税金

【法人設立した人必見!】常勤役員と非常勤役員は何が違う?

〜税法・社会保険のメリット・デメリットを経営者向けに解説〜


はじめに

会社を運営していると、「この役員は常勤?非常勤?」という区分を意識する場面が出てきます。
役員報酬の決定や社会保険加入の可否など、税務・労務に直結する重要な要素だからです。

しかし、「常勤役員=毎日出社している人」「非常勤役員=たまに顔を出す人」といった曖昧な認識のまま役員報酬を決めてしまうと、税務調査や社会保険調査で否認されるリスクがあります。

この記事では、常勤役員と非常勤役員の違いを整理し、税法・社会保険上のメリット・デメリット、実務上の注意点を事例とともに解説します。


常勤役員・非常勤役員とは?

常勤役員

  • 会社の業務に専ら従事している役員
  • 具体的には毎日・定期的に会社に出社し、業務執行責任を負っている
  • 代表取締役・専務・常務などが該当するケースが多い

非常勤役員

  • 会社の業務に専ら従事していない役員
  • 月に数回の取締役会や重要会議に出席する程度
  • 外部の専門家(顧問弁護士・顧問税理士など)が非常勤役員を務めるケースもある

👉 ポイントは「実態」です。
名刺に「常務取締役」とあっても、実際に業務に専念していなければ非常勤扱いになることもあります。


税法上の扱いの違い

役員報酬の損金算入

  • 常勤役員・非常勤役員ともに「定期同額給与」などの要件を満たせば損金算入可能
  • ただし非常勤役員の場合、報酬額が高すぎると「過大役員報酬」と判断されるリスクが高い

退職金

  • 常勤役員:退職給与規程に基づき、功績倍率(役員在任年数×功績倍率)で算定するのが一般的
  • 非常勤役員:在任期間が短く功績が限定的なため、退職金は少額か支給なしが原則

旅費・交通費の扱い

  • 常勤役員:通勤手当・旅費規程に基づく交通費を非課税扱いにできる場合あり
  • 非常勤役員:原則として役員報酬に含める(規程に基づく実費精算は可能)

税法上のメリット・デメリット

常勤役員

メリット

  1. 業務執行責任が明確で、報酬を高く設定しやすい
  2. 退職金を功績倍率で厚く設定できる
  3. 会社の経費に落としやすい

デメリット

  1. 報酬・退職金が高額だと過大認定リスク
  2. 社会保険加入義務が発生(会社負担が増える)

非常勤役員

メリット

  1. 報酬を抑えることで社保負担を回避できる
  2. 外部専門家を役員に据えることで信用力アップ

デメリット

  1. 報酬が高いと損金否認リスクが高まる
  2. 退職金が原則支給不可
  3. 社内業務に深入りできない

社会保険(健康保険・厚生年金)の取り扱い

常勤役員

  • 原則として健康保険・厚生年金に加入義務あり
  • 報酬額に応じて会社負担・本人負担が発生

非常勤役員

  • 実態として「常勤でない」場合は加入義務なし
  • ただし、実態が常勤に近いと判断されると加入義務ありとされるケースがある

実務上のポイント

  • 「非常勤」として社保加入を外していても、週3〜4日勤務・常時業務従事など実態が常勤なら調査で指摘されるリスク大
  • 社会保険調査では「出勤簿・タイムカード・業務日報」などの実態確認資料が求められる

事例で学ぶ常勤・非常勤役員の違い

事例1:常勤役員として社保加入

家族経営の製造業A社。
代表取締役の妻を常勤取締役として登記し、実際に総務・経理業務を担当。
健康保険・厚生年金に加入し、役員報酬を損金算入。調査でも問題なし。

事例2:非常勤役員にしたが実態は常勤

IT業B社。
節約のため取締役Cさんを「非常勤」として社保加入を外していたが、週4日出社・役員業務を常時担当。
年金事務所の調査で「常勤と認定」され、過去2年分の保険料を追徴された。

事例3:外部専門家を非常勤役員に

飲食チェーンC社。
顧問弁護士を非常勤役員に据え、報酬を月額10万円に設定。
法務面の信用力が増し、取引先からの信頼も向上。


経営者が押さえるべきポイント

  1. 肩書きより実態
     常勤・非常勤の判断は出勤状況・業務実態で行われる。
  2. 税務・社保のリスクを把握
     非常勤にして負担軽減を狙っても、実態が常勤なら否認リスク。
  3. 役員報酬規程・退職金規程を整備
     常勤・非常勤ごとの基準を明文化しておくと調査対応がスムーズ。

まとめ

  • 常勤役員=会社業務に専ら従事している役員、非常勤役員=会社業務に専ら従事していない役員
  • 税法上は報酬・退職金・旅費の扱いが異なる。社会保険も常勤は原則加入義務あり、非常勤は原則なし
  • 肩書きではなく実態で判断されるため、就任承諾書・出勤簿・規程を整備することが重要
  • 経営者は節税・社保負担軽減とコンプライアンスのバランスを取りながら役員区分を決める必要がある

最後に

私は、これまで多くの経営者の役員区分・役員報酬・社保対応をサポートしてきました。
「非常勤だから社保不要」と思い込んで後から追徴されるケースも少なくありません。

常勤・非常勤の正しい理解とエビデンス整備が、税務リスク・社会保険リスクを防ぎ、会社の信頼を守る第一歩です。

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