運転資金ばかりに使っていませんか?若手経営者が今こそ始める“自分投資”のすすめ
運転資金にすべてをつぎ込んでいませんか?
~若手個人事業主こそ、自分への投資と複利の力を味方につけよう~
はじめに
個人事業主として独立したばかりの頃、誰もが最初に直面するのが「お金の使い方」です。
売上が上がるたびに、仕入れや設備、広告費などに再投資し、事業を大きくすることに夢中になる——そんな経営者は多いでしょう。
しかし、気づけば「自分への投資」は後回し。
NISAやiDeCo、株式投資などの“将来の自分を支えるお金づくり”に目を向ける余裕がないまま、事業だけに資金をつぎ込み続けている方も少なくありません。
この記事では、
- 運転資金に偏るリスク
- 複利の力を活かした“自分への投資”の重要性
- そして、資金不足時に短期融資を上手に使う考え方
を、実際の事例や数字を交えながらわかりやすく解説します。
1. 運転資金にすべてを注ぎ込む危険性
1-1. 事業は「投資」と「消費」の境目があいまい
個人事業主の多くが「稼いだ分は事業に再投資するのが正解」と考えています。
もちろんそれは間違いではありません。
しかし、運転資金と投資資金を区別しないと、気づかぬうちに“お金が残らない経営”になります。
たとえば、
- 売上が増えた → 在庫を増やした
- 受注が多くなった → 人を雇った
- 忙しくなった → 車や機材を買い替えた
こうした判断は一見前向きに見えますが、同時にキャッシュアウト(支出)が増える要因です。
「売上はあるのに手元資金がない」状態の原因はここにあります。
1-2. 運転資金とは“血液”であり、“貯金”ではない
運転資金は、事業を回すための血液のようなもの。
商品やサービスを提供し続けるための循環資金です。
しかし、多くの経営者が運転資金を「蓄えるもの」と誤解しています。
実際には、運転資金は常に流動しているお金です。
それを過剰に抱え込み、将来のための投資にまわせないのは非常にもったいないことです。
2. “自分への投資”を後回しにしてはいけない理由
2-1. 複利の力は「時間」を味方につけた人が勝つ
NISAやiDeCoなどで得られる最大のメリットは、「複利の効果」にあります。
たとえば、30歳の時点で月3万円を年利5%で運用した場合——
年齢 | 積立総額 | 複利運用後の資産額 |
---|---|---|
40歳 | 360万円 | 約470万円 |
50歳 | 720万円 | 約980万円 |
60歳 | 1,080万円 | 約1,700万円 |
つまり、時間を味方につけることが最大の節税・資産形成です。
運転資金にすべてを注ぎ込み、数年遅れて投資を始めた場合、この複利の差は将来大きな開きとなって現れます。
2-2. “稼ぐ力”と“増やす力”は別物
個人事業主は「稼ぐ力」に優れています。
しかし、「増やす力」は事業とは別の知識と戦略が必要です。
- 税金を最小限にするためのNISA・iDeCoの活用
- 老後資金を形成するための長期積立
- 株式や投資信託によるインカムゲイン
これらは事業の売上には直結しませんが、将来の経営安定を支える“第2の収益源”になります。
2-3. 自分への投資は「経営判断力」を育てる
投資を学ぶと、自然と数字に敏感になります。
損益計算・リスク分析・タイミング判断など、経営に直結する感覚が磨かれます。
事業における仕入・販売・利益率なども、投資感覚を持つことで「キャッシュフロー」を意識した判断ができるようになります。
3. 運転資金と自分投資の“バランス設計”
3-1. 売上の一定割合を“未来投資枠”にする
たとえば、
- 売上の5%をiDeCo・NISAなどの積立に回す
- 利益の10%を将来資金(学資・老後・住宅)に積み立てる
このようにルールを決めるだけでも、複利効果を逃さず資産形成ができます。
3-2. 運転資金が不足したら短期融資を活用
「運転資金を削ってまで投資するのは怖い」という声も多いです。
その場合は、短期融資(つなぎ資金)を上手に使うという選択があります。
たとえば、以下のような場面です。
状況 | 対応策 |
---|---|
売掛金の入金が翌月末 | 短期借入(運転資金)で1ヶ月つなぐ |
新規受注が集中し在庫が増える | 手形貸付などで短期資金確保 |
季節変動で支出が先行する | ファクタリングやつなぎ融資を検討 |
短期融資は、「一時的な流れを補うもの」であり、
「未来の投資資金を守る」ための手段でもあります。
4. 若手経営者が陥りやすい“落とし穴”
落とし穴①:「投資=ギャンブル」と思い込む
投資はギャンブルではありません。
リスクをコントロールし、長期的に資産を育てる「経営の一部」です。
落とし穴②:全額事業再投資を“成長”と勘違い
設備を増やしても、利益が伸びなければ意味がありません。
「利益率を上げる投資」と「売上を追う投資」はまったく違います。
落とし穴③:借入=悪と思い込む
借入を恐れて運転資金をすべて自己資金で回すと、資金の流れが滞ります。
短期融資を上手に使えば、事業と投資の両立が可能です。
5. 事例紹介:運転資金と投資のバランスをとった経営者
事例①:飲食業の30代経営者
開業3年目、売上は安定していたが、手元資金が常にギリギリ。
→ 短期運転資金を利用し、毎月3万円をiDeCoへ積立。
→ 5年後には積立額200万円+運用益40万円。
将来の老後資金形成と節税効果の両立を実現。
事例②:フリーランスデザイナー(20代後半)
収入が波のある中で、NISAをスタート。
→ 売上の5%を毎月積立し、1年後には自己資金と精神的な余裕が生まれた。
「仕事の選び方が変わった」と語る。
6. 運転資金を優先しすぎると起きる“未来の損失”
- 投資のスタートが遅れることで、複利効果の機会損失が発生
- 資産形成が遅れ、老後・教育・住宅資金が不足
- 事業依存型の収入構造から抜け出せない
つまり、**「今の安心のために未来の自由を犠牲にしている」**状態です。
7. 短期融資を上手に使う考え方
- 必要な期間・金額を明確にする(長期借入にしない)
- 返済スケジュールを資金繰り表で管理
- 銀行との関係を継続的に築く
短期借入を「事業の呼吸」と捉え、
その分の余裕で「自分投資」を継続することが、経営と人生の両立に繋がります。
8. まとめ:運転資金と自分投資の黄金比を見つけよう
- 運転資金は「血液」、貯金ではない
- 自分への投資は「複利」と「未来」を生む
- 短期融資を活用すれば、両立は可能
そして、経営の最終目的は「お金を稼ぐこと」ではなく、
「お金に振り回されない人生を送ること」です。
今の使い方が、未来のあなたをつくります。
運転資金と自分投資、どちらもバランス良く育てていきましょう。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。