売上が増えるのに資金繰りが悪化する理由とは?
~3つの事例から学ぶ経営の落とし穴~
はじめに
経営者にとって「売上が増える=会社の状態が良くなる」と考えるのは自然なことです。
しかし実際には、売上が伸びても資金繰りが苦しくなるケースは多々あります。
「利益は出ているのにお金が残らない」
「売上が増えたはずなのに、借入や資金繰りに頭を抱えている」
これは単なる錯覚ではなく、企業経営に潜む「資金繰りの落とし穴」です。
今回は、代表的な3つの事例をもとに、なぜ売上増が資金繰り悪化につながるのかを解説します。
事例① 売掛金回収の遅延で資金ショート
よくあるパターン
製造業や卸売業では、取引先との「掛け取引」が一般的です。
例えば、売上を計上した月に入金されるわけではなく、2か月後入金などの条件が多く見られます。
資金繰りの実態
- 4月に1,000万円の売上 → 入金は6月末
- 仕入先への支払いは5月に先行で現金払い
- 結果:売上が伸びても、資金が先出しになりショート寸前
つまり「売上=入金」ではなく「売上=売掛金」という認識が必要です。
資金繰りは利益よりもキャッシュイン・キャッシュアウトのタイミングに左右されるのです。
事例② 在庫増加によるキャッシュアウト
成長期にありがちな落とし穴
「売上が増える=顧客の注文に応じられるよう在庫を増やす」
この判断は一見正しいように見えますが、資金繰りを圧迫します。
実例
- 売上:月商500万円 → 700万円に増加
- 在庫を増やすため仕入れを前倒し:200万円の支出追加
- 入金は後ろ倒し、在庫は倉庫に眠る
売上は増えているのに現金が出ていくだけ。
在庫が「資産」として貸借対照表に残っても、資金繰りを助けてはくれません。
成長を急ぐほど「売上増=資金減」という逆説的な状況が発生します。
事例③ 人件費・固定費の増加
売上増に比例して費用も膨らむ
売上が伸びると人手を増やす、店舗を拡大するなどの投資が発生します。
しかし、これらは固定費化しやすく、資金繰りを悪化させます。
実例
- 売上:月商800万円 → 1,200万円に増加
- 新規採用:人件費+100万円
- 店舗拡大:家賃+50万円
- 粗利は増加しているが、資金繰りはカツカツ
売上増加を見込んで人件費や固定費を先行投資するのは自然ですが、資金繰りを計算せずに進めると「売上が増えるほど苦しくなる」という本末転倒の状態に陥ります。
売上増=資金繰り悪化の共通点
上記3つの事例に共通するのは、
「利益」と「キャッシュフロー」が一致しない という点です。
- 売掛金:利益計上しても入金は先
- 在庫:資産に計上されてもキャッシュは減少
- 固定費:売上が伸びても即現金流出
決算書を見て「黒字だから安心」と思うのは危険で、
経営者は「資金繰り表」を通じて現金の流れを管理する必要があります。
経営者が取るべき対策
- 資金繰り表の作成
月ごとの入金・支払を見える化することで、売上増加に伴うキャッシュ不足を予測できる。 - 在庫管理の徹底
過剰仕入れを防ぎ、キャッシュを寝かせない。 - 売掛金の早期回収
取引条件の見直し、ファクタリングや手形割引の活用も検討。 - 固定費の段階的増加
売上が安定してから人件費や設備投資を増やすのが基本。
まとめ
売上増加は会社にとって喜ばしいことですが、同時に資金繰りリスクも増大します。
「売上が伸びているのにお金がない」という状況は、多くの中小企業が経験する典型的な落とし穴です。
経営者が注視すべきは「利益」ではなく「キャッシュフロー」。
資金繰りを制することが、成長と安定を両立する唯一の道です。
最後に
私は財務コンサルタントとして、資金繰り改善やキャッシュフロー経営の仕組みづくりをサポートしています。
単なる売上増を追うのではなく、資金を残す経営へとシフトできるよう、実践的なアドバイスを提供しています。
売上が増えても資金繰りに悩んでいる経営者の方は、ぜひご相談ください。
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