融資

人件費を「コスト」から「投資」に変える!採用・昇給・融資の三位一体経営法

人件費を向上させるために会社がやるべき施策とは?
〜 人材確保・昇給・融資を連動させた“未来志向の経営” 〜


はじめに:人件費は「コスト」ではなく「投資」である

「人件費が上がるのが怖い」「給与を上げたいけど資金が足りない」
多くの中小企業の経営者が、いまこの悩みに直面しています。

しかし、人件費は経営を圧迫する“コスト”ではなく、将来を作る“投資”です。
給与を上げ、優秀な人材を確保し、定着率を高めることで、結果的に利益率も向上します。

この記事では、

  • 人件費向上のために会社がやるべき具体策
  • 良い人材が集まる仕組みづくり
  • 昇給を支える資金調達(融資)の考え方
  • 実際の成功事例

を、財務と人事の両面から詳しく解説します。


第1章 人件費を上げる前に必要な「現状把握」

● 1人あたり人件費と生産性を見える化する

最初に行うべきは、「人件費が高いか安いか」を数字で把握することです。

例えば、

  • 売上:1億円
  • 人件費総額:3,000万円
    → 人件費率:30%

この数値だけを見ると適正範囲に見えますが、
もし同業他社の平均が25%であれば、競争力が下がっている可能性があります。

逆に、人件費率が高くても、粗利率や生産性が上がっていれば問題なし。
つまり、「給与が高い=悪い」ではなく、“付加価値と比例しているか”が鍵です。


● 生産性の測定指標:「粗利÷人件費」

この式がもっともシンプルな生産性指標です。

例:

  • 粗利:6,000万円
  • 人件費:3,000万円
    → 生産性=2.0

つまり「1円の人件費で2円の粗利を生んでいる」という意味です。

目安は2.5〜3.0倍。
これを超えれば、人件費アップに十分な余力があります。


第2章 人件費を上げるための3つの施策

① 成果に応じた評価制度の導入

「頑張っても給料が上がらない」――
この不満が離職率を高め、人件費の効率を悪化させます。

成果に応じた評価制度を導入することで、
“働く動機”を数値化し、昇給に反映できる仕組みを作りましょう。

例:

  • 売上目標達成率
  • 顧客満足度
  • 新規提案数
  • チーム貢献度

定性的・定量的評価を組み合わせることがポイントです。


② 教育投資で「人件費の質」を上げる

給与を上げるには、社員の“価値”を上げる必要があります。
そのために不可欠なのが「教育投資」。

具体的には、

  • 業務マニュアルの整備
  • 外部セミナーや研修費用の補助
  • AI・デジタルツールの活用研修

教育を経費ではなく「未来の人件費削減」として考えることが大切です。


③ 社員の定着率を上げる福利厚生施策

採用よりも、離職を防ぐ方が経営効率が高いです。

福利厚生で特に効果が高いのは以下の3つ:

  • 借り上げ社宅制度(実質的な昇給効果)
  • 旅費・出張手当の規定整備(非課税手当の導入)
  • 健康診断・メンタルケア支援(職場環境改善)

これらは、“給料以外で社員が報われる仕組み”になります。


第3章 良い人材を集めるための経営施策

● 給与よりも「働きやすさ」と「会社の姿勢」

求人票に“給与額”だけを大きく書く企業は、応募者の質が安定しません。
現代の人材は、「どんな会社で働くか」を重視します。

例:

  • リモートワーク制度
  • キャリアアップ支援
  • 子育て支援制度
  • 副業容認

こうした制度は給与よりも“魅力的な条件”として評価されます。


● SNSと口コミ採用の活用

求人サイトだけに頼らず、
社員や社長自身の発信で“共感採用”を行うのが主流です。

  • Instagram:社風や日常を見せる
  • X(旧Twitter):経営者の考えを発信
  • LINE公式:採用エントリーの導線

これらを通じて、「理念に共感してくれる人材」が集まります。


第4章 昇給の原資をどう確保するか?

