海外取引をする中小企業必見!公庫・信用金庫・地銀・メガバンクの賢い活用法
海外取引をしている企業におすすめの金融機関とは?
~ 経営者が知っておきたい“銀行の選び方と使い分け戦略” ~
はじめに:グローバル時代に必要な“金融パートナー選び”
円安・インバウンド需要・越境EC・輸出入取引の拡大など、
中小企業でも「海外と関わる経営」が当たり前になりました。
しかし、海外取引を始めると直面するのが、
- 外貨送金・受取の手数料が高い
- 為替リスクの管理が難しい
- 現地パートナーとの決済が遅い
- 銀行審査が厳しく融資を受けにくい
といった“お金の壁”です。
この壁を乗り越えるには、海外ビジネスに強い金融機関を選ぶことが不可欠です。
本記事では、
- 国民政策金融公庫
- 信用金庫
- 地方銀行
- メガバンク
- ネオバンク(オンライン銀行・海外決済専門サービス)
の5つの視点から、海外取引企業に最適な金融機関の選び方を詳しく解説します。
第1章 国民政策金融公庫(公庫)
1-1. 海外取引の「第一歩」に向く金融機関
日本政策金融公庫は、中小企業・個人事業主向けの政府系金融機関です。
「創業支援」や「新分野進出支援」に強く、海外展開を検討する初期段階の企業に最適です。
1-2. 公庫の海外関連融資制度
公庫には、以下のような海外関連支援融資があります。
- 海外展開・事業再構築資金:海外進出、海外拠点開設、輸出入設備投資などに対応
- 中小企業経営強化資金:新市場(海外含む)進出時に活用可能
- 特別利率S・C制度:海外展開支援を目的とした優遇金利あり
これらは、まだ海外売上が小さい企業でも利用でき、
「初の海外取引をサポートする資金」として非常に有効です。
1-3. 注意点
公庫は「海外取引をしている企業」よりも、「これから海外展開を目指す企業」に適しています。
実際の為替決済や外貨口座の開設などの機能はないため、民間金融機関との併用が必要です。
第2章 信用金庫(しんきん)
2-1. 地域金融でも海外ビジネスを支援
「信用金庫に海外なんて関係あるの?」と思われがちですが、
実は近年、信用金庫も「地元企業の海外進出」をサポートしています。
特に、海外に販路を求める製造業・商社・食品業者などの相談が増加中です。
2-2. 信用金庫が提供する海外支援サービス
- 提携地銀・メガバンクとの海外ネットワーク利用
- 貿易金融(信用状発行など)の仲介
- 日本政策金融公庫との協調融資
また、JICAやJETROとの連携により、現地展示会・取引先紹介を支援する信用金庫もあります。
2-3. メリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 地元密着で親身に相談できる | 海外実務の専門部署が少ない |
| メガバンクと提携したサポートがある | 取引スピードが遅い場合がある |
| 為替手数料が比較的安い場合も | 大規模融資は難しい |
2-4. 向いている企業
- 地方都市の中小製造業・輸出業者
- 海外との取引量がまだ少ないが、初期段階で相談したい企業
信用金庫は、「海外進出を地元から支援してくれる伴走型金融機関」として活用すると良いでしょう。
第3章 地方銀行(地銀)
3-1. 「地元+海外」に強い万能型金融機関
地方銀行は、信用金庫よりもスケールが大きく、
地域企業の輸出入・現地法人設立支援に積極的です。
特に、地元企業のASEAN・中国進出サポートでは豊富な実績を持つ銀行が増えています。
3-2. 主要な地銀の海外支援実例
- りそな銀行グループ:タイ・インドネシアに現地拠点あり
- 横浜銀行:海外進出セミナー、為替予約サービス
- 静岡銀行:海外投資セミナー・現地企業マッチング支援
- 福岡銀行(ふくおかFG):ASEAN主要都市に駐在員事務所
3-3. サービス内容
- 外貨普通預金・外貨定期預金
- 為替予約・為替ヘッジ
- 信用状(L/C)発行
- 海外取引先との送金・入金管理
- 海外現地法人への資金融資
3-4. メリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 海外現地ネットワークが豊富 | 大都市圏以外ではサービスが限定的 |
