経理

法人設立・法人成り時の役員報酬はどう設定する?十人十色で答えは様々!!

〜過去実績のある場合・ない場合それぞれの考え方と3つの事例〜


はじめに

法人設立や法人成りの際に多くの経営者が悩むのが「役員報酬をいくらに設定するか」という問題です。
法人税法上、役員報酬は「定期同額給与」として期首から3か月以内に決定し、以降同額で支給しなければ損金算入が認められません。

法人成りの場合は過去の個人事業実績をもとにシミュレーションできますが、新規法人設立の場合は売上予測が不透明で設定が難しいものです。

この記事では、役員報酬設定の基本、法人成りと新規法人設立の違い、3つの設定方法の事例を交え、経営者にわかりやすく解説します。


役員報酬設定の基本ポイント

1. 期首から3か月以内に決定

法人税法上、役員報酬は期首から3か月以内に決定し、以降同額で支給する必要があります。
これを外れると損金不算入(申告時に経費にならない)となり法人税負担が増加します。

2. 社会保険負担の考慮

役員報酬額に応じて会社・本人双方に健康保険・厚生年金の負担が発生します。
給与を高く設定すれば社保負担も増え、キャッシュフローに影響します。

3. 個人所得税とのバランス

役員報酬は個人の所得税・住民税の課税対象。
高すぎれば個人税負担が増え、低すぎれば生活資金が不足します。


法人成りと新規法人設立の違い

法人成りの場合

  • 過去の売上・利益実績がある
  • 個人事業時代の所得をもとに役員報酬シミュレーションが可能
  • 消費税・社会保険負担の変化を見積もりやすい

新規法人設立の場合

  • 売上予測が不透明
  • 設定金額の根拠を作りにくい
  • 役員報酬を高く設定しすぎると資金繰り悪化リスク

設定方法の3つの事例

事例1:法人成りで過去実績がある場合

個人事業で年商3,000万円・所得800万円のコンサル業Aさん。
法人成り後、役員報酬を月50万円(年600万円)に設定。
社会保険料を加味しつつ、法人に利益を残す形にシミュレーション。
結果:法人税+個人所得税・社保トータルで負担軽減。

事例2:新規法人設立で売上不透明な場合

ITスタートアップB社。
初年度売上予測不確定のため、役員報酬を月20万円に設定。
生活費は自己資金で補い、2期目以降実績を見て増額予定。
結果:キャッシュフロー確保・法人税軽減。

事例3:外部投資家がいる場合

飲食業C社。
外部投資家が出資し、役員報酬は生活費を最低限カバーする月30万円に設定。
黒字安定後に株主総会決議で増額。
結果:初期投資と運転資金に余裕を持たせ成長軌道に乗せる。


実務上の注意点

  1. 法人税・個人税・社会保険トータルで試算する
  2. 役員報酬の増減は期首から3か月以内で決定
  3. 利益調整のための期中変更は原則不可
  4. 役員貸付・立替金を乱用しない(調査リスクあり)

役員報酬設定のヒント

  • 初年度は「少なめ」に設定し、会社に利益を残す
  • 生活費不足分は役員借入金で対応し、翌期利益安定後に返済
  • 税理士・社会保険労務士と連携してシミュレーション

まとめ

  • 役員報酬は期首から3か月以内に決め、以降同額支給が原則
  • 法人成りは過去実績をもとにシミュレーションできるが、新規法人設立は慎重な設定が必要
  • 初年度は少なめに設定して会社に利益を残すことがキャッシュフロー安定につながる
  • 役員報酬設定は法人税・個人税・社会保険負担を総合的に見て判断することが大切

最後に

私はこれまで多くの経営者の法人成り・法人設立に携わり、役員報酬設定の重要性を実感しています。
「いくらに設定すればよいかわからない」という時こそ、事業計画・生活費・税負担・社会保険負担をトータルで試算することが成功のカギです。

正しい設定は会社の資金繰りを守り、経営者自身の生活の安定と税負担の最適化につながります。

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