● 粗利を増やす構造改革

昇給原資の確保=粗利アップです。
価格競争ではなく、付加価値型ビジネスへの転換が必要です。

例:

  • 単なる販売 → コンサル型販売へ
  • 作業代行 → 結果保証・保守契約型へ
  • 時間請求 → 成果請求型へ

粗利率が3%上がるだけで、年商1億円の会社なら+300万円の昇給原資が生まれます。


● 設備投資と人材投資を連動させる

生産性向上のためにIT導入補助金などを活用することで、
社員1人あたりの業務負担を減らし、人件費の“質”を高められます。

  • RPA導入
  • クラウド会計・勤怠管理システム
  • 生成AIによる事務効率化

時間を生み出す=人件費の余裕を生み出すという発想が大切です。


第5章 人件費向上を支える融資戦略

● 融資で人件費を補うことは「悪」ではない

「人件費のために融資を受けるなんて…」
そう考える経営者は多いですが、実はそれは誤解です。

金融機関も「人材投資型の融資」は前向きに評価します。

● 具体的に使える融資制度

融資制度対象ポイント
経営力強化資金(日本政策金融公庫)設備・人材投資経営計画書提出で低利率可
働き方改革推進資金(信金・地銀)労働環境改善社会保険加入率UPで評価高
キャリアアップ助成金(厚労省)非正規→正社員登用融資と併用でキャッシュ確保

● 融資が通りやすくなる財務整備

人件費向上のための融資を受ける際、銀行が見るのは「返済原資」です。

したがって、

  • 減価償却費をしっかり計上しているか
  • 黒字基調が続いているか
  • キャッシュフロー表を作成しているか

これらを整えておくことで、金融機関の評価は格段に上がります。


第6章 実際の成功事例

🔹 事例①:建設業A社(社員10名)

課題:人材流出と人件費の上昇。

施策:

  • 給与体系を見直し、技能手当を導入
  • RPAで事務作業を半減
  • 政策公庫から「経営力強化資金」で500万円借入

結果:

  • 1年で離職率50%→10%
  • 生産性1.8→2.6倍に改善

🔹 事例②:飲食業B社(社員15名)

課題:給与水準が低く、採用難。

施策:

  • 福利厚生を充実(まかない無料・社宅制度導入)
  • SNS発信で採用ブランディング
  • 信用金庫より運転資金1,000万円借入

結果:

  • 応募者数が3倍
  • 売上10%増・利益15%増

第7章 人件費を上げることで得られる“財務上のメリット”

  • 給与が上がることで、社員の士気が向上 → 生産性UP
  • 離職率低下により、採用・教育コスト削減
  • 顧客満足度が上がり、リピート率向上

さらに、金融機関は「人材投資=成長企業の証」と見なします。
人件費を上げることは、融資評価を上げる最も確実な方法でもあります。


第8章 今すぐ始める“人件費向上ロードマップ”

1️⃣ 現状の人件費率と生産性を可視化する
2️⃣ 給与体系と評価制度を見直す
3️⃣ 教育・福利厚生を整備する
4️⃣ 資金計画を立てて融資相談を行う
5️⃣ 月次で進捗をモニタリングする

このステップを3ヶ月で回すだけで、
会社の数字も人の意識も変わります。


最後に:人を活かせる会社こそ、資金を活かせる会社へ

人件費を上げることは、単なるコストアップではありません。
それは「会社の未来への投資」であり、「社員との信頼の証」です。

そして、人に投資できる会社は、金融機関からも信頼されます。

キャッシュフロー経営の視点から、
昇給や採用を“戦略的に設計”するサポートを私は行っています。

融資・財務・人事の三位一体で、
「人も資金も回る経営」へ。

社員が誇りを持ち、経営者が安心して昇給を決断できる未来を、
共に描いていきましょう。

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