| 融資・決済・情報支援を一括対応 | 取引規模により対応に差が出る |
| 外貨対応・為替予約などが可能 | 審査書類がやや複雑 |
3-5. 向いている企業
- 年商1億円〜50億円規模の中堅企業
- 定期的に輸出入を行う製造業・商社・飲食業
- ASEAN圏に取引先・現地法人を持つ企業
第4章 メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)
4-1. 「グローバル取引の本命」
海外取引が本格化してくると、メガバンクのネットワークが圧倒的に有利です。
- 海外支店・現地法人が世界各国にある
- 為替リスクヘッジや外貨建て融資が充実
- 英語対応・国際法務サポートも完備
4-2. 提供サービス例
- 外貨建て融資(ドル・ユーロ・人民元など)
- 為替予約・デリバティブ取引
- 海外送金・輸入信用状の発行
- 現地法人の開設支援・資金移動サポート
特に「三菱UFJ銀行」は、ASEAN・北米・欧州に強く、
「三井住友銀行」は製造業・インフラ関連に強みを持ちます。
4-3. メリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 世界規模のネットワーク | 取引審査が非常に厳しい |
| 外貨建て取引のコストが安い | 小規模企業は対象外になりやすい |
| 専門スタッフが対応 | 対面対応が少なく冷たい印象 |
4-4. 向いている企業
- 海外売上比率が20%以上の企業
- 年商10億円以上で安定した黒字基盤がある企業
- グローバル調達や現地法人運営を行っている企業
第5章 ネオバンク・海外決済専門サービス
5-1. 海外スタートアップにも人気の選択肢
近年では、オンライン完結型の海外送金・決済サービスも増えています。
特に中小企業やフリーランスが海外取引を行う場合には、
メガバンクよりもスピーディーでコストが低いのが特徴です。
代表的なサービス:
- Wise(旧TransferWise):低コスト・リアルレートで海外送金可能
- Payoneer:Amazon・Shopifyなど海外ECでの入金に強い
- Revolut Business:海外通貨間の両替コストが安い
- 楽天銀行・SBI新生銀行:オンライン外貨口座が簡単に開設可能
5-2. メリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 手数料が圧倒的に安い | 大口送金・融資は非対応 |
| スピーディーな取引が可能 | 英語表記など操作のハードルがある |
| 海外パートナーとの小口決済に便利 | 金融庁認可外のものもあり注意が必要 |
5-3. 向いている企業
- 越境EC・海外フリーランス契約などを行う小規模事業者
- メガバンク口座を維持するほどではない海外取引規模の企業
- コスト重視・スピード重視のビジネス
第6章 ステージ別おすすめ金融機関早見表
| 企業ステージ | おすすめ金融機関 | 理由 |
|---|---|---|
| 海外取引を始めたい | 政策金融公庫+信用金庫 | 小規模融資・初期支援に強い |
| 輸出入が増えてきた | 地方銀行 | 外貨・為替・信用状サポート |
| 現地法人を持つ | メガバンク | グローバルネットワーク・外貨建て融資 |
| 越境EC・小口送金中心 | ネオバンク(Wise・Payoneer等) | 手数料・スピード重視 |
第7章 まとめ:金融機関は“事業パートナー”として選ぶ
海外取引を始めると、為替リスク・決済遅延・税制対応など「見えない壁」が数多く現れます。
それを一つひとつ解決していくのが、信頼できる金融機関の存在です。
- 「初期支援」なら → 国民政策金融公庫
- 「地元支援」なら → 信用金庫
- 「実務+投資支援」なら → 地方銀行
- 「グローバル対応」なら → メガバンク
- 「小口・オンライン取引」なら → ネオバンク
銀行は選び方次第で、あなたの会社の成長スピードが変わります。
海外に挑戦する経営者は、今こそ「自社に合う金融機関」と出会うべきです。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。