【経営者向け】2024年〜2025年で健康保険証が完全廃止へ

企業が“絶対に知っておくべき”入退社手続きの見直しポイント
こんにちは!税理士の長岡です。今回は、「健康保険証の完全廃止!」についての内容になります。最後までお読みいただけると幸いです。2024年12月2日、長年使われてきた従来の健康保険証の発行が終了しました。
さらに、2025年12月2日をもって健康保険証そのものが完全に廃止されるため、企業にとって入退社の手続きや従業員案内のフローを見直す必要があります。
「うちはまだ大丈夫」と思っていると、いざ対応のときに書類が戻ってきたり、従業員からの不満につながったりする可能性があります。
このタイミングでしっかり全体像をつかんでおきましょう。
■ 1. 健康保険証は段階的に廃止される
2024年12月2日:新規発行が終了
2024年12月2日を境に「従来の健康保険証の新規発行」は完全に終了しました。
つまり、新入社員が入るタイミングでも“健康保険証を発行して渡す”という従来のやり方はできないということです。
2025年12月2日:健康保険証の利用も廃止
さらに翌年の2025年12月2日から、
手元に残っている健康保険証も原則使えなくなるため、医療機関では以下のどちらかに一本化されます。
● ① マイナ保険証(マイナンバーカード)
医療機関での受付がスムーズになり、
高額療養費制度の事前申請が不要になるなどのメリットがあります。
● ② 資格確認書(最大5年の有効期限)
マイナカードを持っていない従業員でも保険診療を受けられる仕組みです。
ただし有効期限が最大5年のため、更新管理が必要になるケースがあります。
■ 2. 企業が必ず見直すべき「入社手続き」
健康保険証の廃止は、企業の入退社フローにも大きな影響があります。
まずは入社時のポイントを整理しましょう。
● 入社手続きに「資格確認書の要否」が追加(2024年以降)
2024年12月2日以降、健康保険証の発行終了に伴って、
資格取得届に「資格確認書の発行要否」の項目が追加されました。
▼企業側が必ず行うべきこと
- 新入社員にマイナ保険証の利用登録の有無をヒアリング
- 利用登録していなければ、資格確認書が必要かどうか確認
- 必要であれば「資格確認書の発行」を申請
今までは、
「健康保険証が届いたら従業員に渡すだけ」
という比較的シンプルなフローだったのに対し、
これからは従業員ごとに状況を確認する必要があります。
▼想定される現場トラブル
- 新入社員が「マイナ保険証の使い方がわからない」
- 資格確認書が必要なのに会社が申請を忘れる
- 医療機関に行く日までに資格確認書が届かず困る
- 会社側で案内しておらず従業員が混乱
これらを防ぐためには、入社オリエンテーションや書類案内の段階で、
マイナ保険証への登録方法や、資格確認書の位置づけを説明することが必須です。
■ 3. 退社手続きは“さらに変わる”
退社時は企業の負担も変わります。
● 健康保険証の「回収・返納」は不要(2025年以降)
2025年12月2日以降に退職する従業員の健康保険証は、
会社が回収して返納する必要がなくなります。
従業員自身が破棄または適切に処分すればよい形に変わるため、
会社側は以下の対応が必要です。
▼企業側の必要な案内
- 健康保険証は会社で回収しない
- 退職者が自分で処分する必要がある
- 不正利用につながらないよう注意喚起
これは企業の事務負担が減る一方、
誤った案内をしてしまうと従業員が迷惑を被るため、
社内マニュアルの更新が不可欠です。
■ 4. マイナ保険証と資格確認書の違いを理解しておく
● マイナ保険証のメリット
経営者として従業員へ説明する際、以下のメリットを伝えておくとスムーズです。
- 医療機関の受付が速い
- 高額療養費の事前申請が不要
- 転職・引越し時も情報更新が簡単
- 紙の保険証を持ち歩く必要がない
● 資格確認書の注意点
資格確認書は便利ですがデメリットも存在します。
- 有効期限が最大5年
- マイナ保険証ほど機能が充実していない
- 紛失した場合、会社側で再発行手続きを案内する必要がある
従業員の利便性を考えると、
会社としてはマイナ保険証への登録を推奨する方針を持つとよいでしょう。
■ 5. 経営者が今すぐ準備すべき3つのこと
ここからは、企業の実務面に落とし込んだ「やるべきこと」をまとめます。
① 社内マニュアルを“最新版”に更新
健康保険証の廃止に伴い、ほぼ確実に以下の書類・マニュアルを見直す必要があります。
- 入社時書類チェックリスト
- 資格取得届の記入マニュアル
- 新入社員オリエンテーション資料
- 退社時の案内文
- 人事部・管理部の内部マニュアル
特に退職手続きは
従来:保険証回収 → 返納
→ 今後:回収不要 → 本人が処分
へと完全に変わるため、最優先で更新しましょう。
② 従業員向けの“わかりやすい案内文”を用意
社員からよくある質問は以下の通りです。
- 「健康保険証が使えなくなるって本当ですか?」
- 「マイナカードを持っていない場合はどうしたらいいですか?」
- 「医療機関では何を見せればいいんですか?」
- 「退職時の健康保険証の返却は必要ですか?」
- 「資格確認書はどこでもらえますか?」
これらをまとめたFAQ資料を作り、
入社時・社内ポータルで共有しておくと混乱が減ります。
③ マイナ保険証の登録率を把握する
会社としてどれだけの従業員がマイナ保険証を利用しているか、
把握しておくと手続きがスムーズになります。
登録率を把握すべき理由
- 資格確認書の発行手続きがどれだけ必要か判断できる
- 社内の案内が適切かどうか評価できる
- 今後のデジタル手続き化への基盤になる
特に従業員数が多い企業は、
毎回ヒアリングをするだけでも大きな負担となるため、
人事システムに登録状況を記録する仕組みを作ることをおすすめします。
■ 6. 中小企業が見落としがちな“落とし穴”
① 登録方法の案内が曖昧
マイナ保険証は「カードを持っているだけ」では使えず、
健康保険証としての利用登録が必要です。
部下:「マイナカードは持ってます!」
上司:「じゃあ病院で使えるね」
→ 実は使えない、というようなトラブルが発生しがちです。
② 扶養家族の扱い忘れ
従業員本人だけでなく、
配偶者・子どもなどの被扶養者も対象です。
特に退職時の案内は重要で、
「被扶養者の保険証も会社で回収しない」という点は必ず伝える必要があります。
③ 外国人従業員への説明不足
マイナカードや資格確認書は、
外国人従業員にとっても分かりづらい制度です。
英語・中国語などの案内資料を用意しておけば、
コミュニケーションがスムーズになります。
■ 7. この記事のまとめ
2024〜2025年にかけて健康保険証は完全に廃止され、
企業は以下の対応が求められます。
【入社時】新しく必要になる対応
- マイナ保険証の登録有無をヒアリング
- 資格確認書の必要性を確認・申請
- 新入社員案内資料の更新
【退社時】変更されるポイント
- 健康保険証の回収は不要
- 本人に破棄してもらうよう案内する
- 被扶養者の保険証も同様に本人処分
【社内で整えるべきもの】
- マニュアル更新
- FAQ資料整備
- 従業員への周知
- マイナ保険証の登録率管理
健康保険証の廃止は、
単なる“カードの切り替え”ではありません。
企業の入退社フロー、従業員案内、バックオフィス体制まで
幅広い部分に影響する大きな制度改革です。
変化にスムーズに対応できる企業ほど、
従業員からの信頼も高まり、
バックオフィスの効率化にもつながります。