粗利率を把握しない経営者が失敗する理由|利益を生む商品分析の重要性
自社製品の粗利率を把握していますか?
把握していない経営者が最初に取り組むべき“利益の見える化”
〜粗利率を理解すると経営は劇的に変わる〜
はじめに:粗利率を知らない経営者は、暗闇の中を運転しているのと同じ
会社の利益構造を決める最重要指標が 粗利率(売上総利益率) です。
しかし、多くの経営者が次のように言います。
- 「だいたいこのくらいだと思う」
- 「感覚的には把握している」
- 「会計事務所からもらう決算書でしか見ていない」
- 「商品別の粗利率までは見ていない」
これは非常に危険です。
なぜなら、
✔ “全体の粗利率”を知るだけでは経営判断はできない
✔ 商材別の粗利率を知らなければ、儲かっている商品も赤字の商品も分からない
✔ 利益の源泉がどこにあるか分からない
からです。
粗利率を知らない経営者は、
売上が伸びても資金繰りが苦しくなり、黒字倒産のリスクが高まる可能性があります。
この記事では、
- 粗利率を把握する重要性
- なぜ粗利率を見ないと危険なのか
- 粗利率が分からない会社が陥る失敗
- 事例で見る粗利率の改善と会社の成長
- 今日からできる粗利率管理の方法
を、分かりやすく解説していきます。
第1章 粗利率とは何か?数字が全てを語っている
まず基本から。
■ 粗利とは
売上 − 売上原価 = 粗利(売上総利益)
■ 粗利率とは
粗利 ÷ 売上 = 粗利率(%)
粗利率は、
「商品がどれだけ儲かっているか」
を表す経営の最重要数字です。
粗利率は会社の“心臓部”
粗利率を正しく把握しない会社は、
- 何を売るべきか
- どこに力を入れるべきか
- どこを改善すべきか
- どの商品を撤退すべきか
この判断ができません。
社長が粗利率を把握しているかどうかで、
会社の将来が決まると言っても過言ではありません。
第2章 粗利率を把握していない会社に起こる悲劇
粗利率を見ていない会社が陥る問題は共通しています。
悲劇① 売上が増えたのに利益が減る
中小企業に最も多いのがこれ。
● 売上アップに飛びつく
→ 商品別の粗利を確認していない
→ 粗利の低い商品が売れる
→ 利益が出ない
→ 資金繰りが悪化
▽ 事例:加工食品メーカーA社
- 売上:前年比118%
- 粗利:前年比90%
- 資金繰り:前年より厳しい
売れた商品が全部「低粗利商品」だったためです。
悲劇② 利益の源泉が分からない
例えば…
- 売上トップの商品が実は赤字
- 社長が注力していた商品が儲かっていない
- 利益を稼いでいるのは別の商品だった
こうしたことはよくあります。
悲劇③ “売れば売るほど赤字”という地獄ループに陥る
粗利率を見ずに値下げすると危険です。
▽ 事例:建設業B社
利益率が低い業務を価格競争で受注
→ 売上は増える
→ 利益は減る
→ 資金ショート
→ 経営悪化
粗利率を知らない経営者は、この悪循環が止められません。
悲劇④ 銀行からの評価が下がる
銀行が最も注目するのは、
- 粗利率の推移
- 粗利額の安定性
- 価格競争していないか
- 原価管理ができているか
粗利率が下がる会社は「経営管理能力が低い」と判断されます。
第3章 粗利率を把握することが会社を救う理由
粗利さえ正しく理解すれば、
会社の意思決定は驚くほど精度が上がります。
理由① どの商品が“稼ぎ頭”か分かる
粗利率は商品ごとに違うため、
必ず次のような結論が出ます。
- A商品:売上は大きいが利益は少ない
- B商品:売上は小さいが利益率が高い
- C商品:売れば売るほど赤字
つまり、
どの商品に力を入れるべきかが一発で分かる。
理由② 値上げ・値下げの判断ができる
粗利率が高い商品は値下げに強い。
粗利率が低い商品は値下げに弱い。
この理解があれば、
- 安易な値引きで赤字になる
- 価格競争に巻き込まれる
- 原価割れ商品を量産
という失敗を防げます。
理由③ 原価改善の効果が見える
原価改善をしても粗利率が分からないと“効果測定”ができません。
粗利率を把握することで、
- どれだけ改善されたか
- 改善コストは妥当か
- 次はどこを改善すべきか
