公共工事を受ける建設業の会社こそ資金繰りに注意!キャッシュフロー経営で未来を切り開く
はじめに
公共工事を受注できる建設業の会社は、安定した受注が期待でき、社会的信用も高い一方で、大きな落とし穴があります。それが 資金繰り です。
工事代金は着手金・中間金・完成時の3回に分けて支払われますが、外注費・材料費・人件費などは毎月必ず発生します。売上はあるのに資金ショート寸前――そんな状況に陥る建設業者は少なくありません。
この記事では、
- 公共工事の入金サイクルが資金繰りを圧迫する理由
- ファクタリングや短期借入金などの対策
- 現場ごとの粗利・キャッシュフロー管理の重要性
- 融資条件を有利にするために必要な「キャッシュフロー経営」
についてわかりやすく解説します。
公共工事の入金サイクルと資金繰り悪化のカラクリ
資金の入金は「3分割」
公共工事の代金は、次のように分割されるのが一般的です。
- 着手金(工事開始時)
- 中間金(進捗に応じて)
- 完成金(引渡し時)
このため「工事全体の利益は見えているのに、手元資金が不足する」状況が発生します。
毎月の支払いは止まらない
- 外注費(下請け業者への支払い)
- 材料仕入れ費
- 人件費
- 現場経費
これらは毎月必ず出ていきます。入金が3分割でも、支払いは12分割。つまり 支払いのタイミングが先行する構造 なのです。
資金繰り悪化の典型パターン
- 売上高が増えるほど支払いが膨らむ
- 入金待ちの請求書は増えるが、手元資金は減る
- 結果として「黒字倒産」のリスクに直結
入金サイクルと支出のサイクルをまとめた表
赤字で示したものは、入金と支払いの差異による資金ショートをあらわします。
月 | 入金(着手金・中間金・完成金) | 支払い(外注費・仕入・人件費など) | 資金残高(シミュレーション) |
1月 | 500 | 600 | 400 |
2月 | 0 | 600 | -200 |
3月 | 1000 | 600 | 200 |
4月 | 0 | 600 | -400 |
5月 | 0 | 600 | -1000 |
6月 | 1500 | 600 | -100 |
資金ショートを防ぐための手段
① ファクタリングの活用
工事代金の請求書を買い取ってもらい、早期に現金化する仕組み。
- メリット:すぐに資金が得られる
- デメリット:手数料が高い場合がある
一時的なつなぎ資金には有効ですが、乱用はコスト増につながります。
② 短期借入金
銀行からの短期資金調達。
- 金利負担はあるものの、手数料に比べれば安価
- 信用格付けにより条件が大きく変わる
③ つなぎ融資
工事の進捗に応じた「つなぎ」の資金調達。
- 公共工事の請負契約が担保になることも多く、比較的利用しやすい
- ただし、業績が悪ければ借入が難しい
本当に大事なのは「現場ごとの粗利」と「キャッシュフロー管理」
粗利を確保する
公共工事は原価割れしていても受注してしまう会社が少なくありません。
- 「売上が増えれば会社が潤う」
- 「とにかく工事件数を取ればいい」
こうした考え方は危険です。重要なのは、1件ごとの工事で確実に粗利を残すこと。
現場ごとのキャッシュフローを見える化
単に損益計算書(P/L)で利益が出ているかを見るのでは不十分。
- どの現場で資金が先行しているか
- どの現場で回収までの期間が長いか
これを把握することで、資金ショートを未然に防げます。
好条件で融資やファクタリングを受けるには「業績の見える化」が必須
銀行やファクタリング会社は、必ずこう考えます。
「この会社は貸したお金をきちんと返せるのか?」
金融機関が重視するポイント
- 決算書の黒字かどうか
- 債務超過でないか
- 資金繰り表がしっかり管理されているか
- 現場別に採算管理ができているか
ここで重要なのが、「どんぶり勘定の経営」をしていないか という点です。
キャッシュフロー経営で未来を切り開く
どんぶり経営からの脱却
「なんとなく利益は出ているだろう」という感覚的な経営では、資金繰りの壁に必ずぶつかります。
キャッシュフロー経営とは?
- 入金と出金の時期を把握する
- 手元資金の推移を予測する
- 黒字倒産を防ぎ、健全な借入ができる状態を保つ
これが 持続可能な経営の必須条件 です。
まとめ
公共工事を受注する建設業の会社は、安定した収益基盤がある一方で、資金繰りのリスクを常に抱えています。
- 入金は分割だが支払いは毎月発生する
- ファクタリング・短期借入金・つなぎ融資で対応できるが、条件は業績次第
- 現場ごとの粗利とキャッシュフロー管理が何より大事
- 銀行は「どんぶり勘定」を嫌い、「キャッシュフロー経営」を評価する
つまり、資金繰り改善の第一歩は、会計の見える化とキャッシュフロー管理にあります。
最後に
私はこれまで多くの建設業の経営者と資金繰りの相談に携わってきました。
「売上はあるのに資金が足りない」――そんな悩みを解決するためには、単なる数字の処理ではなく、現場ごとのキャッシュフローを見える化し、未来を見据えた経営 が不可欠です。
もし、資金調達や資金繰りに課題を感じているなら、早めの対策をおすすめします。キャッシュフロー経営を導入すれば、金融機関からの評価も上がり、未来の資金調達もスムーズになります。
ホームに戻る芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。