融資

不動産業こそ融資を味方に!長期借入金と短期借入金の使い分けでキャッシュフローを安定化

不動産業こそ「融資をうまく活用する経営」を!
~ 長期借入金と短期借入金の正しい使い分けが、キャッシュフローを安定させる ~


はじめに:不動産業は「資金が命」のビジネス

不動産業ほど、融資の使い方で経営が大きく変わる業界はありません。

仕入・建築・販売・賃貸・仲介──どのビジネスモデルでも、先にお金が動き、後から回収が発生します。
つまり、資金繰りが悪化するとたちまち経営が行き詰まるのです。

しかし一方で、上手に融資を使いこなせば、
「現金を減らさずに利益を増やす」ことも、「機会損失を防ぐ」ことも可能です。

この記事では、

  • 長期借入金と短期借入金の正しい使い分け方
  • 不動産業にありがちな融資の誤用
  • 金融機関から見た“評価される資金運用”
    について、実務的にわかりやすく解説します。

第1章 なぜ不動産業は融資活用が経営のカギになるのか

1-1. そもそも「自己資金」だけではまわらない

不動産業は扱う金額が大きく、1件の取引に数千万円〜数億円規模の資金が必要になります。
そのため、自己資金だけでは到底カバーできません。

例えば——

  • 土地仕入:5,000万円
  • 建物建築費:8,000万円
  • 販売までの期間:9ヶ月

このような開発案件の場合、手元資金で賄おうとすると、
資金が1件に固定され、他の案件に着手できなくなります。

👉 つまり、融資を活用できる会社ほど、事業スピードと利益率が高くなるのです。


1-2. 融資を使いこなす=経営の幅を広げる

融資は「借金」ではなく、経営をスケールさせるためのレバレッジです。

特に不動産業では、次のような場面で融資が必要になります。

融資の目的資金の内容期間の目安
土地・建物の購入仕入資金数ヶ月〜数年
建築資金・リフォーム費投資資金1〜5年
家賃収入が得られる物件の購入長期保有資金10年以上
一時的な運転資金人件費・仲介立替など数週間〜数ヶ月

これらの資金を、「長期」「短期」と分けて正しく借りることが経営安定のポイントです。


第2章 長期借入金と短期借入金の違い

2-1. 長期借入金とは

長期借入金は、1年以上の返済期間を設定する融資です。
不動産業では、以下のような用途に向いています。

  • 建物・土地の購入資金
  • 収益物件の取得資金
  • 店舗・事務所の改装・開発費

メリット

  • 返済期間が長く、毎月の返済負担が軽い
  • 設備・不動産など「長期価値を生む資産」に適している
  • 財務計画が立てやすい

デメリット

  • 審査に時間がかかる
  • 金利が変動する場合、将来的に支払総額が増えることも
  • 短期運転資金に使うと資金効率が悪化

2-2. 短期借入金とは

短期借入金は、返済期間が1年以内の融資です。
主に、仕入資金・つなぎ資金・運転資金に活用されます。

メリット

  • 融資までのスピードが早い(2週間〜1ヶ月以内も可)
  • 一時的な資金不足を補える
  • 利息負担が短期間で済む

デメリット

  • 返済期間が短いため、回収見込みが明確でないと危険
  • 滞ると銀行の評価が下がる

第3章 不動産業の資金循環を理解する

3-1. 「仕入→造成→販売→回収」の流れ

不動産業では、1つの案件の資金が長期間動き続けます。
特に分譲・建売業では、回収までの時間差が非常に長いのが特徴です。

  • 仕入れ時に支出が発生
  • 建築費も順次支払い
  • 売上・入金は半年〜1年後

この間、資金が“寝ている”状態が続きます。
そのため、短期資金で動かす部分と、長期で固定する部分の区別が重要になります。


3-2. 不動産業の資金繰りは「プロジェクト単位」で考える

1案件ごとに、資金調達→支出→回収→利益確定のサイクルを作ることが大切です。
つまり、案件単位で短期・長期を分けるのが理想です。

資金の性質内容融資の種類
回転が速い資金(仕入・造成)売上で回収できる短期借入金
固定的な投資(建物・収益物件)長期に渡り利益を生む長期借入金

第4章 長期借入金と短期借入金の使い分け実例

4-1. 【事例①】建売住宅業

  • 土地仕入資金:短期借入金(返済6ヶ月)
  • 建物建築資金:長期借入金(返済10年)

👉 理由:土地は売却すればすぐ回収できるため短期でOK。建物は固定資産として残るため、長期融資が適切。


4-2. 【事例②】賃貸不動産業

  • 賃貸物件購入:長期借入金(返済20年)
  • リフォーム・原状回復費:短期借入金(返済1年)

👉 理由:収益を長期で得る資産は長期借入、短期の改修費は短期で。返済期間を資金の“寿命”に合わせるのが原則。


4-3. 【事例③】不動産仲介業

  • 人件費・広告費:短期借入金(3ヶ月以内)
  • 店舗改装費:長期借入金(5年返済)

👉 理由:運転資金は短期で回す。資産価値を生む投資は長期で返す。


第5章 長期融資だけに頼ると危険な理由

5-1. キャッシュフローが固まりすぎる

長期借入で資金をまとめて確保すると、一見安心ですが、
返済が始まると毎月のキャッシュアウトが固定化します。

不動産業は景気や市況の変動に敏感です。
売上が減っても返済は止まりません。

結果、キャッシュが硬直し、仕入れチャンスを逃すことも。


5-2. 金融機関の評価も低下

金融機関は「短期資金を短期で返す会社」を高く評価します。
一方で、長期融資で仕入資金を賄っている会社は、
「資金管理が甘い」「キャッシュフローの精度が低い」と見られがちです。

銀行の信頼を得るには、資金の目的と期間を一致させることが最重要です。


第6章 金融機関別・不動産業におすすめの融資制度

金融機関特徴向いている用途
日本政策金融公庫創業・中小向け。審査柔軟。開業初期の運転資金・建築資金
信用金庫地域密着型。スピード対応。土地仕入・短期借入・当座貸越
地方銀行資金力・情報力がある。建築・大型案件向け長期融資
メガバンク大規模開発・法人格向け収益不動産・長期保有型案件

第7章 短期融資を有利に受けるための3つの条件

  1. 資金繰り表を常に最新化する
     → いつ、いくら必要か明確にすることで銀行との信頼を築く。
  2. 返済実績を積み上げる
     → 「完済した融資がある」ことが次の融資の信用になります。
  3. 案件別に資金を区分管理する
     → どのプロジェクトにどの資金を使ったか明確に。

第8章 まとめ:不動産業は「融資戦略」で未来が変わる

不動産業における資金調達は、単なる借入ではなく「戦略」です。

  • 長期借入金は、建物や土地など長期価値を生む投資
  • 短期借入金は、仕入・リフォーム・運転資金など短期間で回収できる資金

この使い分けを守るだけで、資金繰りは劇的に安定します。

そして、金融機関からの評価も上がり、
次の融資交渉や大型案件へのステップアップが容易になります。


🔹最後に

不動産業の成功は、「どれだけ借りるか」ではなく「どのように借りるか」で決まります。

私は、税理士兼財務コンサルタントとして、
融資戦略の設計・金融機関との交渉支援・資金繰り表の作成まで一貫してサポートしています。

無理のない資金設計で、あなたの会社の成長スピードを最大化させましょう。

ホームに戻る