法人で医療保険に入るのは要注意!保険金の取り扱いには罠がある!
経営者が知っておくべき「法人契約」と「個人契約」の違いと課税ルール
はじめに
「法人名義で医療保険に加入した方が経費になるから有利では?」
多くの経営者様がそう考えてしまいます。
しかし、実際には法人契約の医療保険は思わぬ落とし穴があり、経営者本人や家族にとっては大きなデメリットとなる場合があります。
特に誤解されやすいのが、「保険金の受け取り方」と「課税関係」です。
この記事では、法人と個人それぞれで加入した場合の違い、税務上の扱い、そして経営者にとってどちらが得策なのかを詳しく解説します。
法人名義で加入する医療保険の仕組み
法人で医療保険に加入すると、
- 契約者:法人
- 被保険者:経営者本人(または従業員)
- 保険金受取人:法人
という形になります。
経営者が誤解しがちな点
「法人が受け取った保険金をそのまま本人に渡せる」と思われがちですが、これは誤解です。
法人が受け取った医療保険金を個人に支給する場合は、社会通念上相当な範囲でしか渡せません。
つまり、入院や手術にかかった実費や、それに見合う補填額以上は会社から支払えないのです。
残りは法人の雑収入として計上され、会社の利益に加算されます。結果として法人税がかかり、個人には直接届かないのです。
個人名義で加入した場合
- 契約者:本人(経営者個人)
- 被保険者:本人
- 保険金受取人:本人
この場合、医療保険金を受け取るのは本人です。
大きなメリット
個人が受け取る医療保険金は、非課税所得として扱われます。
つまり、入院給付金や手術給付金は 所得税・住民税の対象外 です。
この違いが、法人契約と個人契約の最大の分かれ目です。
法人契約と個人契約の比較
項目 | 法人契約 | 個人契約 |
---|---|---|
保険料の負担 | 法人が支払う(損金性は契約内容次第) | 個人が支払う |
保険金の受取人 | 法人 | 本人 |
保険金の課税関係 | 法人の雑収入 → 利益計上 → 法人税課税 | 個人の非課税所得 |
実際に受け取れる金額 | 実費補填に限られる | 保険契約に基づき全額非課税で受取可 |
👉 この表からもわかるように、医療保険に関しては法人契約にするメリットはほとんどないといえます。
経営者が誤解しやすいポイント
- 「法人契約なら保険金も非課税で受け取れる」 → ×
→ 実際は法人が受け取るため課税対象に。 - 「法人契約なら会社のお金で払えるから得」 → △
→ 保険料の損金算入可否は契約内容次第。しかも保険金は雑収入扱い。 - 「法人契約の方が税務的に有利」 → ×
→ 実際には非課税で受け取れる個人契約の方が有利。
医療保険は「個人加入」が吉
結論として、医療保険は 法人ではなく個人で加入すべきです。
理由はシンプルです。
- 個人契約なら保険金は非課税所得
- 法人契約だと雑収入となり、自由に使えない
経営者自身やご家族の安心のために加入する医療保険だからこそ、個人加入が王道なのです。
実務上のアドバイス
- 法人契約にすべき保険と個人契約にすべき保険を分ける
- 医療保険は個人契約
- 万一の事業保障(借入金返済対策など)は法人契約もあり
- 契約前に課税関係を確認する
「経費になるからお得」と安易に契約しない。 - 個人加入の保険料は所得控除の対象になる場合も
生命保険料控除を利用すれば、さらに節税効果あり。
まとめ
- 法人契約の医療保険は「法人が保険金受取人」となり、実際に入院した人に全額渡せない
- 保険金は法人の雑収入となり、法人税の対象
- 個人契約なら保険金は非課税所得で、安心して受け取れる
- 医療保険は法人契約よりも個人契約が圧倒的に有利
最後に
私はこれまで多くの経営者様に、保険と税務の関係を整理し、最適な契約方法を提案してきました。
「法人で入った方が得だと思っていたのに…」と後悔されるケースを避けるためにも、加入前に必ず税務の仕組みを理解することが大切です。
医療保険は安心のために入るもの。だからこそ、税金のルールを踏まえた正しい選択が経営者のご家族を守る第一歩になります。
ホームに戻る芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。