【経営者向け】令和7年度税制改正「特定親族特別控除」で扶養控除申告書が大幅変更

令和8年分の年末調整・源泉徴収事務で起こる“記載ミス続出”に備える完全ガイド
こんにちは!税理士の長岡です。今回は、「令和8年度の扶養控除等申告書の記載時の注意点について!」についての内容になります。最後までお読みいただけると幸いです。令和7年度税制改正により、大学生世代(19歳以上23歳未満)を対象とした「特定親族特別控除」が新設されました。
本改正は、令和7年分以後の所得税に適用され、さらに 令和8年分以後の源泉徴収事務や年末調整のフローにも大きく影響します。
とくに、毎年従業員が提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除等申告書)については、
記載内容そのものが変更されるため、例年以上に“書き間違い・提出ミス”が増える可能性が警告されています。
本記事では、今回の税制改正が企業に与える実務負担、注意すべきポイント、そして実際の源泉徴収事務の変更点を、
経営者・バックオフィス担当者向けにわかりやすく整理しました。
■ 1. 今回の改正のポイント
経営者がまず理解すべき「3つの大きな変更点」
【変更点①】「特定親族特別控除」の創設
対象:19歳以上23歳未満の扶養親族(大学生世代)
これまで扶養の所得基準に該当しなかった層にも、一定の所得範囲内で控除が認められるようになります。
【変更点②】源泉徴収事務での新しい定義
令和8年分以後、扶養控除等申告書に記載すべき親族は
「源泉控除対象親族」と定義されます。
この中には以下が含まれます:
- 合計所得58万円以下の従来の「控除対象扶養親族」
- 合計所得58万円超~100万円以下の特定親族(=今回の新制度対象者)
この定義変更が、後述する源泉徴収事務の大幅な書類見直しにつながります。
【変更点③】所得100万円が“新たな分岐点”となる
従来の所得基準「合計所得58万円以下」に加え、
今回の改正で 100万円以下という新しい判定が加わりました。
PDFの文章では「100万円の分岐点」と明確に記載されています。
■ 2. “図で見る”扶養範囲の変化
最後に添付しているPDFの図では以下のポイントが整理されています:
- 19歳〜23歳未満の所得100万円以下 → 源泉控除対象親族に該当
- 100万円超〜123万円以下 → 特定親族特別控除の対象(※ただし扶養控除等申告書には記載不可)
つまり企業としては、
100万円を境に書類へ記載するかどうかが分かれるという複雑な管理が必要になります。
■ 3. なぜ今回の改正は“記載ミス続出”が予想されるのか
PDFでは、企業側に対しても「記載誤りが増える懸念」が明記されています。
理由は以下の通りです。
① 判定基準が従来よりも複雑になった
扶養判定は従来の「58万円以下」一本ではなく、
- 58万円
- 100万円
- 123万円
という 3つの所得ラインを使い分ける必要があります。
すると従業員自身が判断を誤るケースが増えます。
② 大学生アルバイトの収入が配慮対象になる
今回の対象は学生が中心です。
近年は大学生のアルバイト収入が増え、
- 年間80〜120万円前後の学生も珍しくない
- 課税・非課税ラインの理解が浅い
- 扶養の説明を企業側が行っていないケースが多い
そのため誤記載のリスクが高いのです。
③ 給与計算・源泉徴収への影響が直接発生する
扶養控除等申告書の記載内容は、毎月の源泉徴収税額に反映されます。
PDFにも以下のように注意喚起が記載されています。
- 「扶養親族の人数カウント」に誤り → 毎月の源泉徴収税額がずれる
- 100万円超の層は年末調整で反映されるが、月々の源泉徴収では人数に含めない
- 誤記載があると毎月の税額計算が正しく行われない
源泉徴収はミスが許されない実務です。
そのため従業員の誤記載が企業の実務トラブルに直結します。
■ 4. 実務で特に注意すべきポイント
以下の4点を押さえておけば、年末調整や源泉徴収での混乱を最小限にできます。
【1】「源泉控除対象親族」の定義を会社が正しく理解する
源泉控除対象親族に含まれるのは、
● 記載対象
- 扶養親族(所得58万円以下)
- 特定親族(19〜23歳未満で所得100万円以下)
● 記載しないが控除対象となり得る
- 特定親族(所得100万円超〜123万円以下)
PDFの記述通り、
記載するのは「100万円以下」だけ(【PDF】知らないと損するお金や税金ニュースVol.118)。
【2】従業員へ「100万円のライン」を徹底周知する
大学生・専門学生のアルバイト収入は
「103万円を超えると扶養から外れる」と誤解されるケースが多数あります。
今回の制度では、
“100万円”が扶養控除等申告書の記載対象の分岐点です。
「103万円 vs 100万円 vs 130万円」のように多くの数字が並ぶため、
従業員への丁寧な説明が必要です。
【3】給与計算担当者は申告書の内容チェックを強化
“給与計算担当者は従業員の申告書内容を正確に判断し、確認作業を行うことが求められる”
とくに以下の点を重点チェック項目にするべきです。
- 従業員の子どもの所得見込みの確認
- 学生アルバイト収入の予測
- 従業員本人の扶養認識が誤っていないか
- 100万円以下/100万円超〜123万円以下を正しく区分しているか
【4】年末調整では「123万円以下」の範囲も考慮
源泉徴収事務と年末調整では取り扱い範囲が異なります。
- 源泉徴収:100万円以下のみカウント
- 年末調整:123万円以下まで控除が反映され得る
この二段階運用もミスの原因になります。
■ 5. 企業が今すぐやるべき対策
制度への理解だけでは不十分です。
企業側は「仕組みとしてミスを防ぐ」仕組みづくりが必要です。
① 従業員向け説明資料の作成
扶養控除等申告書を提出させるタイミングで、以下の資料を添えるべきです。
- 所得ライン(58万/100万/123万)の早見表
- 大学生アルバイトの収入目安と扶養への影響
- 申告書の具体的記入例
- よくある誤り Q&A
② 給与計算システムのアップデート
年末までに以下に対応する必要があります。
- 100万円判定の新ロジック
- 記載対象者の区分管理(源泉控除対象親族)
- 特定親族特別控除の年末調整対応
- 過誤税額の自動計算機能の確認
③ 社内チェックフローの再構築
申告書の誤記載は「提出前チェック」で半分以上防げます。
おすすめは以下の二段階チェック:
- 従業員本人チェック(簡易チェックリスト)
- 人事・管理部の最終チェック(所得確認)
■ 6. まとめ:今回の税制改正は“企業にも負担発生”
今回の税制改正は、表向きは「子育て支援」「教育支援」の目的ですが、
実務レベルでは企業の源泉徴収事務に大きな影響があります。
特に以下の点が重要です:
- 100万円の所得ラインによる“新しい扶養判定”
- 学生アルバイト収入による判定ミス多発
- 源泉徴収と年末調整で取り扱い基準が異なる
- 記載誤りがそのまま毎月の源泉徴収額へ影響する
- 給与計算担当者の確認作業負担が増大
「企業は定義と所得基準を正しく理解し、従業員への周知と確認作業を徹底することが重要」
まさにこれが今回の本質です。
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