融資

資金繰りを安定させるならどっち?追加融資と借り換え融資の正しい使い分け方

追加融資と借り換え融資、どちらが良い?
〜 経営者が資金戦略を誤らないための判断基準と実例 〜


はじめに:同じ「融資」でも、意味がまったく違う

「資金が足りないから、もう少し借りたい」
「金利の高い借入を整理して一本化したい」

このようなとき、金融機関から提案されるのが
“追加融資”“借り換え融資” です。

どちらも「お金を借りる」という点では同じですが、
実際は目的も、評価も、銀行側の見方も大きく異なります。

この記事では、

  • 追加融資と借り換え融資の違い
  • どちらを選ぶべきかの判断基準
  • 実際に経営が好転・悪化した事例
    を交えて、経営者が迷わず判断できるよう解説します。

第1章 追加融資とは?借り換え融資とは?

● 追加融資(増額融資)とは

既存の借入とは別に、新たに資金を追加で調達する融資です。
資金用途としては、次のようなケースがあります。

用途内容目的
運転資金売上増加に伴う仕入・人件費増事業拡大のための補強
設備資金新店舗・新工場・機械購入など成長投資
一時資金支払いサイトのズレなど資金繰りの安定

つまり追加融資は、事業成長や資金不足への一時対応として利用するものです。


● 借り換え融資とは

既存の借入金を、より良い条件(低金利・長期返済)で新しい融資に切り替えることです。
つまり、資金の「再構成」や「体質改善」を目的とします。

代表的なパターンは次の通りです。

借り換え目的内容メリット
金利負担の軽減高金利から低金利へ利息コスト削減
返済期間の延長短期から長期へ変更月次キャッシュフロー改善
借入の一本化複数融資をまとめる管理効率・評価アップ

第2章 銀行の見方の違いを理解する

銀行から見た「追加融資」

追加融資は、「今の経営状態でもっと貸す余地があるか」を見て判断されます。

銀行は以下の3点を確認します。

  1. 既存融資の返済が滞っていないか
  2. 利益が出ているか
  3. 借入後の返済原資が確保できるか

つまり、追加融資=銀行があなたの会社の成長性を信じているサインでもあります。


銀行から見た「借り換え融資」

一方、借り換え融資は、「現状の資金繰りを立て直す支援策」と見られます。

金融機関は、

「返済を続けられるように条件を整える」
という立場で審査を行います。

ただし注意点として、借り換えは“融資額が増えるわけではない”ため、
資金繰り改善の効果は「返済負担の軽減」にとどまります。


第3章 追加融資が向いているケースと実例

ケース①:売上が増えて、仕入・人件費が先行している

新規取引が増え、売上が拡大しているときは追加融資が有効です。

🔹実例:製造業A社の場合

月商1,000万円 → 1,300万円に成長。
仕入・外注費の支払いが増え、一時的に運転資金が不足。
銀行に追加融資を申請したところ、「利益率が改善している」と高評価を受け、
2,000万円の運転資金を確保。結果、成長スピードを維持できました。

➡ 成長局面では追加融資が“攻めの資金調達”になる。


ケース②:補助金・助成金の入金までのタイムラグがある

補助金や助成金は採択から入金までに数ヶ月かかることがあります。
この間の資金ショートを防ぐために、追加融資でつなぐのは有効です。


ケース③:新規設備投資を計画している

将来の売上増が見込める設備投資であれば、
銀行も積極的に融資を検討します。

ただし、投資計画の裏付け(見積・回収見込み・顧客予定)が必要です。


第4章 借り換え融資が向いているケースと実例

ケース①:毎月の返済が重く、資金繰りが圧迫されている

🔹実例:建設業B社の場合

短期融資4本、返済総額が月250万円。
借り換えで1本にまとめ、返済期間を延長。
月返済が150万円に減少し、資金繰りが安定。

➡ 借り換えは「資金の呼吸を整える」ための処方箋。


ケース②:金利が高いまま放置している

コロナ融資や緊急支援融資で高金利(2.0%以上)を維持している場合、
借り換えによる金利見直しで大きな効果が出ます。

仮に5,000万円の借入で金利が0.5%下がれば、
年間利息負担が約25万円減ります。


ケース③:複数の融資をまとめたい

短期・中期・長期が混在している場合、
一本化によって返済管理がシンプルになります。

「資金繰り表が見やすくなり、銀行との打合せがスムーズになった」
という経営者の声も多いです。


第5章 どちらを選ぶべき?判断基準3つ

判断基準追加融資が適する借り換え融資が適する
資金の目的新たな投資・成長のため既存負担の軽減・再構成
会社の状態売上拡大・利益増加資金繰り圧迫・赤字傾向
銀行の見方成長企業・攻めの融資継続支援・守りの融資

経営者がよくやる「間違い」

多くの経営者は、資金が苦しくなったときに「追加融資でなんとかする」を選びがちです。
しかし、資金繰りがすでに厳しい状態では、追加融資は難航します。

この場合は、無理に追加融資を求めず「借り換え」で立て直す判断が賢明です。


第6章 追加融資・借り換え融資を成功させる準備

① 数字で語れる資料を整える

  • 直近の決算書・試算表
  • 資金繰り表(最低6ヶ月分)
  • 事業計画書・収益見込み

数字が整理されていない状態では、銀行も判断できません。


② 税金・社会保険の未納がないことを確認

融資審査では、納税証明・社保納付が必ず確認されます。
未納があると、「返済より先に未納処理される」と見なされ、融資は通りません。


③ 融資目的を明確に伝える

  • 「なぜ必要なのか」
  • 「返済原資はどこから生まれるのか」

この2点を明確に説明できると、銀行の信頼を得やすくなります。


第7章 実際の成功事例と失敗事例

🔹成功事例:借り換えでキャッシュフロー改善(製造業C社)

短期借入4本を一本化し、返済期間を延長。
月の返済額を30%削減。浮いた資金を広告・採用へ再投資。
結果、売上が前年比120%に回復。

→ 借り換えは“守りながら攻める”再構築の第一歩。


🔹失敗事例:追加融資で一時しのぎ(サービス業D社)

赤字続きのまま、資金不足を追加融資で補填。
利益改善がないまま半年後に再度資金ショート。
結果、銀行からは「経営改善計画書の提出」を求められた。

→ 状況分析を誤ると、追加融資は“延命”で終わる。


最後に:融資は「目的」で選ぶ時代へ

融資には「攻め(追加)」と「守り(借り換え)」の2つがあります。
どちらが良いかではなく、「今の経営状態に合った方を選ぶ」ことが重要です。

私は財務コンサルタントとして、

  • 融資シミュレーション
  • 借入金の整理と一本化戦略
  • 金融機関との交渉サポート
    まで、一気通貫で支援しています。

数字とストーリーの両面から“選ばれる経営”へ。
融資は「借りる技術」ではなく、「信頼をつくる経営戦略」です。


🔹まとめ

  • 追加融資は“成長投資”、借り換え融資は“再構築”
  • 資金繰りが厳しいときは借り換え、拡大時は追加融資
  • 銀行が見るのは「返済能力」よりも「経営姿勢」
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