融資を満額で引き出す経営戦略!資金使途と運転資金を見える化する計画書の作り方
融資を満額で受け取るために必要な“資金計画”とは?
〜 銀行が納得する運転資金の考え方と経営者の準備ポイント 〜
はじめに:なぜ、希望通りの融資が通らないのか?
経営者からよく聞く言葉があります。
「銀行に2,000万円申し込んだのに、1,000万円しか出なかった…」
しかし、それは銀行が“意地悪”なのではありません。
銀行が「必要性」と「返済可能性」を感じなかっただけです。
融資は「お願い」ではなく「交渉」です。
そして、その交渉の武器となるのが、明確な資金計画と運転資金の理解です。
この記事では、
- 銀行が融資金額をどう判断しているのか
- 満額融資を受けるための資金計画とは何か
- 運転資金をどう考えればよいのか
を経営者目線でわかりやすく解説します。
第1章:銀行は“根拠”のある金額しか貸さない
銀行は、融資の申し込み金額を見た瞬間にこう考えます。
「なぜこの金額なのか?」
「どのように使うのか?」
「返済原資はどこから出るのか?」
これに明確に答えられないと、融資担当者は上司や審査部に説明できません。
結果、「減額回答」になります。
銀行が融資額を減らす主な理由は3つです。
① 金額の根拠があいまい
「とりあえず2,000万円ほしい」では審査できません。
資金の使途を「設備」「仕入」「運転」「借り換え」に明確に区分する必要があります。
② 返済能力とのバランスが取れていない
銀行は、融資額よりも「返済可能性」を重視します。
営業利益+減価償却費=キャッシュフロー
この金額が返済額を下回っていれば、減額されるのは当然です。
③ 過去の資金使途が不明確
仮払金・役員貸付金などが残っていると、
「資金管理ができていない」と判断され、融資条件が悪化します。
第2章:満額融資を受けるための3つの基本戦略
満額回答を引き出す経営者には、共通する特徴があります。
それは「数字のストーリーを語れる」ことです。
では、どんな準備をすればよいのかを具体的に解説します。
戦略①:資金使途を細かく明示する
銀行は、資金の「使い道」を最重要視します。
同じ2,000万円でも、「設備資金」なのか「運転資金」なのかで審査基準が違います。
| 資金区分 | 具体例 | 銀行の見方 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 機械・車両・店舗改装 | 減価償却資産として長期融資可 |
| 運転資金 | 仕入・人件費・外注費 | 売上と回収サイクルが重要 |
| 借換資金 | 既存借入の一本化 | キャッシュ改善目的なら好印象 |
| 投資資金 | 新事業・M&A等 | リスク高、事業計画が必須 |
戦略②:返済シミュレーションを自社で行う
銀行は、「この会社が返せるか」を数字で見ます。
そのためには、以下の資料が必要です。
- 直近2〜3期の試算表・決算書
- 今期の資金繰り表
- 融資実行後のキャッシュフロー予測
ここで大事なのは、
“利益”ではなく“現金の動き”で説明すること”です。
戦略③:経営者が説明できること
「数字は税理士に任せている」では融資は通りません。
銀行は経営者の“数字理解力”を評価します。
実際、同じ内容でも社長が自信を持って説明するだけで、
融資担当者の印象は劇的に変わります。
第3章:運転資金の本質を理解する
融資を申し込む際に、最も誤解が多いのが「運転資金」の考え方です。
▶ 運転資金とは?
