住宅ローン控除の初年度は年末調整不可!経営者が必ず知るべき実務対応と注意点
住宅ローン控除の初年度は年末調整で適用できない!
経営者が従業員へ正しく案内するための実務ポイントを徹底解説
はじめに:住宅ローン控除は“初年度だけ特別扱い”
住宅を購入した社員が増えてくると、年末調整の時期に必ずといって出てくるのが
「去年住宅を買ったので、年末調整で控除をお願いします!」
という申し出です。
しかし、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、
✅ 初年度だけ確定申告が必要
✅ 2年目以降は年末調整で適用可能
というルールになっています。
この違いを理解していないと、従業員の税金が正しく処理されず、
- 還付が遅れる
- 控除漏れが発生する
- 不満を生む
といった問題につながります。
経営者として、従業員の生活に大きな影響を与える制度だからこそ、しっかり解説できる知識を持っておきましょう。
第1章:住宅ローン控除とは?制度の目的と概要
住宅ローン控除とは、
「住宅ローンを利用してマイホームを取得した人の税負担を軽減する制度」です。
住宅ローンの年末残高 × 控除率(原則1%)
=所得税から直接控除
となり、納めた税金が還付される仕組みです。
例えば、住宅ローン年末残高が3,000万円の場合、
3,000万円 × 1% = 30万円
本来の所得税額が30万円以下であれば全額戻ってくる、とてもメリットの大きい制度です。
第2章:なぜ初年度だけ確定申告が必要なのか?
理由は明確です。
✅ 初年度は“住宅の取得内容やローンの適格性を税務署がチェックする必要がある”ため。
住宅ローン控除には多くの要件があります。
例えば…
- 自分が居住するための住宅か?
- 床面積50㎡以上あるか?
- 中古の場合は耐震基準を満たすか?
- 贈与や親族売買ではないか?
- 返済期間10年以上のローンか?
税務署としては、これらが条件を満たしているか
初年度だけは厳格に審査したいのです。
だから、税務署へ提出する確定申告が必須となります。
第3章:どの書類が必要になる?初年度の必要書類一覧
住宅ローン控除の初年度には、以下の書類が必要になります。
| 書類名 | 入手先 |
|---|---|
| 住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 税務署または国税庁サイト |
| 住宅ローンの年末残高証明書 | 金融機関など |
| 住民票 | 市区町村役場 |
| 登記事項証明書 | 法務局 |
| 売買契約書(請負契約書)の写し | 不動産会社 |
| 源泉徴収票 | 勤務先発行 |
| 長期優良住宅・省エネ住宅の証明書(該当する場合のみ) | 建築会社等 |
これらの書類を揃えるのは社員にとって負担が大きいので、
早めに案内しなければトラブルになります。
第4章:2年目以降は年末調整でOK!その理由は?
初年度に税務署が内容をチェックし、適格と認められれば、
2年目以降は会社で処理可能となります。
提出書類も簡単。
| 必要書類 | 提出先 |
|---|---|
| 控除申告書(税務署から送付) | 勤務先 |
| 住宅ローン年末残高証明書 | 勤務先 |
税務署による審査は初年度のみ行われるため、
2年目以降は年末調整のみで済む仕組みです。
第5章:経営者が従業員に伝えるべき注意点
社員に誤解が多いので、経営者や経理担当者は以下の点を確実に案内しましょう。
✅ 年末調整では初年度は絶対に処理できない!
「去年家を買いました!」
→ 初年度は確定申告が必要です!
年末調整書類に混ざって
・登記事項証明書
・住宅ローン残高証明書
を提出されるケースが本当に多いです。
✅ 確定申告の期間を必ず伝える
✅ 翌年2月16日~3月15日(原則)
※還付申告は1月から提出可能
従業員にとっては還付のチャンスなので、忘れないようにサポートしましょう。
✅ e-Taxを案内すると喜ばれる
最近はスマホ申告も可能!
- マイナンバーカードがあれば自宅で申告終了
- 税務署に行く必要なし
- 還付も早く受け取れる
社員のお金と時間の負担を減らせます。
✅ 引っ越した年は住民税の通知がずれる可能性あり
住所変更が反映されるタイミングにズレがあり、
住民税が旧住所へ届くことがあります。
経営者としては、従業員の戸惑いを減らすためにも案内しておくと良いでしょう。
第6章:よくある質問(経営者が答えられるべきQ&A)
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| Q. 初年度を忘れて2年目以降だけ年末調整するのはダメ? | A. 初年度を適用しないと2年目以降も受けられません。必ず確定申告を! |
| Q. ペアローンの場合は? | A. それぞれ申告が必要です(割合計算あり)。 |
| Q. 12月に入居できなかった場合は? | A. 控除は翌年からとなります。居住の事実が必要。 |
| Q. iDeCoや生命保険の控除と一緒にできる? | A. もちろん可能。ただし書類の提出漏れに注意。 |
第7章:従業員に案内するための「社内通知テンプレート」
そのままコピーして使っていただけます👇
📌 【重要】住宅ローン控除 初年度の手続きについて
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の初年度は、会社での年末調整では適用できません。
必ず従業員ご自身で確定申告(税務署またはe-Tax)をお願いいたします。
■ 対象
前年に住宅ローンを利用して居住開始された方
■ 手続き方法
税務署での確定申告、またはe-Taxをご利用ください。
■ 申告期間
翌年2月16日~3月15日
※還付申告は1月以降いつでも可能
■ 必要書類の例
- 登記事項証明書
- 住宅ローン年末残高証明書
- 源泉徴収票
- 売買契約書の写し など
不明な点は経理担当までお尋ねください。
最後に:住宅ローン控除は“従業員を守る税務”でもある
住宅購入は人生の大きなイベント。
その税制優遇が正しく受けられないと、従業員の不満につながります。
経営者が制度を理解し、
「正しい情報を丁寧に説明する」
ことで、従業員の信頼はより強くなります。
会社は人で成り立っています。
税金でも信頼を守る会社は、必ず強い組織へと成長します。
ぜひ、従業員の生活を支える視点を持って、
住宅ローン控除を正しく案内してあげてください。
✏️ この記事は、税務を“経営支援の武器”に変える視点で執筆しています。
年末調整や確定申告、住宅ローン控除に関するサポートも行っていますので、お気軽にご相談ください。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。