融資

銀行が見るのは数字の裏側!実態基準で作る決算書が融資と信頼を引き寄せる理由

銀行は「簿価」ではなく「実態」を見ている!
〜 財務諸表を実態基準で整えることが、融資評価を高める最善策 〜


はじめに:銀行が“数字の裏”を見ている理由

「うちは決算上は赤字だけど、実際はそんなに悪くない」
「会計上は減価償却してるけど、資産はまだ使える」

このような言葉を、経営者からよく耳にします。

しかし銀行は、決算書をそのまま鵜呑みにはしていません。
銀行の融資担当者は、表面上の「簿価」ではなく、
企業の“実態”を見抜こうとしています。

つまり、簿価基準で作成された決算書では、あなたの会社の本当の力が伝わっていない
可能性があるのです。

本記事では、銀行が見る「実態基準」とは何か、
なぜそれが重要なのか、そして経営者として何をすべきかを、
具体的な事例を交えながら解説していきます。


第1章:簿価基準とは?実態基準との違いを理解する

▶ 簿価基準とは

簿価基準とは、会計上のルールに基づいて算出された数値です。
つまり「取得時の金額(原価)」をもとに記帳し、
その後は減価償却や評価替えを経て、会計ルール上の金額が残る形です。

たとえば、

  • 10年前に購入した土地:簿価は1,000万円
  • 現在の時価:3,000万円

この場合、帳簿上は1,000万円のまま。
しかし、実際の価値(=実態)は3,000万円です。

▶ 実態基準とは

実態基準とは、現時点の企業の本当の経済的価値をもとにした判断です。
銀行は、融資を行う際にこの「実態」を見ます。

つまり、

「帳簿に書かれている数字ではなく、今その会社が本当にどれだけの資産・収益力を持っているか?」

を評価しているのです。


第2章:銀行が見る「実態」とは?5つの着眼点

銀行は決算書を受け取ると、独自の方法で“実態ベース”の財務内容に置き換えます。
主なポイントは次の5つです。


① 減価償却資産の「残存価値」を再評価

帳簿上、すでに償却済みの資産でも、
まだ現役で使えている場合は、銀行は“実質的な価値”として評価します。

例:
簿価0円の機械が、実際にはまだ稼働して利益を生んでいる場合、
銀行は「固定資産の実力が高い」と判断します。


② 在庫や売掛金の“換金性”をチェック

在庫や売掛金の中に「古い」「回収見込みが薄い」ものがあると、
実態評価では資産価値を下げられてしまいます。

つまり、棚卸や債権管理を正確に行うことが実態価値を守る第一歩です。


③ 代表者貸付金・仮払金などはマイナス評価

経営者個人への貸付金、立替金、仮払金などが多いと、
「資金の使途が不明」「資金管理が甘い」と見なされ、
実態ベースの自己資本を減額評価されます。

実態評価では、これらの勘定を実質的に“資産ではなくマイナス項目”として扱います。


④ 借入金と返済能力(キャッシュフロー)

銀行は利益よりも、実際に現金を生み出す力(営業キャッシュフロー)を重視します。

そのため、「黒字倒産」のように、帳簿上は利益でも資金が枯渇している会社は低評価になります。


⑤ 含み資産・含み損の存在

  • 含み資産(時価が上がっている土地など)→プラス評価
  • 含み損(売れない在庫・評価損)→マイナス評価

つまり、企業の真の体力は簿価では測れないということです。


第3章:簿価基準の決算書のままだと損をする理由

簿価ベースの決算書をそのまま提出すると、
銀行は「慎重に再評価」します。

このとき、再評価がマイナス方向に行われると、
融資条件が悪化したり、希望額を満たせなかったりします。


▶ ケース1:評価損を計上して資産が低く見える

建設業A社では、保守的な会計処理を行い、
減価償却を多く計上して資産が少なく見える状態でした。

結果、銀行の自己資本比率評価が低く出てしまい、
融資条件が下がる結果に。


▶ ケース2:内部留保を過小に見せてしまう

簿価上は赤字でも、含み益を考慮すれば黒字の会社も多く存在します。
このような会社は、実態ベースで再評価すれば優良企業なのです。


第4章:実態基準の財務諸表を作る3つのステップ

実態基準の決算書を作るには、経営者が意識すべき3つのステップがあります。


ステップ①:勘定科目の棚卸しを行う

仮払金、立替金、役員貸付金、未収入金などを精査し、
「本当に資産として残すべきものか」を明確にする。

→ 銀行が見たときに“透明性”が高まり、信頼されやすくなります。


ステップ②:資産の時価評価を把握する

土地・建物・有価証券など、時価情報を把握し、
内部資料としてまとめておくことが重要です。

→ 決算書に注記として添付するだけでも、印象は大きく変わります。


ステップ③:キャッシュフロー計算書を自社で作成する

税理士任せではなく、自社で営業キャッシュフローを把握できる体制を整える。

→ 銀行に「資金管理ができている会社」と思われることが最大の信頼獲得になります。


第5章:実態基準を意識した「決算書の改善例」

項目簿価基準実態基準(銀行評価ベース)
土地取得価額1,000万円時価3,000万円(+2,000万円)
機械装置簿価0円実質使用価値500万円
役員貸付金1,000万円実質▲1,000万円(資産性なし)
棚卸資産2,000万円実売可能分1,500万円(▲500万円)

このように、見方を変えるだけで、
「資産超過」「債務超過」が逆転するケースも珍しくありません。


第6章:銀行が信頼する企業の3つの共通点

1️⃣ 自社の数字を理解している
社長自身が、決算内容・損益・資金繰りを説明できる。

2️⃣ 根拠資料が整理されている
試算表・資金繰り表・在庫明細などを即提示できる。

3️⃣ 銀行と定期的に情報共有している
「決算期だけでなく、四半期ごとに報告する」企業は評価が高いです。


第7章:実態基準を活かすと融資交渉はこう変わる

▶ BEFORE(簿価基準のみ)

銀行:「自己資本比率が低いですね。もう少し利益を出してから検討します。」

▶ AFTER(実態基準資料を添付)

社長:「この土地には含み益があり、営業CFも黒字です。」
銀行:「それなら条件を再検討します。」

→ 実態を明示できる会社は、交渉の主導権を持てます。


第8章:まとめ 〜数字の“見せ方”で会社の未来は変わる〜

簿価はルール。
実態はリアル。

銀行が見ているのは、会計上の数値ではなく、会社の“生命力”です。

だからこそ、経営者は「実態基準の決算書」を整え、
会社の本当の姿を見せる努力をすべきです。


最後に:私が提供するサポート

私は、決算書の数字を「銀行評価ベース」で見直す
財務診断とキャッシュフロー改善サポートを提供しています。

  • 銀行が実際に見る観点での決算書分析
  • 実態貸借対照表・実態損益計算書の作成支援
  • 融資交渉用のシミュレーション資料作成
  • 銀行評価点アップのための財務体質改善コンサルティング

経営者が自社の“本当の実力”を数字で語れるように。
そして、融資を「お願いする立場」から「選ばれる立場」へ。

そのための財務サポートを全力で行っています。

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