コラム

【2026年から本格スタート】

新しい融資の基準「事業性評価」とは?

中小企業の資金調達チャンスが拡大する“未来型評価”を徹底解説

こんにちは!税理士の長岡です。今回は、「新しい融資の基準について!」についての内容になります。最後までお読みいただけると幸いです。2026年から、金融機関の融資の考え方が大きく変わる「事業性評価」が本格的に導入されます。
従来は“決算書の数字”だけが融資判断の中心でしたが、新制度では 企業の強み・独自性・戦略・将来性 といった“数字以外の価値”も評価されるようになります。

特に創業期の企業や研究開発型企業、スタートアップなど、
「今は赤字だけれど、将来性が高い企業」にとっては、大きなチャンスが広がる制度です。

この記事では、事業性評価の仕組み、メリット、評価されるポイント、準備すべき事項までをわかりやすく解説します。


■ 1. 事業性評価とは何か

数字だけではなく“未来”を見る融資へ

事業性評価とは、
財務データはもちろん、企業のビジョンや戦略、競争優位性、経営者の資質などを多角的に分析し、
企業の未来の成長可能性を総合的に評価する融資の考え方です。

これにより、従来の財務重視型融資では支援が届きにくかった企業にも、
資金調達の可能性が広がります。


■ 2. 従来の融資との違い

「財務状況=融資の全て」ではなくなる

かつては、創業期や先行投資が多い企業は決算書の数字が十分でないため、
たとえ技術力や将来性があっても融資を受けにくい状況にありました。

事業性評価では以下のような視点が重視されます。

  • 売上・利益だけで判断しない
  • 技術力・独自性・アイデアを評価
  • 経営者の人物像・ビジョンも判断要素
  • 将来の成長性・市場性を分析
  • 財務と定性情報を組み合わせて総合評価

“過去の数字を見る融資”から
“未来の価値を見極める融資” へ変わると言えます。


■ 3. 事業性評価が注目される背景

無形資産が価値の中心になる時代へ

2026年から、新しい融資制度である
「企業価値担保権付き融資」 が始まります。

これは、工場や土地といった有形資産だけではなく、
知的財産・ブランド力・技術力・人的資本といった 無形資産 にも価値を見出す制度です。

その前提として、金融機関が企業の将来性や事業内容を深く理解する必要があり、
事業性評価の推進が強まっています。


■ 4. 事業性評価で見る主な4つの項目

事業性評価では、以下のような視点から企業を分析します。


① 市場動向(マーケットの将来性)

産業の成長性、競合状況、法規制の変化などを分析します。
「市場が伸びているか」「その中で自社の立ち位置はどうか」が問われます。


② 商流分析(サプライチェーンの強さ)

仕入れ〜製造〜販売までの流れを可視化し、
収益性・効率性・物流面の強みなどを評価します。

たとえば、

  • 在庫回転率が高い
  • 流通構造が強固
  • 顧客との継続取引が多い

などは高評価につながります。


③ SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)

自社の現状を客観的に整理し、
課題への対策や成長戦略の妥当性が評価されます。


④ 経営者の資質

事業性評価では最も重要といっても過言ではありません。

  • 業界経験
  • 戦略の明確さ
  • ビジョンの一貫性
  • リーダーシップ
  • リスク管理能力
  • 成長意欲

これらの総合力が、未来の事業成功可能性を左右するためです。


■ 5. 事業性評価の2つの分析軸

「定量評価」と「定性評価」

事業性評価は、大きく2つの視点で構成されます。


● 定量評価(数字の評価)

  • 売上高
  • 利益率
  • キャッシュフロー
  • 財務基盤の安定性

数値による客観的な評価です。


● 定性評価(質の評価)

  • 経営者の人物像
  • 企業の強み
  • 独自性
  • 技術水準
  • 事業戦略の妥当性
  • 市場での競争力
  • 将来性

数字に表れない価値が加点されるのが特徴です。


■ 6. 事業性評価の3つのメリット


① 創業期や赤字企業でも融資の可能性が広がる

今までは「赤字=融資が難しい」が一般的でしたが、
事業性評価では、将来性があれば融資可能性が高まります。

特に以下の企業にチャンスが広がります。

  • IT系スタートアップ
  • 研究開発型企業
  • 高付加価値サービス業
  • 成長市場に挑む企業

② 産業や地域経済の活性化につながる

企業が新規事業に挑戦しやすくなることで、
雇用が増え、地域の経済循環にも好影響をもたらします。


③ 金融機関との関係が深まり、伴走支援が受けられる

事業性評価は金融機関と継続的な対話が前提です。
これにより、以下のメリットが得られます。

  • 経営アドバイスが得られる
  • 必要なときの追加融資につながる
  • 事業計画のブラッシュアップが進む
  • 長期的な信頼関係の構築

単なる「借りる−返す」の関係から、
“伴走するパートナー関係” に変わります。


■ 7. 事業性評価の注意点

「未来だけ」ではなく“返済能力”も重視

事業性評価は革新的な制度ですが、
未来だけを見て貸すわけではありません。

  • 財務状況
  • キャッシュの確保
  • 返済可能性
  • バランスの取れた事業計画

これらは従来どおり重要です。

また、評価基準は金融機関によって異なるため、
自社の特徴を理解し、計画の伝え方を工夫する必要があります。


■ 8. 事業性評価に備えて“今すぐやるべきこと”


✦ ① 事業計画書を整備する

事業性評価では、計画書の質が採否を大きく左右します。

  • ビジョン
  • 具体的な戦略
  • 強みの根拠
  • 数値計画
  • 投資目的と効果
  • 市場の将来性

これらを明確に整理しておくことが重要です。


✦ ② 自社の強みを言語化する

「何が強みなのか」を一文で語れることが必須です。


✦ ③ 市場調査・競合分析を行う

自社がどのポジションを狙い、どのように成長するのかを明確に示すことが、
事業性評価の加点につながります。


✦ ④ 金融機関と定期的にコミュニケーションを取る

事業の理解を深めてもらうほど、融資の可能性は高まります。


■ まとめ

新しい時代の融資制度「事業性評価」は、
中小企業の資金調達に大きなチャンスをもたらす仕組みです。

  • 数字だけでなく将来性が評価される
  • 創業期・赤字企業にもチャンスが広がる
  • 金融機関との関係が深まる
  • 無形資産に価値がつく時代へ進む

未来を描ける企業ほど、評価が高まり、資金調達の選択肢も増えます。

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