税金

その節税、本当にキャッシュを守っていますか?

地代の“年払い”で節税するメリット・デメリットと、資金繰りから見た正しい判断軸

はじめに|「節税できるから年払いしよう」が危ない理由

「年払いなら損金にできるので節税になりますよ!」

そう勧められて、地代や借地料の支払いを月払いから年払いに変更した経営者の方も多いかもしれません。

確かに、法人税の節税効果があるのは事実です。
でもちょっと待ってください。

「節税」はしても、「キャッシュ」が出ていく。
この“矛盾”が、資金繰りを苦しめ、結果として本末転倒な経営になるケースも多いのです。


地代を年払いするとは?

「年払い」とは、1年分の地代(または借地料)を前倒しでまとめて支払うことです。

たとえば、月10万円の地代であれば、本来は12か月で120万円ですが、
年初に一括で120万円を支払うことになります。


【メリット】節税効果がすぐ出る!

✅ メリット①:一括損金計上が可能

原則として、前払費用は繰延処理(資産計上)が必要ですが、
継続して年払いしている場合は、その全額を損金計上可能になります。

→ 地代などを年初に一括で払えば、その年に全額損金処理でき、法人税の節税効果が生まれます。


✅ メリット②:事前にキャッシュフローを設計できる

  • 月々の地代支払いがなくなる
  • 他の資金計画と連動させやすくなる
    → 中長期的な資金戦略を組みやすくなる側面もあります。

【デメリット】資金繰りを無視すると破綻する

❌ デメリット①:キャッシュアウトが大きい

一括払いによって、手元資金が一気に減少します。

たとえば3月決算であれば、節税のために2〜3月に120万円の地代を払うことで税負担を下げられますが、
それによって4月以降の資金繰りが一気に苦しくなることも。

→ 特に、売上が不安定な企業や借入返済が重い企業には致命傷。


❌ デメリット②:「継続要件」を満たさないと損金否認リスク

この節税が認められるためには、継続して年払いで支払い続けている必要があります。

  • 今年は年払い、翌年は月払い
  • 特定の期だけ年払いにして、あとは戻す

→ このような対応は税務上“節税目的”と見なされ、否認リスクがあります。


❌ デメリット③:資金繰り悪化による“倒産リスク”

目先の節税を優先し、手元資金を減らしすぎると、

  • 借入金の返済が厳しくなる
  • 緊急支出に対応できなくなる
  • 銀行の評価が下がる(自己資本比率低下)

→ 最悪の場合、黒字倒産のリスクを高める要因になります。


判断軸|年払いにすべきかどうかの3つのチェックポイント


① 資金繰りに余裕があるか?

  • 預金残高や売上回収の見込みをもとに、120万円〜300万円の一括支払いが可能か?
  • 他の大口支出(賞与・借入返済・税金)と重なっていないか?

→ 節税効果よりもキャッシュの安全確保が優先です。


② 年払いを毎年継続できるか?

  • 単年度の節税目的で年払いを選ぶと、翌年以降の継続が難しくなり、否認されるリスクがあります。
  • 「毎年、同じタイミングで同じ条件で払えるか?」を事前に見極める。

③ 年払いによって得られる節税額が本当に必要か?

  • たとえば、節税で100万円の法人税を減らしても、120万円のキャッシュが減っては意味がない
  • 一時的な法人税の減額よりも、手元資金の確保が会社を守る

【事例紹介】節税で年払いにした会社が直面した資金不足

小売業のB社(年商8,000万円)

  • 節税目的で、地代(月25万円)を3月末に年払い(300万円)に変更
  • 3月決算で節税額120万円を確保
  • しかし、4月〜6月に入金がなく、借入返済資金が足りず
  • 保険解約や役員借入などで対応
    → 結果、翌年は年払いをやめ、税務上否認のリスクを指摘される

正しい使い方|“資金繰りに余裕がある年”だけ、計画的に活用

地代年払いは、「節税の奥の手」ではなく「財務戦略の一部」です。

  • 予算を組んだ上での計画的な資金支出
  • 毎年継続できる見込みがあること
  • 他の節税策とバランスをとる

→ 無理に使うのではなく、“資金に余裕がある年にのみ活用する”ことが鉄則です。


生成AIでの試算も有効

AIや財務シミュレーションツールを活用すれば:

  • 地代年払いによるキャッシュフローの変化
  • 税金軽減額 vs. 現預金減少リスクの比較
  • 来年以降の継続性判定

などが可能です。

感覚ではなく、“数字”で判断できる時代になっています。


おわりに|“節税したのに倒産”という本末転倒を防ぐために

節税は、経営の目的ではありません。
節税しても資金繰りが破綻すれば、会社は守れません。

  • 地代年払い=即損金=節税
  • だが、資金繰りは苦しくなる
  • 継続しないと税務否認リスク

だからこそ、「資金繰り・財務体質・節税の三位一体での判断」が必要なのです。


ご相談ください|節税と資金繰りの両立をサポートします

  • 地代年払いの導入可否診断
  • 節税額とキャッシュフローの比較シミュレーション
  • 継続要件・税務リスクの整理
  • 他の節税策とのトータル設計

節税は戦略です。間違った節税は、経営を苦しめます。
正しい判断のために、今こそご相談ください。

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