もう諦めない!債務超過から会社を立て直す経営者のための財務戦略
債務超過を脱出するために経営者が打つべき方法とは?
〜資金繰り・人事・融資の3方向から再建するための現実戦略 〜
はじめに:債務超過は「終わり」ではなく「再生のサイン」
「うちは債務超過だから、もうダメかもしれない…」
そう肩を落とす経営者を、これまで何人も見てきました。
確かに、債務超過(資産より負債が多い状態)は、
見た目には“危険信号”です。
しかし本当に怖いのは、数字を正しく理解せずに手を打たないことです。
債務超過は“危機”ではなく、“方向転換のチャンス”とも言えます。
この記事では、
- 債務超過の原因を分析する方法
- すぐに打つべき融資・資金繰りの対策
- 人事・コスト面の改革ポイント
- 再建事例と再発防止策
を、実例を交えて徹底的に解説します。
第1章 債務超過とは何か?本質を理解する
● 会計上の債務超過とは
貸借対照表(B/S)で「純資産」がマイナスの状態を指します。
つまり、会社の資産をすべて売っても、借金が返せない状態です。
● 銀行が見ている“実質的債務超過”とは
会計上の債務超過ではなく、金融機関は「実質的債務超過」を見ます。
つまり、
- 回収不能な売掛金
- 評価損が出ている在庫
- 時価が下がった資産
これらを除外して再計算します。
したがって、「帳簿上はプラスでも実質マイナス」なケースも少なくありません。
第2章 債務超過になる主な原因3つ
① 利益が出ていない(赤字体質)
本業で利益が出ず、累積赤字が積み上がるタイプです。
根本原因は「粗利の低下」や「人件費・固定費の増大」にあります。
② 設備投資や借入の過多
売上に見合わない投資・借入を行うことで、
減価償却費や利息負担が経営を圧迫します。
③ 運転資金の悪循環
資金繰りが厳しく、短期借入で一時しのぎを繰り返すうちに
キャッシュが枯渇し、債務が膨張するケースです。
第3章 融資面からの脱出戦略
● ステップ1:現状の借入を整理する
まずは、全借入の「一覧表」を作成します。
| 金融機関 | 借入残高 | 金利 | 返済期間 | 月返済額 | 担保 | 保証人 |
|---|
これにより、どこが高金利か、短期借入が集中していないかが一目でわかります。
● ステップ2:借り換え融資でキャッシュを確保
債務超過企業でも、「再建の意思」と「具体的な計画」があれば、
借り換えやリスケジュール(返済条件変更)は可能です。
例:建設業A社(年商2億円)
複数の借入を1本化し、返済期間を3年→7年に延長。
月返済を250万円→120万円に減額。
結果、資金繰りが改善し、3期目に黒字化を実現。
● ステップ3:追加融資で“攻め”の再建
債務超過のままでも、再建の道筋が明確であれば、
「追加融資による資金注入」で立て直すことも可能です。
- 売上回復のための広告投資
- 収益改善に直結する人材採用
- 仕入れ再構築のための運転資金
これら“利益創出型の融資”は、金融機関も前向きに検討します。
第4章 資金繰り改善で息をつなぐ
● キャッシュフロー表を“見える化”する
債務超過企業の多くは、「資金繰り表を持っていない」ことが問題です。
たとえエクセル1枚でも構いません。
1ヶ月ごとの入出金を把握することで、赤字でも“先が読める経営”が可能になります。
● 固定費の洗い出しと優先順位付け
- 経費削減でやってはいけないのは「人件費の一律カット」
- 削減すべきは「成果につながらない支出」
具体的には次の順で削減を検討します。
- 役員報酬(まず経営者から)
- 不要なリース・保険契約
- 使っていないサブスク・広告費
● 仕入・外注の支払いサイトを見直す
「仕入れ先と交渉して支払いサイトを10日延ばす」だけでも、
資金繰りの改善効果は大きいです。
また、手形ではなく電子記録債権に切り替えることで、
信用を維持しながら支払いを調整できます。
第5章 人事・組織面からの再建戦略
● 社員の意識改革なしに再建は不可能
債務超過の会社に共通するのは、「現場が危機感を共有していない」ことです。
再建の第一歩は、社員全員に「現状を可視化」すること。
例:毎月の損益を“社内ミーティングで共有”するだけで
「うちの会社が今どうなっているのか」が全員に伝わります。
● 成果主義を導入する際の注意点
再建中の企業がやりがちなのは、
「急な歩合制導入」や「過剰なコストカット」。
これは社員の離職を招きます。
重要なのは、「利益が出たら必ず還元する仕組み」を同時に設計することです。
● 不採算部門の撤退を恐れない
再建には「捨てる勇気」も必要です。
- 売上はあるが利益が出ない事業
- 取引量が多いのにキャッシュが残らない顧客
これらは“数字上の負担”になっていないかを再確認しましょう。
第6章 再建のステップ実例
🔹再建成功事例:小売業B社の場合
年商3億円/債務超過▲1,200万円
赤字体質・在庫過多・短期借入依存。
再建ステップ
- 不良在庫を50%圧縮しキャッシュ回収
- 借入を一本化し、返済期間を延長
- 販売管理費を20%削減
- 経営者が月次資金繰り表を自ら更新
→ 2年で債務超過を解消、翌期に営業利益2,000万円を達成。
🔹再建失敗事例:製造業C社の場合
利益改善よりも「借入返済のための新規借入」を繰り返した結果、
金融機関の信用を失い、取引停止。
教訓:借入で赤字を埋める経営は、再建を遠ざける。
第7章 金融機関との向き合い方
● 隠さないことが信頼を生む
「債務超過だから隠したい」と思う経営者は多いですが、
銀行は帳簿だけでなく取引履歴・税務情報から全て把握しています。
正直に現状を説明し、再建計画を一緒に立てる姿勢が最も重要です。
● 計画書のポイント
- 現状分析(なぜ債務超過になったか)
- 改善計画(利益・資金繰り改善策)
- 目標(いつまでに純資産をプラスに戻すか)
これを数字ベースで作成することが信頼を得るカギです。
第8章 税務・財務の視点から見た再建のコツ
● 社長貸付金・役員借入金の整理
債務超過企業では、経営者個人の資金が会社に入り込んでいることが多いです。
これは“帳簿上の資産”として見直し対象になります。
→ 税理士と連携し、「資本取引」への切り替えも検討を。
第9章 再発防止のための経営管理
● 月次決算の徹底
債務超過を脱する会社は、例外なく「数字の見える化」ができています。
特に、毎月のB/Sチェックを怠らないことが重要。
- 資産の中に“回収不能な売掛金”がないか
- 在庫が膨らんでいないか
- 借入残高が月商の何倍か
これらを毎月見るだけで、再発リスクは激減します。
最後に:再建は「財務×意識改革」でしか実現しない
債務超過を脱するための第一歩は、
「数字から逃げない」ことです。
融資・資金繰り・人事すべてが連動しており、
どれか一つの改善では再建は成り立ちません。
私はこれまで多くの中小企業の再建支援に携わってきました。
その中で共通しているのは、
“本気の経営者は、必ず再起する”ということ。
債務超過をチャンスに変え、
キャッシュフロー経営を実現するサポートを行っています。
数字の整理、金融機関との交渉、資金繰り表の作成まで、
現場に寄り添った再建支援を通じて、
「もう一度立ち上がる経営」を全力でサポートしています。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。