無借金経営は本当に良いこと?― 実質無借金経営との違いと経営に活かす考え方 ―
はじめに
「借金は悪だ」「無借金経営こそ健全な証」という言葉を耳にしたことはありませんか?
確かに借入ゼロで経営できていれば安心感はありますし、外部からの信用も得やすいイメージがあります。しかし一方で、無借金経営には隠れたリスクも存在します。
本記事では、無借金経営と実質無借金経営の違いを整理し、どちらが企業にとって望ましいのかを考察します。そして、資金調達で悩む経営者がどのように次の一手を打つべきかを分かりやすく解説していきます。
無借金経営とは?
無借金経営とは、その名の通り金融機関からの借入がゼロの状態で会社を運営していることを指します。
メリットとしては以下が挙げられます。
- 利息の支払いがないため、利益を圧迫しない
- 借入返済のプレッシャーから解放される
- 財務体質が健全と見られることが多い
一見すると理想的な形に見えます。しかし、実際には資金繰りや事業拡大の観点からデメリットもあります。
- 手元資金が不足した際に即時の調達が難しい
- 借入実績がないことで銀行との関係性が薄い
- 投資や事業拡大のスピードが遅れる
つまり、「無借金=安心」と思われがちですが、攻めの経営ができない側面も持ち合わせているのです。
実質無借金経営とは?
一方で、実質無借金経営という考え方があります。
これは、借入残高はあるものの、預金などの手元資金でいつでも返済可能な状態を指します。
例えば、借入残高が5,000万円あるものの、現預金が7,000万円あれば、借金はあっても「実質的には無借金」と考えられます。
実質無借金経営のメリット
- 金融機関との取引実績を維持できる
- 必要なときに追加融資を受けやすい
- 手元資金を厚く確保しながら、低金利を活用できる
- 財務の安定性を保ちつつ成長投資が可能
注意点
ただし、借入がある以上は利息の支払いは発生します。とはいえ、現代の低金利環境ではその負担は限定的です。
むしろ、銀行との信頼関係を築ける点において、実質無借金経営の方が戦略的といえるでしょう。
経営においてどちらが望ましいのか?
結論から言えば、「実質無借金経営」がより現実的で効果的な経営手法です。
無借金経営は「守り」に強いですが、「攻め」に弱い。
逆に、実質無借金経営は資金を持ちながら銀行との関係も維持できるため、守りと攻めのバランスを取りやすいのです。
特に中小企業にとっては、事業環境の変化に対応するための資金力が不可欠です。銀行融資をうまく利用しつつ、「借入はあるが返せる状態」を維持することが健全経営につながります。
銀行が見ているポイント
資金調達を考える上で、銀行がどこを見ているかを理解することは重要です。
銀行は「無借金だから安心」とは考えません。むしろ、
- 安定的な収益があるか
- キャッシュフローがプラスか
- 返済能力があるか
- 借入実績や取引履歴があるか
を重点的に評価します。
つまり、銀行から見て「返せる会社」かどうかが最も重要であり、無借金かどうかは本質ではないのです。
無借金経営のリスク事例
実際にあったケースを紹介します。
ある企業は無借金経営を長年貫いていました。しかし、急な取引先の倒産による売掛金の回収不能で資金繰りが悪化。慌てて銀行に融資を依頼しましたが、借入実績がなかったため「返済能力を見極められない」と判断され、融資が遅れたのです。
結果として黒字倒産寸前まで追い込まれました。
一方で、日常的に借入を活用していた企業は、同じ状況でも迅速に追加融資を受けられ、危機を乗り越えました。
経営者が取るべきスタンス
経営者に必要なのは、「借金ゼロ」をゴールとする発想ではなく、資金繰りを安定させ、成長のために資金を活用する視点です。
- 借入をしても現預金を厚く保つ
- 投資余力を残す
- 金融機関との関係性を維持する
これが、企業を持続的に成長させる秘訣といえます。
最後に
経営において大切なのは「借金をなくすこと」ではなく、資金を活かして会社を成長させることです。
実質無借金経営の発想を取り入れ、手元資金を厚く保ちながら銀行融資も上手に利用することで、会社は安心して未来に投資できます。
そして、もし「資金調達で悩んでいる」「銀行との付き合い方がわからない」と感じている経営者の方は、専門家に相談することで道が開けます。私は財務コンサルタント兼税理士として、資金繰り改善から融資交渉のサポートまで幅広く対応しています。
無借金経営を目指す前に、本当に強い会社の資金戦略を一緒に考えてみませんか?
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