個人の分離
    • 会社の口座と経営者個人の口座を完全に分ける
    • 役員貸付・立替を減らし、法人・個人を混在させない
  2. 財務体質の改善
    • 債務超過を解消し、自己資本比率を高める
    • 毎期の決算書を正しく作成し、金融機関に開示する
  3. 信用保証協会の経営者保証免除特約を利用
    • 取引銀行に相談し、条件を満たすよう整備する
  4. 専門家(税理士・認定支援機関)に相談
    • 計画書作成や財務改善の支援を受ける

6. 事例で学ぶ経営者保証の有無と影響

事例1:経営者保証付き融資で個人破産

A社は経営不振で会社が返済不能に。
経営者保証付き融資だったため、社長個人に数千万円の返済義務が発生し、個人破産に至った。

事例2:保証免除特約で資産保全

B社は財務管理を改善し、法人と個人を完全分離。
信用保証協会の免除特約を利用し、経営者保証なしで融資を実行。
会社清算後も経営者個人資産は守られた。

事例3:保証なしだが条件厳格

C社は免除特約で保証なし融資を受けたが、融資額は希望より少なく、金利もやや高めだった。
しかし、経営者は「個人資産を守れる安心感」を優先した。


7. 経営者が理解しておくべきこと

  • 経営者保証は「金融機関が経営者個人の責任を担保する仕組み」
  • 保証を外すには「法人と個人の分離」「財務管理」「適正決算」が必須
  • 保証を外すと個人資産を守れるが、融資条件が厳しくなる可能性もある
  • 経営者保証免除特約や政策金融機関の制度を活用すれば、保証なし融資の可能性が広がる

まとめ

  • 経営者保証は会社が返済できない場合に経営者個人が責任を負う制度
  • 一般的な銀行・信用金庫融資では保証が付くが、免除特約や政策金融公庫の一部制度で保証なし融資も可能
  • 保証を外すメリットは個人資産保全・事業承継容易化、デメリットは融資条件の厳格化
  • 法人と個人の分離・財務体質改善・適正申告を整え、専門家の支援を受けることで保証なし融資への道が開ける

最後に

私はこれまで多くの中小企業の融資サポートを行ってきましたが、経営者保証は経営者にとって大きなリスクである一方、整備次第で外すことも可能です。
保証の有無だけにとらわれず、自社の財務体質を強化し、法人と個人を分けることが最も重要です。

経営者保証を理解し、正しい選択と準備をすることで、金融機関との信頼関係を築き、安心して事業拡大に取り組むことができます。

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