運転資金とは、「仕入〜販売〜入金」までの資金の流れを回すための資金」です。
つまり、日々の事業活動を続けるために必要な“血液”です。
▶ 運転資金の構造
運転資金は次の式で表せます。
運転資金 = 売上債権(売掛金)+在庫 − 仕入債務(買掛金)
この運転資金が大きいほど、キャッシュの回収までの期間が長い=資金繰りが厳しい構造になります。
▶ 運転資金が必要になる3つのパターン
1️⃣ 売上が増えているとき
→ 売掛金・在庫が増え、資金が先行します。
2️⃣ 支払条件が厳しいとき
→ 仕入先への支払が早いと、運転資金が圧迫されます。
3️⃣ 粗利率が下がったとき
→ 利益が少なくなり、資金の内部留保ができません。
第4章:運転資金の“見える化”で満額融資を実現する
銀行にとって、「運転資金の見える化」は非常に重要です。
たとえば、以下のような表を提出できるだけで評価が上がります。
| 月 | 売上 | 売掛回収 | 仕入支払 | 在庫 | 資金残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4月 | 1,000万円 | 800万円 | 900万円 | 300万円 | 200万円 |
| 5月 | 1,200万円 | 1,000万円 | 1,100万円 | 350万円 | 250万円 |
このように数字を可視化することで、
「融資後、資金がどう流れるか」を説明できます。
銀行はこの資料を見て、
「この社長は資金繰りを理解している」と判断します。
第5章:満額融資を引き出す資金計画の作り方
① 資金需要の根拠を明示
融資希望金額の内訳を次のように整理します。
| 用途 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 新規仕入資金 | 800万円 | 月商1,000万円×回収1か月遅れ |
| 人件費増加対応 | 400万円 | 新店舗オープンに伴う人員追加 |
| 借入金返済補填 | 300万円 | 返済繰上げ分 |
| 設備投資 | 500万円 | 改装・車両購入 |
| 合計 | 2,000万円 |
このように「なぜこの金額が必要か」を数字で示すと、
審査側も納得しやすくなります。
② 融資後のキャッシュフローをシミュレーション
融資を受けた後の返済スケジュールを明確にしておくことで、
「無理のない返済計画」が示せます。
| 年度 | 融資残高 | 年間返済額 | 営業CF | 残資金 |
|---|---|---|---|---|
| 初年度 | 2,000万円 | 400万円 | 600万円 | +200万円 |
| 2年目 | 1,600万円 | 400万円 | 650万円 | +250万円 |
銀行はこのような資金余裕度を確認しています。
第6章:満額融資を受けるために避けるべきNG行動
1️⃣ 試算表を出さない
→ 最新の数字がない会社は、それだけで信頼度が下がります。
2️⃣ 資金繰り表を作っていない
→ 「返済できる根拠が見えない」と判断されます。
3️⃣ 経営者が内容を理解していない
→ 数字説明が税理士任せだと、銀行の印象は悪化します。
第7章:融資交渉を有利にする「3つの武器」
1️⃣ 実態ベースの決算書
→ 含み資産や内部留保を正しく反映させる。
2️⃣ キャッシュフロー計算書
→ 銀行が最も重視する「返済能力」を示せる。
3️⃣ 事業計画書(未来の数字)
→ 「今だけでなく、今後の成長見込み」を伝える。
これら3つの資料が揃っている会社は、
減額されるどころか、追加融資の提案を受けることもあります。
最後に:数字は“信頼の言葉”
融資は「お願い」ではなく「信頼の取引」です。
銀行が求めているのは、
完璧な会社ではなく、数字で語れる会社。
そのためには、
・資金使途を明確に
・返済計画を数字で示し
・運転資金の動きを理解する
この3点を実行するだけで、融資交渉の結果は確実に変わります。
最後に(サポート案内)
私は、経営者が自社の「資金の流れ」を理解し、
銀行に強い会社をつくるための資金計画サポートを行っています。
- 実態ベースの財務分析
- 融資交渉のための資料作成サポート
- 運転資金の最適化とキャッシュフロー改善
- 銀行対応のロールプレイ(説明練習)
「なぜ減額されたのか分からない」
「融資を受けたいけど資料の作り方がわからない」
そんなお悩みがあれば、ぜひご相談ください。
数字を武器に、あなたの会社の資金調達力を底上げします。
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芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。