害虫駆除や自然災害・盗難による損害は雑損控除の対象になる?
〜確定申告時に必要な手続き・エビデンスを事例で解説〜
はじめに
確定申告で「雑損控除」という制度をご存じでしょうか?
自然災害や盗難・横領など、自分の意思では避けられない損害を受けた場合、一定の要件を満たせば所得控除を受けることができます。
実は、シロアリ駆除などの害虫駆除費用も条件を満たせば雑損控除の対象となることがあります。
本記事では、経営者や個人事業主の方に向けて、雑損控除の概要、対象となる事例、必要な証拠書類(エビデンス)、申告方法を整理しました。
雑損控除とは?
雑損控除とは、所得税法第72条に基づく制度で、以下の損害が生じた場合に所得から控除できるものです。
対象となる損害
- 災害(火災・風水害・地震・落雷など)
- 盗難・横領
- シロアリ等の害虫による被害(家屋が損傷した場合など)
対象となる人
- 納税者本人
- 納税者と生計を一にする配偶者や親族
控除額の計算
雑損控除額 =
①損害金額 - 保険金等で補填される金額 - (所得金額×10%)
または
②(損害金額+災害関連支出)-5万円
のどちらか多い方
👉 所得が高い方ほど、控除額の計算に注意が必要です。
害虫駆除が雑損控除になるケース
「シロアリ駆除の費用が控除できる」と聞くと驚く方も多いですが、以下の条件を満たせば対象となります。
条件
- シロアリや害虫によって家屋が被害を受けたことが明らか
- 天災や突発的な事由により発生した被害と認められること
- 自己の管理責任を超える不可抗力によるもの
事例
- 築年数が浅い住宅で、周辺環境の突発的な変化によりシロアリ被害が拡大し修繕が必要になった
- 予期せぬ害虫被害で屋根裏・床下の木材が劣化した
👉 定期的な防虫対策や維持管理不足による被害は対象外となります。
自然災害・盗難による損害の事例
自然災害
- 台風で屋根が飛ばされ修繕費が発生
- 地震で壁がひび割れ補修工事が必要
盗難・横領
- 自宅に侵入され現金や貴重品を盗まれた
- 事務所から備品が盗難に遭った
これらは原則として雑損控除の対象です。ただし保険金等で補填された分は差し引く必要があります。
確定申告時に必要な手続き・エビデンス
必要な書類(例)
- 修繕・駆除費用の領収書や請求書
- 被害状況の写真(ビフォー・アフター)
- 警察や消防への届出書(盗難届、罹災証明書など)
- 保険金の支払明細
帳簿への記載
- 「いつ」「どこで」「どんな損害があったか」を明確に記載
- 雑損控除欄に損害額・補填額を入力
事例:シロアリ駆除の場合
- 駆除費用の領収書
- 被害状況を示す写真
- 被害発生日・発見日・被害規模をメモに残す
事例:盗難の場合
- 警察に届出をして「受理番号」を控える
- 盗まれた物品の一覧を作成
雑損控除の申告方法
- 確定申告書Bの「雑損控除」欄に記入
- 「雑損控除の明細書」を添付(国税庁HPからダウンロード可)
- エビデンス書類は原則提出不要だが、税務署から求められた場合に備え保存
経営者が押さえるべきポイント
- エビデンスが命
領収書・写真・証明書を必ず残すこと。 - 保険金との関係を整理
補填された分は差し引く必要がある。 - 突発性・不可抗力が要件
管理不足や経年劣化による損害は認められない。
よくある誤解
- 「害虫駆除なら何でも雑損控除できる」 → ×
→ 継続的な防除や定期清掃費用は対象外。 - 「証明書がなくても口頭で説明すればいい」 → ×
→ 写真・領収書・届出書などの証拠が必要。 - 「保険金が下りた分も控除できる」 → ×
→ 補填金額は差し引いて計算する必要あり。
まとめ
- 雑損控除は自然災害・盗難・害虫など不可抗力による損害が対象
- シロアリ駆除なども条件を満たせば控除可能
- 確定申告時には領収書・写真・届出書などエビデンスを整備することが重要
- 経営者は事前に証拠を揃えておくことで、余計な税負担を減らし、調査対応にも備えられる
最後に
私はこれまで多くの経営者の確定申告・雑損控除のサポートを行い、「知らなかったために控除を受けられなかった」というケースを防いできました。
雑損控除は、正しく理解し準備しておくことで、万が一の損害を税金面からカバーする強力な仕組みとなります。
「これは対象になるのか?」「どんな書類が必要か?」と迷う前に、まずは証拠を残し、税理士や専門家に相談することが成功のカギです。
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芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。