コラム

【経営者向け】マイカー通勤の通勤手当が11年ぶりに非課税枠引き上げ

令和7年分年末調整で必須となる“遡及適用”の実務ポイントを徹底解説

こんにちは!税理士の長岡です。今回は、「マイカー通勤の改正について!」についての内容になります。最後までお読みいただけると幸いです。令和7年11月19日、所得税法施行令の一部を改正する政令が公布されました。
この改正により マイカー通勤者(自動車・自転車等で通勤する従業員)に対する通勤手当の非課税限度額が引き上げ られました。

今回のポイントは、

  • 対象は「マイカー通勤のみ」(公共交通機関の非課税限度額は変更なし)
  • 11年ぶりの引き上げ
  • 令和7年4月1日まで“遡及適用”される
  • 令和7年分の年末調整で調整が必要

という点です。

特に「遡及適用」は企業側の実務に大きな影響があります。
本記事では、改正の具体的内容と企業がとるべき実務対応について、経営者向けにわかりやすく解説します。


■ 1. 今回の改正内容(非課税限度額の引き上げ)

▼ 対象は“マイカー通勤者”のみ

  • 自動車・自転車などで通勤する従業員の通勤手当だけが対象
  • 公共交通機関(電車・バス)・有料道路利用の限度額は変更なし

つまり今回の影響は、
地方企業・郊外企業・駐車場を完備している企業では特に大きくなる可能性があります。


▼ 改正された非課税限度額(片道10km以上が増額)

片道の距離に応じた新限度額が示されています。

【片道距離ごとの非課税限度額(1ヶ月あたり)】

片道通勤距離改正前(課税)改正後(非課税)
2km未満4,200円4,200円(変更なし)
2km以上10km未満7,100円7,300円
10km以上15km未満12,900円13,500円
15km以上25km未満18,700円19,700円
25km以上35km未満24,400円25,900円
35km以上45km未満28,000円32,300円
45km以上55km未満31,600円38,700円
55km以上ー(PDF記載表に準ずる)

■ 2. 今回の改正が“企業に与える影響”

今回の改正が特殊なのは、

🔵 令和7年4月1日まで「遡って」適用される

という点です。

つまり、

  • 令和7年4月〜11月の間に
    旧限度額で“課税扱い”していた通勤手当
  • 本来は「非課税」になるはずだった金額

が発生する場合があります。

その際、年末調整で税金の清算が必要になります。


■ 3. 企業が対応すべき「2つの重要ポイント」

実務担当者が注意すべきポイントとして、

  1. 年末調整での精算
  2. 中途退職者への対応

の2点が示されています。

以下で詳しく説明します。


■ 4. 【対応①】令和7年分の年末調整で“過納税額”の精算

従業員に支給した通勤手当について、

  • 当時:旧基準(非課税限度額が低い)
  • 改正後:新基準(非課税枠が引き上げ)

と変わるため、
すでに源泉徴収した所得税が誤って「多く取られている」ケースが生じます。

▼ 年末調整で行うべきこと

  • 支給済みの通勤手当を新基準に当てはめて再計算
  • 非課税枠が増えた分だけ「課税分が減る」
  • 過剰に徴収していた所得税を従業員に返還(還付)

PDFの記載としても、

「改正後の非課税限度額を適用した場合に過納となる税額がある場合には、令和7年の年末調整の際に精算する」

と明記されています。


■ 5. 【対応②】中途退職者・死亡退職者・海外転勤者への対応

これが企業実務で最も注意すべき部分です。

年の途中で退職した人は、
通常 年末調整の対象になりません

そのため、遡及により非課税枠が増えた場合は、

▼ 原則:退職者「本人」が確定申告で精算

給与計算担当者は、該当者に案内が必要です。


▼ すでに源泉徴収票を交付している場合

  • 新制度適用により「新たに非課税になる金額」が発生した場合
  • 源泉徴収票の“支払金額欄”を訂正し、摘要欄に「再交付」と記載して再交付する必要がある

非常に重要なポイントです。

これは税務署からの指摘対象にもなります。


■ 6. 適用タイミングに関する注意点

「支給日が4月1日以後であれば、改正後の限度額が適用される。」

つまり、

  • 3月分の通勤手当でも
  • 支払日が4月1日以後なら“新しい非課税枠”が適用

ということになります。

実務上は支給規程(就業規則・給与規程)のルールで判定されます。


■ 7. 今回の改正が特に影響する企業

以下に当てはまる企業は、必ず確認が必要です。


✔ 地方・郊外・車通勤が主流の職場

→ 非課税限度額が5,000〜7,000円上がる従業員が多い

✔ 工場・物流拠点・大型店舗

→ 片道25km以上の距離が増額幅が大きい

✔ 社員数が多く車通勤者が多い企業

→ 遡及対応による年末調整での作業増大

✔ 退職者が多い企業

→ 源泉徴収票の再交付が必要なケース増


■ 8. 企業が今すぐやるべきチェックリスト

【ステップ1】マイカー通勤者の洗い出し

片道距離を一覧化して、新限度額に該当する従業員を特定。

【ステップ2】「遡及対象」支給分を確認

  • 令和7年4月1日以降に支給
  • 旧限度額で課税していたかどうか確認

【ステップ3】年末調整で精算額を計算

  • 過剰徴収額を算出
  • 当年の調整で還付

【ステップ4】中途退職者への対応準備

  • 確定申告案内
  • 源泉徴収票の再交付が必要か確認

【ステップ5】就業規則・給与規程の確認

支給日基準か、対象期間基準か要確認。


■ 9. まとめ:今回の改正は“遡及が最大のポイント”

今回の非課税限度額の引き上げは、
特に 片道10km以上のマイカー通勤者に有利な改正 です。

しかし、それ以上に重要なのは、

🔶 令和7年4月1日まで遡及して適用

🔶 年末調整で精算が必要

🔶 退職者には源泉徴収票を再交付する場合がある

という“企業実務への直接的影響”です。

企業としては、

  • マイカー通勤者の把握
  • 遡及分の課税誤りの確認
  • 年末調整・退職者対応
  • 勤怠・給与システムの反映確認

をすぐに進めることが求められます。

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