建設業が利益を残す秘訣|工事現場別の粗利管理が最強の経営戦略
建設業こそ、各工事現場ごとの粗利を把握することが大事!
粗利管理ができる会社が「利益が残る会社」になる理由とは?
はじめに:建設業が利益を残せない本当の理由は「現場ごとに粗利を見ていない」から
建設業の経営相談で圧倒的に多い課題があります。
- 「現場が黒字なのか赤字なのか分からない」
- 「売上はあるのにお金が残らない」
- 「期末になるまで利益が出ているか分からない」
- 「粗利率がバラついて、資金繰りが不安定」
これらはすべて “工事ごとの粗利を把握できていない” ことが原因です。
建設業は製造業や小売業と違い、
現場ごとに採算が大きく違い、粗利率の振れ幅もとても大きい業種です。
にもかかわらず、“会社全体の粗利”しか見ていない建設会社が非常に多い。
これは、
「経営状態が見えないまま走る危険運転」
に例えられます。
本記事では、
なぜ建設業こそ現場別粗利管理が必須なのか、
どうやって粗利を把握するのか、
どのように利益体質へ変えていくのか、
を建設業専門の視点で解説します。
第1章 建設業は「現場別の粗利」が命
会社全体の粗利だけでは正しい経営判断はできない
建設業で利益を残すためには、
工事別(現場別)の採算管理=粗利管理 が不可欠です。
しかし、実際に多くの経営者がこう答えます。
- 「現場ごとの粗利はざっくりしか見ていない」
- 「担当者に任せている」
- 「完成してからしか分からない」
- 「現場担当が数字をまとめられない」
この状態では、
利益が残るかどうかは“運任せ”です。
建設業の粗利は、
- 職人の稼働
- 材料費
- 外注費
- 工期
- 手戻り
- 現場監督の力量
など、さまざまな変動要素で簡単に上下します。
だからこそ、
「現場ごとに粗利を管理しなければ、何が黒字で何が赤字か全く分からない」
のです。
第2章 現場別の粗利を把握しない会社に起こる典型的な悲劇
粗利を見ない会社は、以下の“危険な共通点”を持っています。
① 忙しいのに全く利益が残らない
建設業では「忙しさ=儲かっている」ではありません。
粗利が低い現場ばかり受注していると、
いくら忙しくしても利益は残らない。
事例:工務店A社
- 毎月受注はある
- 職人もフル稼働
- しかし利益は毎月ギリギリ
→ 粗利の低い工事を多く受注していたことが原因
② 赤字現場が決算後になって初めて発覚する
工事が終わって初めて、
- 「あの現場は赤字だった」
- 「材料費が跳ね上がっていた」
- 「追加工事の見積を取り忘れていた」
と気づく。
決算書を見て初めて「赤字だった」と知る会社は、
現場別の粗利管理ができていない典型例です。
③ 社長の感覚と現実の数字がズレていく
粗利を把握しない経営は、
「感覚経営」になります。
社長:「この現場は利益が出ているはず」
↓
実際:「材料費と外注費で粗利率は8%だった…」
これは珍しい話ではありません。
④ 経費削減ばかりに走り、根本原因を見誤る
粗利を見ていない会社は、
利益が出ない原因を“販管費”に求めます。
しかし多くの場合、原因は販管費ではなく
現場の粗利が悪いことです。
第3章 工事別の粗利を見れば、経営の“問題点”が一発で分かる
工事別の粗利が見えるようになると、
経営の判断は驚くほどスムーズになります。
■ 効果① 利益の出る工事と出ない工事が明確になる
粗利の高い工事=会社の稼ぎ頭
粗利の低い工事=経営のブレーキ
これが分かれば、
受注すべき工事が明確になります。
■ 効果② 価格設定の適正さが分かる
見積単価が適切かどうかは、
「粗利が取れているか」で判断できます。
値下げが必要な現場か、
値上げすべき現場かも見えてきます。
■ 効果③ 外注費・材料費の管理が劇的に改善する
粗利を見ていれば、
- 外注費が高すぎないか
- 材料費は妥当か
- 見積漏れはないか
- 手戻りが発生していないか
すべて把握できます。
■ 効果④ 職人の稼働と原価のズレが分かる
現場ごとに、
- 人工(にんく)の使い過ぎ
- 過剰な残業
- ムダな段取り
- 現場監督の力量
これらの差が数字で見えます。
■ 効果⑤ 社長の意思決定が桁違いに速くなる
粗利が見える会社の社長は、
問題発見→指示出しが高速です。
逆に粗利が見えない会社は、
毎月の数字を見ても「なぜ利益が出ないのか?」が分かりません。
第4章 建設業が粗利管理を難しく感じる理由
建設業には“粗利管理が難しくなる構造的な理由”があります。
● ① 工事ごとに原価が大きく異なる
- 材料費
- 外注費
- 工期
- 現場監督の力量
- 現場環境(距離・広さ etc.)
