コラム
【2025年4月施行】新制度「育児時短就業給付金」とは?企業が知っておくべき実務ポイントと対応策
はじめに:子育て支援の新たな一手「育児時短就業給付金」とは?
2025年4月1日、少子化対策と育児支援を目的として、改正雇用保険法により「育児時短就業給付金」が創設されました。
この制度は、育児のために時短勤務を選択した従業員に対して、減少した賃金の一部を給付する仕組みです。
企業にとっても、従業員の育児と仕事の両立を支援する姿勢が求められる中、本制度の正確な理解と実務対応は今後ますます重要になります。
1. 「育児時短就業給付金」制度の概要
■ 制度の目的
育児を理由に短時間勤務を選択した従業員の賃金減少を補填することで、育児と就業の両立を支援し、育児離職を防ぐ。
■ 支給開始日
- 2025年4月1日より施行(令和7年4月1日)
■ 給付額の計算方法
原則として、育児時短勤務中に支払われた各月の賃金額の10%が給付されます。
例)
月給:20万円 → 給付額:2万円
ただし、次の条件に該当する場合は支給対象外または制限ありとなります。
- 賃金+給付金の合計が時短前の賃金を超える場合
- 時短中の賃金が月額459,000円(2025年7月末まで)を超える場合
- 支給額が2,295円(2025年7月末まで)を下回る場合
※支給限度額・最低限度額は毎年8月1日に改定
2. 給付対象者の要件
以下の両方の条件を満たすことが必要です:
■ 基本要件
- 雇用保険の被保険者であること
- 2歳未満の子を養育するために時短勤務をしていること
■ 経歴要件
下記のいずれかを満たすこと:
- 育児休業給付を受けた後、引き続き時短就業を開始
- 時短就業の開始日前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間がある
■ さらに以下の条件も必要
- 1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業していること
- 育児休業給付、介護休業給付など他の給付を同時に受給していないこと
➡ 要件をすべて満たす月に限り、月単位で支給されます。
3. 給付の具体例と注意点
■ ケース例①:支給対象となる場合
- 時短勤務により月給20万円 → 10%給付 → 2万円の支給
- 合計22万円が時短前給与の範囲内 → 支給OK
■ ケース例②:支給対象外となる場合
- 時短中の給与が45万円 → 上限額459,000円を超えている場合 → 支給対象外
- 給付額が2,200円など、最低限度額未満の場合 → 支給なし
4. 企業側が押さえておくべきポイント
■(1)制度周知と申請フローの整備
- 育休復帰時に制度説明を行う
- 時短勤務開始前に申請書類・条件確認のサポート
■(2)人事労務管理への反映
- 勤怠システムに「時短勤務」ステータスを登録
- 給与計算ソフトの設定見直し
- 対象者の給与管理と給付額連携
■(3)企業の姿勢が問われる時代に
- 法令対応はもちろん、「育児を支える職場環境」が採用力・定着率向上につながる
- 女性活躍推進・人的資本経営の一環としても積極活用を
5. 育児支援に取り組む企業のメリット
- ✅ 人材確保・離職防止につながる
- ✅ SDGs・人的資本開示などで「子育て支援」の実績が評価される
- ✅ 長期的に見れば企業のブランド価値も向上
6. よくある質問(Q&A)
Q. 育児時短就業給付金は会社が支払うの?
→ いいえ、雇用保険から本人に支給されます。企業の直接負担はありません。
Q. パート社員も対象になりますか?
→ 雇用保険に加入しており、要件を満たせば正社員・パート問わず対象です。
Q. 社会保険や税金の取り扱いは?
→ 通常の給与と同様に扱われ、給付金自体は非課税です(所得税の対象外)。
まとめ:制度を知り、支援する姿勢が企業価値を高める
「育児のために働き方を変えた人に、経済的な安心を届ける」。
そんな考えのもと生まれた「育児時短就業給付金」は、働き方の多様性を尊重する制度です。
企業としても、制度を理解し、従業員が安心して働ける環境づくりに貢献することが求められます。
人的資本への投資は、いずれ企業の成長力として返ってくるはずです。