これらが明確になります。
理由④ 経営判断のスピードが上がる
粗利率を見ている会社は、意思決定が速いです。
- 売るべき商品
- 攻めるべき市場
- 広告投下の配分
- 人員配置
- 在庫数
- 資金繰り
すべて粗利で判断できます。
理由⑤ 銀行の評価が上がる
粗利率の高い会社は、
銀行から「強い会社」とみなされます。
理由は、粗利が高いと
- 経費を吸収しやすい
- 景気後退にも耐えやすい
- 資金繰りが安定する
- 営業利益が安定する
銀行は粗利率を“経営の強さ”として評価します。
第4章 【事例】粗利率を把握して会社が劇的に改善したケース
ここでは複数の実例を紹介します。
■ 事例① 食品メーカーA社:売れ筋商品の撤退と粗利率アップ
A社では「売上トップ商品」が実は最も低粗利の商品でした。
分析すると…
- 売上比率:40%
- 粗利率:14%
- 在庫負担大
逆に、売上比率20%の商品は粗利率30%。
社長が売上ボリュームに惑わされていたのです。
【改善後】
- 低粗利商品を縮小
- 高粗利商品の広告強化
- 売上−5%
- 営業利益+230%
売上を減らして利益が増える典型例です。
■ 事例② 製造業B社:原価管理の徹底で粗利率10%改善
B社は原価管理が曖昧。
- 金属材料の単価把握なし
- 外注費の精査なし
- 値上げ交渉の基準なし
商品別粗利を作ると“赤字商品”が3つ判明。
【改善後】
- 赤字商品を廃止
- 外注先を見直し
- 値上げに成功
- 粗利率:18% → 28%
資金繰りが改善し銀行評価もUP。
■ 事例③ 飲食業C社:メニュー分析で単価と粗利率アップ
飲食店ではメニューごとの粗利が極めて重要です。
C社では…
- 売れているメニュー:粗利率25%
- 売れていないメニュー:粗利率70%
つまり、売れば売るほど利益が減る構造。
【改善後】
- 高粗利商品の掲載位置変更
- セットメニュー改善
- 食材ロス削減
結果:
- 粗利率:35% → 48%
- 売上横ばいで利益2倍
■ 事例④ 建設業D社:工事別の粗利管理で利益を確保
建設業は工事ごとに粗利が大きく変わります。
D社では粗利の可視化により、
- 赤字工事を断る
- 粗利の高い工事に注力
- 工事管理の質が向上
営業利益がプラスに転換しました。
第5章 今日からできる「粗利率の見える化」手順
粗利率を把握するのは難しくありません。
以下の手順で確実にできます。
STEP① 商品別に売上と原価を拾う
最低限必要なのは、
- 売上金額
- 原価(材料費・仕入・外注)
これを商品ごとに算出します。
STEP② 粗利と粗利率を出す
粗利=売上−原価
粗利率=粗利÷売上
STEP③ 粗利額の高い商品をランキング化
粗利額が大きい商品が“稼ぎ頭”です。
STEP④ 赤字商品を特定する
粗利率が低い(20%以下)、もしくは粗利がマイナスの商品は撤退候補。
STEP⑤ 高粗利商品を伸ばす施策を作る
- プロモーション
- 値上げ
- セット販売
粗利の高い商品に集中することが利益最大化の最短ルート。
第6章 経営者が粗利率を把握することの真の価値
粗利率を理解することで、
経営者は“意思決定の精度”が大幅に上がります。
■ 粗利率を把握するメリット
- 売るべき商品が分かる
- 値下げしない基準ができる
- 原価改善の優先順位が決まる
- 銀行の評価が上がる
- 利益が増え資金繰りが改善する
- 無駄な在庫を減らせる
- 社員へ適切な指示が出せる
粗利率を知らない会社は、
“何が儲かって何が赤字か”すら分かりません。
粗利を把握するだけで、
会社は必ず強くなります。
まとめ:粗利率を知らない会社は、経営をしているとは言えない
会社を動かすのは利益です。
利益を生むのは粗利です。
つまり、
粗利率を理解する=経営を理解する
ということ。
粗利率は
- 事業戦略
- 顧客戦略
- 商品戦略
- 財務戦略
すべての中心にある“核”です。
今日からまず、
「商品別粗利の把握」
に着手してください。
それだけで、会社は改善します。
ホームに戻る芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。