融資が通らないのはなぜ?不動産業特有の資金繰り課題と解決策を徹底解説
債務償還年数と不動産売買業の資金繰り改善
~融資が通らない本当の理由と改善策を不動産業者の社長に伝える~
はじめに
「銀行に新しい融資をお願いしたが、なかなか首を縦に振ってくれない」
「利益は出ているのに、資金繰りが厳しい」
不動産売買業を営む社長から、こうした声をよく聞きます。
金融機関の融資審査では、特に「債務償還年数」という指標が重要視されます。
また、不動産売買業特有の資金繰りの悪化要因もあり、改善策を講じなければいくら利益を出しても資金繰りは改善しません。
この記事では、
- 債務償還年数が融資に与える影響
- 不動産売買業の資金繰りが悪化する理由
- 改善するための具体的な方法と事例
を整理し、不動産業の社長に「なるほど、だから資金繰りが厳しいのか」と理解いただけるように解説します。
1. 債務償還年数とは何か?
定義
債務償還年数とは、現状の利益水準で借入金を返済するのに何年かかるかを示す指標です。
次の計算式で求めます。
債務償還年数 = 有利子負債 ÷ (税引後利益 + 減価償却費 + 支払利息)
この指標は、銀行が融資審査で最も重視するものの一つです。
基準
- 10年以内 … 健全とされ、融資も比較的スムーズ
- 15年超 … 融資判断は慎重になる
- 20年超 … 新規融資は極めて厳しい
銀行は「20年以上かかるなら返済能力が低い」と見なすため、融資を渋る傾向があります。
2. 不動産売買業が資金繰りに苦しむ理由
不動産業者は、表面的には大きな利益を計上していても、資金繰りが悪化しやすい業種です。その理由を整理します。
① 在庫(仕入不動産)が資金を圧迫する
- 不動産は高額なため、仕入時に巨額の資金が必要
- 販売までに数か月〜数年かかることも多い
- その間、資金は「在庫」として眠ってしまう
② 決済と入金のタイムラグ
- 仕入代金は契約時・引渡時に即支払い
- 売却は契約から決済まで時間差がある
- キャッシュフローのずれで一時的に資金ショートが起こる
③ 銀行が在庫評価を厳しく見る
- 在庫不動産は「売れれば現金化できる」資産
- しかし銀行は「売れる保証がない」と見なし、評価を低くする
- 結果、融資枠が小さくなる
④ 粗利率は高くても固定費が重い
- 広告費、人件費、金融費用(利息)など固定費がかさむ
- 物件販売が途切れると、一気に資金繰りが苦しくなる
3. 改善策:資金繰りを健全にするために
① 債務償還年数を短縮する
- 利益を増やす:利益計画の見直し、不要な固定費の削減
- 返済額を減らす:借入のリスケ(返済期間延長)、借換による金利低下
- 減価償却を活用する:税務上の利益とキャッシュフローのギャップを利用
② 在庫管理を徹底する
- 回転率を重視し、長期在庫を抱えない
- 売れ残り物件は値下げ・用途転換も検討
- 在庫ごとの資金繰りシミュレーションを実施
③ ファイナンス手段を多様化
- 短期借入金・つなぎ融資の活用
- ファクタリングで売掛金を早期現金化
- ノンバンクや信用金庫など、複数の金融機関と関係を築く
④ 資金繰り表を常に更新
- 月次で資金繰り表を作成し、銀行に提示
- 「資金繰り管理ができている経営者」と見なされ、信頼度が上がる
4. 事例で学ぶ資金繰り改善
事例1:債務償還年数を15年から8年へ
ある不動産売買会社は、借入金残高が多く債務償還年数が15年超。銀行から新規融資を断られました。
→ 経費削減と高回転物件の仕入にシフト。利益率を改善し、2年後には償還年数を8年に短縮。銀行から追加融資を獲得。
事例2:在庫一掃でキャッシュ改善
別の会社は売れ残り在庫が多く、資金が滞留。
→ 値下げ販売を決断し、キャッシュを回収。その資金で短期返済を繰上げし、債務比率を改善。銀行の評価も上昇。
事例3:資金繰り表の提示で信用獲得
小規模不動産業者は、毎月の資金繰り表を銀行に提出。
→ 「数字に強い経営者」と評価され、スピーディに融資承認。
5. 経営者へのメッセージ
- 債務償還年数が15年を超えると要注意、20年を超えると新規融資は厳しい
- 不動産売買業は「在庫資金の滞留」が最大の資金繰り悪化要因
- 銀行は利益よりも「返済能力」「資金繰り管理力」を重視
- 改善策は「債務償還年数の短縮」「在庫管理」「資金繰り表の整備」
まとめ
- 不動産業の資金繰り悪化は業界特有の構造的な問題であり、利益だけでは解決しない
- 銀行が重視する「債務償還年数」を意識し、10年以内を目指すことが新規融資のカギ
- 資金繰り表の作成や在庫回転率改善など、経営努力を見せることで金融機関の信頼を勝ち取れる
最後に
私はこれまで数多くの不動産業者の資金繰りを支援し、銀行からの融資を成功に導いてきました。
融資は「数字」だけでなく「経営姿勢」で決まります。
もし今、「利益は出ているのに資金繰りが厳しい」「銀行融資がなかなか通らない」と悩んでいる不動産業の社長がいらっしゃれば、ぜひ一度相談してください。
債務償還年数を健全化し、資金繰りを改善することで、会社の未来は必ず切り拓けます。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。