節税は本当に得?融資に強い会社が実践する“利益を出す勇気”と粗利益経営の真実
節税は悪いこと?
融資を受けやすくするために“利益を出す勇気”を持とう
はじめに:節税ばかりに目を奪われていませんか?
決算前になると、多くの経営者から聞かれる言葉があります。
「先生、税金をなるべく減らしたいんです。」
確かに、税金はできるだけ払いたくない気持ちはわかります。
しかし、「税金を減らす」=「利益を減らす」ことでもあります。
そしてその“利益の圧縮”こそが、金融機関の融資評価を下げてしまう最大の要因なのです。
この記事では、節税と融資、そして経営に欠かせない「粗利益」と「損益分岐点」の関係を、わかりやすく解説します。
「節税が悪いこと」ではなく、「節税を正しく活かす経営」とは何かを一緒に考えていきましょう。
第1章:節税は目的ではなく、経営戦略の一部にすぎない
● 節税は“お金を減らす”行為でもある
節税とは、税金の支払いを抑えるために経費を増やしたり、設備投資や保険加入などを行うことです。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
節税を優先しすぎると──
- 現金が社内から出ていく
- 利益が減り、自己資本が積み上がらない
- 銀行の評価が下がる
という結果を招きます。
つまり「節税に成功=会社のキャッシュが減少」なのです。
税金を減らしたつもりが、会社の体力を削ってしまっていることも少なくありません。
● 節税と資金繰りのバランスが大切
本当に良い節税とは、「キャッシュを減らさない節税」です。
たとえば、経営セーフティ共済(倒産防止共済)や小規模企業共済など、将来の資金として戻る節税は有効です。
逆に、
- 必要のない備品購入
- 節税目的だけの保険契約
- 使わない広告費
といった「支出による節税」は、資金繰りを悪化させるだけです。
第2章:利益を圧縮すると融資が不利になる理由
● 銀行は「利益=返済原資」として見る
金融機関が融資を判断する際、最も重視するのは利益です。
なぜなら、銀行が見る「返済能力」とは、すなわち「利益がどれだけ出ているか」だからです。
税金を減らすために利益を圧縮すれば、
銀行からこう見られます。
「利益が少ない会社=返済能力が低い会社」
たとえ手元にキャッシュがあっても、利益が見えなければ評価は上がりません。
● 融資条件にも大きく影響
決算書上の利益が低いと、
- 融資限度額が下がる
- 金利が上がる
- 担保や保証を求められる
など、融資条件が不利になります。
一方で、しっかりと利益を確保している会社は、
「返済能力が高い」と判断され、
金利優遇・追加融資・新規取引の紹介など、
経営の選択肢が広がります。
第3章:利益確保のためには「粗利益」を増やすこと
● 売上よりも粗利益が大事
多くの経営者が「売上を増やせば利益も増える」と考えがちです。
しかし実際には、売上を増やしても利益が減るケースが多々あります。
それは、「粗利益率」が下がっているからです。
粗利益(限界利益)= 売上 − 変動費
つまり、粗利益こそが会社の稼ぐ力なのです。
● 粗利益を増やす3つの方法
- 値引きをやめて単価を上げる
売上は減っても利益が増える。
勇気を持って価格戦略を見直すことが重要です。 - 原価を下げる(仕入れ・外注コストの見直し)
固定費を削るより、変動費率を下げる方が即効性があります。 - 粗利益の高い商品・サービスを重点化する
全部の事業を伸ばす必要はありません。
儲かる領域にリソースを集中させることが利益率改善の近道です。
● 利益=粗利益 − 固定費
会社が黒字になるかどうかは、
固定費を粗利益でどれだけカバーできるかで決まります。
つまり、粗利益が増えれば、税金を払ってもキャッシュが残る体質になります。
第4章:損益分岐点を把握する重要性
● 損益分岐点を知らないと経営はギャンブル
損益分岐点とは、利益がゼロになる売上高のことです。
これを知らないと、「どれだけ売れば利益が出るか」が分からず、
値下げや投資の判断が感覚的になります。
損益分岐点=固定費 ÷ 粗利益率
たとえば、固定費が1,000万円で粗利益率が25%の場合、
損益分岐点売上は4,000万円。
つまり、売上が4,000万円を超えなければ会社は赤字です。
● 損益分岐点を下げる2つの方法
- 固定費を下げる(家賃・人件費・保険料など)
- 粗利益率を上げる(値引き停止・高付加価値化)
どちらを優先するかは業種や状況によりますが、
根底にあるのは「粗利益をいかに確保するか」です。
第5章:利益を出すことは“未来への投資”
● 利益があれば、できることが増える
利益を出すことは、単に税金を払うことではありません。
利益があれば、
- 銀行からの信頼が高まる
- 新しい設備投資ができる
- 優秀な人材を採用できる
- 社員に還元できる
つまり、利益=経営の自由度です。
● 税金を払う会社こそ、強い会社
税金を払っている会社は、それだけ利益を出している証拠。
税金を払える体質を持つ企業は、
外部から見ても「健全で信頼できる企業」と評価されます。
銀行も「利益を出して税金を払っている会社」を高く評価します。
税金を払うことを「損」と考えるのではなく、
「信用を買う投資」と考えるべきです。
第6章:節税よりも“財務戦略”を
● 財務を「未来志向」に変える
節税は「過去の結果に対する処理」。
しかし、財務戦略は「未来のための設計」です。
利益を減らす節税から、
利益を活かす資金戦略へ。
その第一歩が、「自社の損益分岐点を把握し、粗利益を増やすこと」です。
● 粗利益の見える化にはMQ会計が有効
MQ会計(限界利益会計)は、
売上・変動費・固定費を明確に分け、
会社の利益構造を可視化する手法です。
これにより、
「どの商品が儲かっていて、どの取引が会社を苦しめているのか」
が一目でわかります。
粗利益を高める戦略を立てるには、
この“利益構造の見える化”が不可欠です。
第7章:節税と融資を両立させる“賢い経営”へ
節税ばかりに意識を向けると、
資金繰りが悪化し、融資条件も不利になってしまいます。
一方で、利益を確保し、
財務体質を強化することで、
- 好条件の融資を引き出せる
- 新しい挑戦に資金を回せる
- 将来の投資にもつながる
という、成長循環が生まれます。
最後に:利益を「減らす経営」から「活かす経営」へ
節税は悪ではありません。
しかし、節税だけに意識を向けて「利益を圧縮する経営」は危険です。
利益を確保し、粗利益を増やし、
損益分岐点を把握して、キャッシュフローを改善する。
その結果、税金を払っても会社にお金が残る仕組みができます。
利益を出すことは、
社員・家族・地域・未来に“価値を残す”ことでもあります。
「節税よりも、利益をどう活かすか」
そこに経営の本質があります。
✏️ この記事を書いた目的
私は財務コンサルタントとして、
数字を「税金を減らす道具」ではなく、
「会社を強くする武器」として使う支援を行っています。
節税だけで終わる経営から、
利益を生かして成長する経営へ──。
その一歩を、一緒に踏み出しましょう。
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