設立・法人成り

法人設立・法人成り時の役員の数は何人がベストか?

〜少人数・多人数のメリット・デメリットと事例から学ぶ最適な役員体制〜


はじめに

法人設立や法人成りをする際、定款や登記で必ず決めなければならないのが役員(取締役・監査役など)の人数です。
会社法では最低限の人数は決められていますが、何人にするかは経営者の裁量に委ねられています。

「とりあえず親族だけで役員にしておこう」「仲間を多く入れた方がいいのでは?」と安易に決めると、後で思わぬリスクが発生することも。
本記事では、役員人数の基本、少人数・多人数それぞれのメリット・デメリット、実際の事例を交えて、経営者に最適なヒントを提供します。


会社法上の役員人数の基本

  • 株式会社:取締役1名から設立可能(監査役不要、取締役会不要)
  • 合同会社:社員(出資者)1名から設立可能
  • 取締役会を設置する場合:取締役3名以上+監査役1名以上が必要

つまり、中小企業や家族経営であれば、取締役1名だけでも設立でき、監査役や取締役会も不要です。
ただし、事業の性質・株主構成・ガバナンス体制に応じて役員人数を増やすことも検討が必要です。


役員が少人数(1〜2名)のメリット・デメリット

メリット

  1. 意思決定が速い
     → 代表者1人または少人数なので合意形成がスムーズ。
  2. 人件費が抑えられる
     → 役員報酬を少なくでき、社保負担も減る。
  3. 登記・書類がシンプル
     → 役員変更登記や株主総会手続きが簡単。

デメリット

  1. 経営の属人化リスク
     → 代表者1人に権限集中し、不在時の対応に弱い。
  2. 対外的信用力の弱さ
     → 役員が1人だけだと銀行や取引先が不安を抱くことも。
  3. 監視機能が働きにくい
     → 不正や誤判断を防ぐチェック機能が不足。

役員が多人数(3名以上)のメリット・デメリット

メリット

  1. 経営の分業・多角化が可能
     → 営業・技術・管理など専門性で役割分担。
  2. 不正防止・ガバナンス強化
     → 複数人で決定・監視し合える。
  3. 対外的信用力が高まる
     → 銀行や取引先が安心感を持つ。

デメリット

  1. 意思決定が遅くなる
     → 多人数の合意が必要でスピード感が損なわれる。
  2. 人件費負担が増える
     → 役員報酬・社保負担が大きくなる。
  3. 意見対立・派閥化リスク
     → 意見が割れたり責任所在が不明確になりやすい。

事例から学ぶ役員人数の決め方

成功事例:少人数でスピード経営

コンサル業A社は代表者1人+家族取締役1人で設立。
意思決定が速く、経費も最小限に抑えられたため、創業3年で黒字化。
銀行融資時は代表者の実績を重視してもらえた。

成功事例:多人数で専門性を活かした経営

製造業B社は、営業・生産・管理の3名で取締役に就任。
それぞれが専門性を発揮し、役員会で情報を共有。
5年で売上2倍に成長。銀行からも「経営体制がしっかりしている」と高評価。

失敗事例:役員が多すぎて意思決定が停滞

スタートアップC社は仲間5人全員を取締役に。
重要事項が決まらず意思決定に時間がかかり、資金調達の機会を逃した。

失敗事例:役員が少なすぎて代表者が過労

飲食業D社は代表者1人で設立。
全業務を1人で抱え込み、体調を崩して経営が停滞。


株主構成と役員人数の関係

  • 株主が1人(オーナー経営)→役員1人でも問題ないが、後継者や補佐役を検討
  • 株主が複数(共同経営)→役員を各株主から出すケースが多い
  • 外部投資家がいる→役員を投資家側から1名出すこともある

実務上の注意点

  1. 役員報酬と社保負担を計算してから人数を決める
  2. 役員変更登記の手間も考慮
  3. 役員就任承諾書や株主総会議事録など書面整備が必要
  4. 代表者不在時の対応(権限委任)も決めておく

どのパターンが自社に合うかのヒント

  • 小規模・家族経営:役員は最小限(1〜2名)、外部顧問を活用して補う
  • 成長を目指す中小企業:3名程度で専門性を活かす体制
  • 外部資本導入・上場準備:役員を複数にしてガバナンス重視

まとめ

  • 役員は1人からでも設立できるが、人数によって経営体制・コスト・信用力が変わる
  • 少人数はスピード・コスト面で有利、多人数はガバナンス・信用面で有利
  • 自社の事業規模・株主構成・将来計画を踏まえ最適な人数を選ぶことが大切
  • 定款や株主間契約で役員構成・権限を明文化しておくとトラブル防止になる

最後に

私はこれまで多くの経営者の法人設立・役員構成の相談に携わってきました。
「とりあえず仲間全員を役員に」と安易に決めると、後から手間やトラブルが増えるケースを何度も見ています。

役員人数は会社の未来を左右する経営戦略の一つです。
設立前に事業計画・資金・株主構成・将来のビジョンを整理し、最適な役員体制を築くことが、成功への近道です。

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