財務

iDeCoの受け取り方はどれが有利?

〜年金・一時金・併用のメリット・デメリットを経営者向けに徹底解説〜


はじめに

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、老後資金を積み立てるだけでなく、掛金が全額所得控除となり、運用益も非課税になる強力な制度です。
しかし、意外と見落とされがちなのが 受け取り方の選択 です。

iDeCoには大きく3つの受け取り方法があります。

  1. 年金方式(分割受け取り)
  2. 一時金方式(まとめて受け取り)
  3. 併用方式(年金と一時金の組み合わせ)

それぞれにメリットとデメリットがあり、どの方法が有利かは経営者の所得状況や退職金制度の有無によって変わります。

本記事では、3つの受け取り方の特徴を整理し、経営者が状況に応じて最適な判断をできるよう解説します。


iDeCoの受け取り方法

1. 年金方式(分割受け取り)

iDeCo資産を5~20年の範囲で毎年分割して受け取る方法です。

2. 一時金方式(まとめて受け取り)

積み立てた資産を一括で受け取る方法です。

3. 併用方式

一部を一時金、残りを年金形式で受け取る方法です。


年金方式のメリット・デメリット

メリット

  1. 公的年金控除が使える
    → 年金収入として扱われ、公的年金等控除の対象。
  2. 税負担が分散
    → 一度に大金を受け取らないため、所得税の累進課税を抑えられる。
  3. 生活資金として計画的に使える
    → 老後の定期収入として家計が安定。

デメリット

  1. 受給期間が限られる(最大20年)
    → 終身年金ではなく、期間満了で支給終了。
  2. 運用次第で残高が減少するリスク
    → 年金受け取り中も一部資産を運用する場合あり。
  3. 退職金控除は使えない
    → 退職金との組み合わせでは不利になるケースも。

一時金方式のメリット・デメリット

メリット

  1. 退職所得控除が使える
    → 勤続年数に応じて大きな非課税枠がある。
  2. 一度に資金を手にできる
    → 住宅ローン完済や事業資金など、大きな用途に使いやすい。
  3. 運用リスクを断ち切れる
    → 一括で受け取るため、以後の運用リスクを負わない。

デメリット

  1. 一度に使い切ってしまう可能性
    → 計画性がないと老後資金が不足する。
  2. 他の退職金と重なると控除枠を圧迫
    → 法人からの退職金と同じ年に受け取ると控除枠を食い合う。
  3. 税務上の調整が必要
    → 受け取り年度の所得計画を誤ると課税額が増える。

併用方式のメリット・デメリット

メリット

  1. 退職所得控除と公的年金控除を両方活用できる
    → 税制上のバランスが取れる。
  2. 一部を大きな用途に、一部を生活資金に使える
    → 柔軟に資金を分配できる。
  3. 税負担を分散できる
    → 一時金課税と年金課税に分けることでトータルの税負担を軽減可能。

デメリット

  1. 制度運用が複雑
    → 金融機関によって対応に差がある。
  2. 計画を立てる手間が増える
    → 他の収入や控除との調整が必要。
  3. 受け取り方次第で逆に不利になる可能性
    → 中途半端な設定だと控除を活かしきれない。

どの受け取り方が有利か?経営者の状況別

ケース1:退職金制度がない経営者

一時金方式が有利。退職所得控除を最大限に活用できる。

ケース2:法人退職金を多額に受け取る予定の経営者

年金方式または併用方式。一時金だと退職所得控除を使い切ってしまうため、年金に分散して課税を抑えるのが有効。

ケース3:老後資金の管理に不安がある経営者

年金方式。毎年の生活費として計画的に使える。

ケース4:退職直後に住宅ローン完済や事業資金が必要

併用方式。一部を一括で返済に充て、残りを年金で安定収入化。


まとめ

  • iDeCoには「年金方式」「一時金方式」「併用方式」の3つの受け取り方がある
  • それぞれメリット・デメリットがあり、最適な選択肢は経営者の状況によって異なる
  • 退職金の有無、老後資金の使い方、生活設計を踏まえて戦略的に決めることが大切

最後に

iDeCoは加入時・運用時の節税効果が注目されがちですが、実は受け取り方の選択こそが最大の節税ポイントです。
私は、経営者の方々が退職金制度や役員報酬、家族のライフプランも含めて最適な受け取り方を選べるよう、シミュレーションとアドバイスを提供しています。

老後資金を「減らさない」「効率よく受け取る」ためにも、受け取り戦略を今のうちから考えてみてください。

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