同じ種類の工事でも粗利が全く違うこともあります。
● ② 原価が発生するタイミングがバラバラ
- 外注費の請求
- 材料仕入
- 人工
- 追加工事の発生
材料費があとからドンと増えることも多い。
● ③ 完工まで数字が見えない
長い工期の場合、
工事中の粗利が見えないまま進む会社が多い。
● ④ 現場担当者が“数字管理が苦手”
現場は現場の仕事が中心であり、
数字に強い人材が少ないのが実態。
第5章 現場別粗利を把握するための実務ステップ(誰でもできる)
粗利管理は難しくありません。
次のステップで確実にできます。
STEP① 工事ごとの「原価台帳」を作る
最低限、以下の情報が必要です。
- 受注金額
- 材料費
- 外注費
- 人工・日当
- 諸経費
- 工期
- 追加工事の金額
これを現場ごとに管理します。
STEP② 週次または月次で進捗粗利を出す
未成工事でも構いません。
現時点の粗利率を見ることが重要。
STEP③ 完工後に「差異分析」をする
- 見積と実績の差
- 材料費が増えた理由
- 外注費が跳ねた理由
- 原価率が悪化した原因
これが次の見積に活きます。
STEP④ 粗利率の悪い現場を“可視化”する
粗利率が一定以下の現場には注意マークを付ける。
STEP⑤ 高粗利の工事に注力する
高粗利の工事を増やせば、会社は自然と利益体質になります。
第6章 【事例】粗利管理で利益を伸ばした建設会社の実例
■ 事例① 電気工事業A社:粗利20%→30%へ改善
以前は工事別採算が分かっていなかったが、
原価台帳を導入すると…
- 赤字現場を発見
- 外注費の使い過ぎを特定
- 見積単価を適正化
結果:
粗利率20% → 30%へ改善
資金繰りが劇的に改善した。
■ 事例② 工務店B社:追加工事の漏れを発見し利益アップ
粗利管理を始めることで、
- 追加工事の請求漏れ
- 材料の二重発注
- 職人の稼働過多
これらを可視化。
結果:
年間利益1,200万円アップ。
■ 事例③ 土木工事C社:赤字工事を断る判断ができるように
粗利率の低い案件を“断る勇気”が持てるようになり、
- 年間の工事件数:30件 → 25件
- 売上は微減
- 粗利額は大幅増
忙しさに追われず利益が残る構造に変わった。
第7章 建設業が「粗利管理」をすると利益が残る会社に変わる理由
理由① 受注すべき仕事が明確になる
粗利率の高い現場に集中できる。
理由② 価格競争を避けられる
価値の高い工事にフォーカスできる。
理由③ 原価の“ムダ”がなくなる
材料・外注の使い過ぎを防げる。
理由④ 社員の意識が変わる
職人・現場監督が「粗利」を意識して動くようになる。
理由⑤ 銀行評価が上がる
金融機関は建設業の粗利率を非常に重視するため。
まとめ:建設業は粗利を制する者が利益を制する
建設業は、
現場ごとの粗利管理こそが経営の生命線です。
- 忙しいのに利益が残らない
- 決算で初めて赤字が分かる
- 原価が把握できていない
- 社長の感覚経営になっている
これらはすべて“現場別粗利を見ていないこと”が原因。
逆に、
現場別粗利を把握できるようになれば、
- 儲かる現場が分かる
- 受注戦略が明確になる
- 原価管理が強化される
- 銀行評価が上がる
- 利益が自然と残る体質へ変わる
建設業こそ、
粗利管理を徹底すれば必ず強い会社になれる業界です。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。